第96回 お祭り日和
日が暮れ始めた頃
シュパンっ
中庭にプリンとポトフが現れた。
「…まったく…なんで僕まで…」
ポトフの移動手段として同行させられ、少々不機嫌な様子で頬を膨らませるプリン。
「バケツプリン」
そんな彼にポトフが言うと
「許す」
プリンはコクンと頷いた。
「「あ、おかえりー」」
二人が帰ってきたことに気が付いて、彼らに駆け寄るココアとミント。
「ただいまココアちゃんにミント♪」
「うむ。ただいま」
それに微笑みながら受け答えるポトフとプリン。
「ポトフ、犯人いた?」
挨拶が済んだところで、心配そうにミントが尋ねた。
「あっはっはっ!ばっちりお返ししてやったぜェ♪」
ミントの問いに朗らかに笑いながら答えるポトフ。
「"お返し"ってー?」
ココアが小首を傾げながらポトフの発言を聞き返すと
「まァ私刑で百分の百殺しってとこだな」
ってポトフが言った。
「「死んでる死んでる」」
透かさず突っ込みを入れるミントとココア。
「…大丈夫だ。微生物の息だったけどあいつまだ生きてた」
そんな二人の様子を見て、フッと顔を綻ばせたプリンが言った。
「虫より酷いのー!?」
素早くプリンに突っ込みを入れるココアと
「どんだけ痛めつけたのさポトフ?!」
素早くポトフに突っ込みを入れるミント。
「あっはっはっ!超すっきりしたV」
突っ込みを気にせずに清々しい笑顔を見せるポトフ。
「ふふふ なにせ相手は拘束されてたからな」
そんな彼につられて微笑むプリン。
「わ!じゃあ反撃される心配はないんだね!?」
プリンの言葉を聞いて目を輝かせるミント。
「あっはっはっ!しかもそいつ吹っ飛ばねェからすげェコンボ数だったぜェ?」
楽しそうに語り続けるポトフ。
どうやら犯人は両手両足を固定されていた為に、どんな攻撃を受けても吹っ飛ぶことが出来なかったようですね。
無抵抗な犯人をいたぶるということを楽しそうに喋っている三人を見て
(って、何楽しげにそんなコト喋ってんのこいつらー!?)
心の中で突っ込むココア。
「って、あ!忘れてた!」
すると、何かを思い出したミントは中庭にある時計にバッと目を向けた。
「「?」」
そんなミントを見て小首を傾げるプリンとココア。
「? どしたミントォ?」
二人に代わってポトフが尋ねると
「ね、プリン、もう一回王都にテレポート出来る?」
ミントは答える代わりにプリンにお願い事をした。
「? なんで王都に―…」
ポトフが小首を傾げると
「うむ。テレポート」
プリンはコクンと頷いて瞬間移動魔法を唱えた。
「って聞けィ?!」
ピュッ
シュパンっ
そんなこんなで王都に瞬間移動した四人。
「ぷわ…ねむねむ…」
流石に遠出は疲れるのか、眠たそうに欠伸をするプリン。
「えっと…ここは街の入り口だね」
彼の隣で辺りを見回しながらミントが言った。
「一体王都に何の用があるのミントー?」
その隣でココアが尋ねると
「あはは ついてきて!」
ミントはにこっと笑って走り出した。
「ええ?!なになにー?」
慌てて彼を追うココア。
「ほら行くぞ枕?」
それと同時にポトフが言うと
「ぐー。」
プリンのいびきが返ってきた。
「…」
立ったまま寝ているプリンを見て、ポトフはにやりと笑うと
「おにィちゃんV」
って彼の耳元で囁いた。
「ぴわわっ?!!!!!」
これまでにない強烈な寒気が全身を巡ったおかげで飛び起きるプリン。
「あっはっはっ!置いてかれるぞ枕ァ!」
そんな彼を見て、ポトフは楽しそうに笑いながら走り出した。
「おっ"お兄ちゃん"って呼ぶなっ!!」
ちょっとした吐き気に襲われながらも、プリンは彼を追って走り出した。
そして、四人は大通りに辿り着いた。
「「わー…!」」
提灯の明かりで煌々と輝く街並みを見て感嘆の声をあげるプリンとココアとポトフ。
「今日は王都のお祭りの日なんだよ♪」
目の前の光景を見て驚いている三人にミントが状況を説明した。
「ぴわわ…お祭り初めて見た」
楽しげに笑いながら行き交う人々を見ながら言うプリンと
「わー!夏祭りだー!」
軽快な音楽に目を輝かせるココアと
「…腹減ったァ」
たくさんの人々で賑わっている出店を見てお腹を押さえるポトフ。
「あはは それじゃ、しゅっぱ〜つ!」
そんな三人を見て、楽しそうに笑いながらミントが言った。
「「おー!」」
そうして四人はお祭りの波に入ってゆきました。
と、同時に
「って、もうはぐれちゃったのみんな?!」
四人ははぐれてしまいました。
「まったく…大丈夫かなぁ?」
ミントはそう言いながら溜め息をつくと
「コーラ十本下さい♪」
取り敢えずコーラを買いにいった。
「ぴわわっ…み…ミントぉ?」
人波に溺れながら必死にミントを探すプリン。
「…む?」
そんなプリンの眠たそうな目に
[金魚すくい]
と書いてある暖簾が飛込んできた。
「…金魚…救い?」
漢字変換を間違えながら、プリンは金魚掬いに立ち寄った。
「よぉそこのかっこいいお兄ちゃん、お兄ちゃんもやってくのか?」
すると、その店のおじさんがプリンに話しかけた。
おじさんの声に振り向いた金魚掬いをしていた女の子たちは、プリンを見るなりきゃいきゃい騒ぎ出した。
「…!」
そのおじさんを見て固まるプリン。
何故なら、そのおじさんがまるでヤ○ザのようなお方だったから。
「…成程。こいつからこの金魚さんたちを救えば良いのだな」
と、勝手にルールを解釈したプリンは
「…この勝負、受けてたつ!」
っておじさんに言ってお金を払った。
おじさんはとても親切にプリンにお椀とポイを手渡しました。
「うー人多いと大変ー…みんなとはぐれちゃったよー…」
キョロキョロと辺りを見回しながら人の流れにそって歩くココア。
「って言うかこれじゃお店にもいけな―…」
そう言っている途中で
ドン!!
