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学校日和  作者: めろん
86/102

第86回 海日和

彼岸花。


死の花という異名を持つその血のように紅い花は、毒を持ち、血しぶきを思わせるような放射状の花弁をつけている。


別名、曼珠沙華。


「…」


ミントは倒れているプリンとポトフを静かに見下ろしていた。


「「…」」


プリンとポトフが倒れている廊下には、彼らの血が彼岸花の花弁のように広がっている。


『『ジェラ…』』


目の前で起こった一瞬の出来事に、流石のマッドホイップも押し黙っていた。


そう。一瞬。


ミントが技の名を呟くと同時に、プリンとポトフは地に伏した。


プリンのテレポートでも、ポトフの駿足の脚でも、ミントの攻撃を回避することが出来なかったのだ。


"曼珠沙華"


ミントの最強にして最速を誇る最凶の必殺技である。


「! なっ…何事だ!?」


この状況を作り出した犯人は確実に、血が滴る武器を持ち、白いワイシャツに返り血を浴びているミントであることはすぐ分かる。


その場にやって来たセル先生は、珍しく慌てた様子でミントの肩を掴み、彼を自分の方に振り向かせた。


すると


「あ?」


凄まじい殺気と共にミントが振り向いた。


「オヤスミナサイ」


せ…セル先生が負けた!!


セル先生は、何事もなかったかのように自室へお戻りになられました。


「「…」」


ミントがまだこんな様子なので、プリンとポトフは回復魔法が使うことが出来ないのだった。


((回復したら殺られる…ッ!!))


二度打ちならぬ二度討ちを恐るるが故に。


「…カルシウム…ちゃんと取らなきゃな」


ミントは小さく溜め息をついた後でそう呟くと


シュシュ


二本の凶器をしまい、倒れている二人の元へ移動してしゃがんだ。


「ごめんね 大丈夫?」


そして、ユルく謝った。


「「だ…大丈夫〜…」」


二人はユルく許した。


もちろん、こんなに大出血しているのだから大丈夫なはずはない。


それなのに彼らがミントを許した理由は


((余計なこと言ったら殺られる…ッ!!))


二度打ちならぬ二度討ちを恐るるが故である。


「そっか よかった」


ミントはそう言いながら立ち上がると


「お詫びにプリンと骨付き肉買ってあげるからね?」


申し訳なさそうに微笑みながら二人に言った。


「「メディケーションっ♪♪♪」」


すぐさま元気になる二人でした。









次の日


「「♪」」


幸せそうにバケツプリンと骨付き肉を頬張るプリンとポトフ。


ちなみに、バケツプリンとは、バケツサイズの巨大プリンのことである。


「ホンっトーよく食べるよねー?」


そんな二人を、トーストを食べながら呆れたように眺めるココア。


「僕は幸せだ…!」


「俺も幸せだっ♪」


そんなことは気にせずに幸せそうに食べ続ける二人。


「まあ…この二人は幸せなだけ良しとしてー…」


ココアは幸せそうな二人に小さい溜め息を溢した後、気まずそうにチラリと横に目をやった。


「…どよ〜ん…」


ココアの隣には、思わず自分で凝声語を言ってしまうくらいどよ〜んとしたミントが座っていた。


(…問題はこっちだねー…)


そんなミントを見て、ココアは無理矢理微笑むと


「げ…元気出しなよミントー?」


無理矢理ミントを元気付けようと試みた。


…のだが


「元気…?ココアはオレがこんな裏切るようなコトして元気になれるとでも?」


ミントは今にも泣きそうな顔をしながらココアに言い返した。


「う…裏切りってそんな…深く考えない方がいいと思うよー?」


そんなミントに呆れながらココアが言うと


「何言ってんのココア!?これは大問題だよ?!この血までコーラになってんじゃないかって思うぐらいコーラ好きのオレがコーラ様々を差し置いて牛乳なんか飲んでるんだよ!?」


