第91回 料理日和
ぷわ…ねむね─…
む?なんだこのマイクは?
・・・。
ぴわ?!僕がナレーターになってる!?
……照れる。
おはよう。僕はプリンだ。
「今回はプリンがナレーターなんだね?」
む。ミントだ。
「うむ。ミント、ナレーターって何をする?」
「へ?あ〜、その場の状況を説明したりするんだよ」
ふむ。成程。面倒だな。
「あ、ちなみにナレーターがいないと話が分からなくなっちゃうから、今回は寝ちゃ駄目だよプリン?」
・・・。
「…うむ。分かった」
「頑張って!」
ふふふ
ミントが応援してくれたので、今回だけは睡魔に負けないように頑張ろう。
うむ。もうすぐ家庭科の授業が─…
キーンコーンカーンコーン
む。始まった。
ちなみに、今日の家庭科は調理実習をやるらしい。
「…始まっちゃったねポトフ」
「…始まっちゃったなミント」
…む?
「どうしたの?」
僕は、えらく浮かない顔をしているミントとおまけにその理由を尋ねてみた。
「「・・・」」
…答えの代わりに、二人のなんとも言えない視線が返ってきた。
「…プリン?」
「む?」
僕がミントの方を向くと
「「動くな」」
・・・。
「どうして?」
僕が更に尋ねると
「"どうして?"?嘗めてんのかテメェ?」
おまけの方が口を利いた。
「テメェがいると料理になんねェからに決まってんだろ?」
・・・。
失敬な。
「僕にだって料理ぐらい出来─…」
僕が反論している途中で
「…包丁で血まみれになったのはどこのどいつだ?」
・・・。
あの時は本気で死ぬかと思ったな。
「か…過去に縛られるなっ!」
そう。人は日々成長を─…
「弱火のガスコンロで火葬寸前になったのはどこのどいつだ?」
・・・。
…ガスコンロ怖い。
「ったく…テメェ並に料理が出来ねェヤツなんてそうそういねェぞ?」
そう言って溜め息をつくおまけ。
むぅ…料理なんかしたことないのだから仕方ないだろう。
お家にはコックさんがいるし…
「だっ…だから前を向いて生きろと─…」
でも、悔しかったので言い返すことにした。
そう。過去に縛られているようでは人は成長出来─…
「…プリン?」
「む?」
ミントに呼ばれて、僕は振り向いた。
「此処に座ってて?」
「・・・」
ミントは椅子を用意していた。
トントントントントントン
「…」
僕は椅子に座っておとなしく教室で行われている調理実習を眺めていた。
「わは〜相変わらず上手だねポトフ〜?」
「あっはっはっ!任せろミントォ♪」
…包丁を持っているのに何故血まみれにならない?
「他に切るものあったっけかァ?」
「え〜っと…あ。人参と玉葱があるね」
ぶう…暇…
「玉葱か…」
チラリ
む?
「…なんだ?」
おまけがこっちを向いたので何用かと尋ねると
ぽーんっ
「ぴわ!?」
おまけは答える代わりに何かを投げてきた。
僕はなんとかそれを受け取った。
「とっ…突然何を─…」
「暇なんだろ?」
今日はよく発言を遮られる日だ。
…と、言うか…
「その皮でも剥いてろよ」
くるり
そう言って、わんわんは再び作業を開始した。
・・・。
わんわんに気遣われた。
「あはは ポトフ優し〜」
「べっ!?…つにそんなんじゃ…何もしてねェのに完成品食われるのはなんか癪だろ?」
ミントにそう言われて照れているわんわんに
「…ありがとう…」
僕はお礼を言ってみた。
「だから違うっつってんだろ?!つか早く剥けよ!?刻むぞ?!」
そう言って、わんわんは僕に包丁を向けた。
もちろん刻まれたくはないので、僕は早く皮を剥く事にした。
うむ。ただの皮剥きなら血まみれになったり燃える心配はないな。
「あはは 素直じゃないね〜?」
「はっ早くルゥ作るぞ!」
ふふふ
僕は皮剥き開始だ。
むきむき。
ペリペリペリペリ
「…なんか"ルゥ"って聞くとびっくりするね?」
「あっはっはっ!国王様の愛称だっけ?」
むきむき。
ペリペリペリペリ
「そうそう 分かってんじゃんポッティー♪」
「ってルゥ様?!」
「国王様!?」
むきむき。
ペリペリペリペリ
「おお!この芳しい香りはカレーだな!?」
「は…はァ…」
「どっから湧いて出たんですかルゥ様?」
むきむき。
ペリペリペリペリ
「いひひ♪今回はちゃんとした仕事だぞ?ここの校長に用があるんだ!」
「なら早く校長室に行って下さい」
むきむき。
ペリペリペリペリ
「ポッティ〜…ミントが冷た〜い」
ひしっ
むきむき。
ペリペリペリペリ
「校長室は此処を出て突き当たりの階段を降りると右手に見えますよ国王様」
「なんかその親切な対応に"早く消えろ"って言葉がダブって聞こえるぞポッティー?!」
むきむき。
ペリペリペリペリ
「あ。バレました?」
「!! …なんだよなんだよ…折角遊びに来たのに二人してそんなに冷たくしなくたっていいぢゃん!!」
むきむき。
ペリペリペリペリ
「まァ…なんて言うか…なァミント?」
「うん。なんて言うか」
「「早く消えろ」」
「オープンに言っちゃった?!」
むきむき…
ペリペリペリ…
…む?
「うわ〜ん!!校長に言いつけてやる〜!!」
バシンッ!!
「…まったく…なんなんだあの人は?」
「あっはっはっ…まさに神出鬼没だな?」
・・・。
「ホントにね。…じゃあ次は野菜を炒めよっか」
「おゥ♪…ってそだ 皮剥き終わったか枕?」
二人はくるりとこちらを向いて固まった。
「…え?プリン?これはどういう…?」
僕の周りに落ちている皮を見てゆっくり口を開くミント。
「皮剥き終わった」
僕がそう答えると
「…中身は?」
今度はわんわんが口を開いた。
「なくなっちゃった」
僕は正直に答えた。
うむ。わんわんから渡された変な形の野菜は、剥いても剥いても中身が出てこないという摩訶不思議な─…
「馬鹿かテメェ?!」
怒られた。
「きっ…貴様が皮を剥けと言ってきたのだろう?」
言い返してみた。
「剥きすぎだ馬鹿!!」
「って言うか玉葱も知らないのプリン?!」
今度はタブルで怒られた。
「…む?タマネギ?」
ふむ。この変な形の野菜はタマネギだったのか。
原形初めて見た。
その時、僕の頭の中に疑問が浮かんだ。
「…タマネギの中身は何処にあるんだ?」
「「馬っ鹿野郎!!」」
また怒られた。
むう…料理って難しい。