「きゃ?!」
ココアは人とぶつかってしまった。
バランスを崩したココアが後方に倒れそうになったところ
ふわ…
と、誰かが後ろから優しく支えた。
「大丈夫ココアちゃん?」
それと同時に聞こえてくる聞き覚えのある声。
「! ポトフ!!」
ココアはポトフに支えられていたのでした。
「あ、ありがと―…」
ココアは状態を戻しながら彼にお礼を言おうとした瞬間
「どォいたしましてェ♪」
ポトフが大量に食べ物を所持していることに気が付いた。
「…それ全部買ったの?」
ココアがゆっくりと尋ねると
「いやァ〜俺がワタアメとか言うの買いに行ったら、そこのおねェさんがいろいろくれたんだァ♪」
ポトフはそう説明すると
「しかもタダ!お祭りはお得だな!あっはっはっ!」
朗らかに笑いだした。
「…はは…そう…」
やっぱり顔なのかと引きつった笑いを溢すココア。
「はい ココアちゃん♪」
すると、にこっと笑いながらポトフがココアにリンゴ飴を手渡した。
「あ、ありがとー」
ポトフに礼を言いながら、ココアが彼に貰ったリンゴ飴を口に運ぶと
「俺の食べかけだけどV」
ってポトフが言った。
「?!」
バフッと顔を赤くしてリンゴ飴を口から離すココア。
「ううう嘘ぉ?!」
だってお前飴の食べかけって言ったらヤバイだろ?!と言うような顔でココアがポトフに聞き返すと
「ウン。嘘♪」
にこっと笑いながらポトフが言った。
「地獄に落ちろ☆」
スパァン!!
にこっと笑いながら彼に渾身の平手打ちを見舞わすココア。
「ぐはァ?!」
その衝撃で人波を飛び越えたポトフは
ズザーッ
「!! ポトフ?!」
運よくミントのところに辿り着いた。
「だっ大丈夫?!ズザーッてなってたけど!?」
慌てて彼の元に駆け寄るミント。
「よ…よォミントォ…」
ポトフはぐぐぐっと起き上がると
「…はい」
ばたっ
ミントに焼きトウモロコシを渡して力尽きた。
「え?あ、ありがとう…ってええ?!ポトフー?!」
力尽きた彼をガクガク揺さぶるミント。
「あ、やっほーミントー」
そこにリンゴ飴を頬張りながら平然と現れるココア。
「! ココア!ポトフが!ポトフが!!」
涙目になりながらミントが騒いでいると
「ぐす…む?ミント?」
金魚掬いをしていたプリンが振り向いた。
「! プリン!!こんなところにってええ!?なんで泣いてるの?!」
えぐえぐと泣いているプリンを見て仰天するミント。
「…掬えないし…救えないの…」
プリンは見事に破れたポイを握り締めながら小さく呟いた。
「な…なぁお兄ちゃん」
「ぐす…む?」
彼を気の毒に思った店のおじさんは
「持って帰りな」
と言って、彼に三匹の金魚が入った袋を手渡した。
「…僕にくれるの?」
「ああ」
「…!ありがとう!!」
三匹の金魚さんを貰ってご機嫌になったプリンは立ち上がると、倒れているポトフに回復魔法をかけ
「ふふふ 貰った」
「そ…そう…よかったねプリン?」
「私もやってみよっかなー!」
「金魚って食えるのかァ?」
ミントたちと一緒に楽しくお祭りの夜を過ごしましたとさ。