ミントは、牛乳ビンをテーブルにダンッと置きながらそう怒鳴り散らした後で


「あぁあコーラぁあ〜…」


頭を抱えて何かうめき出した。


「…ならコーラも買えばいいじゃない…」


ココアは呆れたようにテーブルに目を戻すと


「…?」


テーブルの上に置いてあるミントの牛乳ビンのフタに何か書いてあることに気が付いた。


「…当…た…り?」


フタに書いてある文字をココアが声に出して読むと


「そんなっ…?!もう一本飲めと?!このオレにもう一度罪悪感にさいなまれる地獄を味わえと!?」


ミントの顔が真っ青になった。


「いや誰もそんなコト言ってな─…」


ココアが否定していると


「む。当たりが出たら海に行けるらしいぞ?」


プリンが食堂のカウンターにぶら下がっている看板を指差しながらミントとココアに言った。


「「へ?」」


「美味ァ♪」


「あ!僕のプリン!!」









そんなこんなで海にやって来た四人。


「わー物凄い都合のいい話だねー?」


何も聞こえません。ええ。まったく。


「あれ?プリン入らないの?」


海面から顔を出したミントが、服を着て岩に座っているプリンに問うた。


「うむ。僕泳げない」


その質問にコクンと頷くプリン。


「へぇ〜 そうなんだ?」


ミントはプリンの元へ移動しながらそう言った。


「うむ。そうなん─…」


プリンが頷いている途中で


ぐいっ


「ぴわ?!」


バシャーン!!


ミントがプリンの腕を引っ張って、彼を海の中に落っことした。


「あはは♪折角海に来たんだから入らないと!」


海に落ちたプリンを見て楽しそうに笑うミント。


ぷくぷくぷく…


なかなか上がってこないプリン。


「…」


・・・。


「プリンー?!」


バシャーン!!


最悪の事態が頭を過ぎり、ミントが慌てて海に潜っていった頃


「あっつぅー…こんなんじゃ焼けちゃうよー…」


ココアはそんなことを呟きながら、浜辺にある木陰でかき氷を食べていた。


シャクシャクとココアがかき氷を食べていると


「…ココアちゃんは入らないの?」


ヤツが来た。


「うん。焼ける」


シャクシャクとかき氷を食べ続けるココア。


「…そっか…」


何を期待していたのか、残念そうに少しうつ向くポトフ。


すると


「!」


ココアが食べているかき氷が目に入った。


「…食べたいのー?」


焼けつくような真夏の太陽の下で見る赤いシロップがかかった白銀のかき氷は、それはそれは美味しそうに輝いて見えるようで。


ココアが持っているかき氷に釘付けになっていたポトフに彼女が尋ねた。


「…はっ!?え!?えェ〜っと─…」


ココアの言葉で我に返ったポトフが慌てて今何を尋ねられたのか考えていると


「…じゃ、あーんして?」


って微笑みながらココアが言った。


「─…へ?!」


思いもよらぬココアの言葉に驚くポトフ。


「早くー!」


そんなポトフを急かすココア。


「じゃっ…じゃァ」


ポトフは可愛らしいココアの可愛らしい願いを叶えるために、その口を開けた。


「はい♪あー─…」


そんな彼を見て、ココアはにっこりと笑うと


「─…ん!!!!!!!」


右手に持っているスプーンの方ではなく、左手に持っている容器の方をポトフの口に突っ込んだ。


「?!」


とんでもない量の氷が口の中に雪崩れ込んで来たので驚きまくるポトフ。


キンッ


「っゥ!?」


それと同時に強烈な頭痛に襲われるポトフ。


「あははっ♪大丈夫ー?」


苦しんでいる彼を見て、楽しそうに笑うココア。


「…あっはっはっ…」


相手がプリンだったら確実にボッコボコに蹴りまくるところだが、今の相手はココア。


だから


「…悪い子にはお仕置きしちゃうぞ?」


ふわり


って言いながらココアを優しく抱き締めた。


「っ!?」


予想外だったのか、顔を真っ赤にして驚くココア。



「よくも私のかき氷全部食べたわねー!?」


ドカ─────────ン


「理不尽っ?!」


ココアは物凄く理不尽な理由でポトフを海の方に殴り飛ばした。


バシャーン!!


「はっ!!ポトフ!!丁度いいところに!!」


飛んできたポトフに気が付いたミントがバッと振り向いた。


「…はェ?」


海面から顔を出したポトフが小首を傾げると


「助けてー」


上からプリンの声が聞こえてきた。


「はァ?」


ポトフが上を向くと


『にゅ〜』


プリンは巨大なタコの魔物に捕えられていた。


「何やってんだ枕ァ!?」


ポトフが突っ込むと


「捕まってんだー」


ポトフと同じ口調でプリンが答えた。


(…割と平気なんだな)


とか思うミント。


「つか馬鹿かお前?」


ポトフは上を向きながら


「テレポートすればいいじゃねェか?」


って言った。


「「あ」」


そう言えばそうデスネとか思うミントとプリン。


「テレポート」


素早くテレポートするプリン。


『にゅ〜?!』


獲物がいなくなって驚く魔物。


「ミントォ腹減ったァ〜」


お腹が空いたポトフ。


「じゃあたこ焼き作ってあげるね?」


魔物を見ながらにっこりと笑うミント。


『にゅ?!』


「蓮華♪」


その後、タコさんは四人で美味しくいただきましたとさ。

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