第8回 召喚日和
一陣の風が吹き、静かな森を騒がせた。
「…オレが…召喚魔法使い…?」
ミントが言った。
「おっ、恐らくですよ?!恐らく…」
サラダが慌てて付け加えた。
「…ミントくんは、MPが高すぎて…消費量が少ない"浮遊魔法"などの低級魔法が使えないのだと…思います…」
サラダがやっと言い終わった。
「凄い凄い凄い凄い凄いよミントー!!召喚魔法使いなんて、滅多にいないのにー!!!!」
ココアがはしゃいだ。
「…て…言われても…」
ミントが呟いた。
「やり方とか分かんないし…」
「あ、そ…その点は大丈夫です!」
サラダが言った。
「ぼ、ぼくの本…差し上げます!」
そしてサラダは杖を出し、空中に小さな円を描いた。
ぽんっ
サラダの掌に分厚い本が現れた。
遠くの物を瞬間移動させる事が出来る"呼び出し魔法"です。
「は、はいどうぞ!」
そしてサラダがミントに本を差し出した。
「え?え?」
焦るミント。
「これ…召喚魔法について色々と書いてあるみたいなんですけど…ぼくは解読出来なかったので…ミントくんに差し上げます!」
サラダが微笑みながら言った。
「解読出来なかったので?…サラダ?」
ミントが言った。
「はい?」
サラダが首を傾げた。
「…オレが頭良いと思ったら大間違いだぞ!?」
「ああ大丈夫です。思ってませんから」
サラダがさらりと言った。
(なっ!?こいつのキャラ前回までと違うくない?!)
とか思うミント。
「ですが…ミントくんならきっと…解読出来ると思いますよ?」
サラダが言った。
「その本…召喚魔法使いにしか読めないように出来てるんです!」
「へ?」
そう言われ、本を開いてみるミント。
「ふむ。不思議な本か」
プリンが本を覗き込みながら言った。
「はい…不思議な本です」
サラダが返す。
「…ってコトはー…もしミントがその本読めなかったら…?」
ココアが恐る恐る尋ねた。
「そっ…その時は…」
サラダが言いかけると
「…悲しい現実」
プリンが顔を背けた。
「「…」」
無言になる三人。
そんななか、パラパラとページを捲っていくミント。
「…ミント?」
ココアが声をかけた。
「…」
しかしミントは夢中で本を読み進めていた。
「や…やっぱり!読めるんですね?!」
サラダが顔を明るくした。
「…」
何も言わないミント。
「うむ。よかった。これでミントもやっと立派な主人公っぽく―…」
「ぷっプリンさん!!!?…本当のコトですけど」
「言い過ぎだよー!!!?…本当のコトだけど」
「むぐ」
サラダとココアに口を押さえ込まれるプリン。
「…す」
ミントが口を開いた。
「すっごい!!この本凄いよサラダ!!」
そしてサラダに言った。
「読めるんですね?!ミントくん!」
サラダが言った。
「うん!なんか知らないけど、オレ、読めるよこの本!!」
ミントがはしゃいだ。
「本当に貰っていいの?この本?!」
サラダに尋ねるミント。
「も、もちろんです!」
「凄い凄い凄いミントー!で、ちょっと言っていー?」
ココアが言った。
「「?」」
ココアを向くサラダとミント。
「凄く…言いにくいんだけどー…」
ココアが右手を頭の後ろに持っていって
「私達、魔物に囲まれちゃいましたー!!」
・・・
・・・・・・
素早く辺りを見回すミントとサラダ。
『『ぐばばばば!!』』
四方八方、熊だらけ。
「約束と違うじゃないですかあああああああ!!?」
ミントが叫んだ。
「言ってる場合じゃないよー!!!!」
ココアが言った。
「ぷっプリンさん!!テレポートです!!」
サラダが焦りながら言った。
「駄目だ」
プリンが言った。
「「?!」」
プリンを向く三人。
「…って先生が言ってた」
「「はあ!?」」
『『ぐばあ!!』』
そうこうしている内に、熊の魔物が襲いかかってきた。
((こっ殺される…!!!))
そうココアとサラダが思った瞬間
ぶわんっ
突然、ミントが黄緑色に輝きだした。
「「!?」」
『『!?』』
魔物も驚き、動きが止まった。
「み…ミントぉ?」
「…綺麗」
ココアとプリンが言った。
「ミントくん…まさか?」
サラダが言い終わるや否や
「…萌え出る黄緑…」
ミントが呟くと、不思議な文字が羅列した黄緑色の魔法陣が空中に出現した。
「ζ(ゼータ)!!」
ミントが叫ぶと、魔法陣が激しく輝き出した。
「何何何なんなのー?!」
ココアが、あまりの眩しさに目を手で覆いながら言った。
「これが…召喚魔法です!!」
サラダが言った。
「「!!」」
プリンとココアが驚いた時、魔法陣の輝きは最高潮に達した。
『…私を呼んだ、貴方は誰ですか?』
光の中から不思議な声が聞こえた。
「オレは…ミント=ブライト…貴方の新たな召喚主だ」
ミントが答えた。
『ミント…ブライト?…ふふっ…承りました』
声が笑った。
「?」
何故笑ったのか、ミントが首を傾げる。
『いえ…良いのです。さあ私の主よ…なんなりと御命令を』
声が尋ねた。
「…うん!みんなを助けてζ!!」
ミントが言った。
『承知致しました…では…分かっておいでですね?』
声の主、ζが言うと、光が弱まり始めた。
「…うん!」
そう頷くと
「みんな目を瞑って!!」
ミントが叫んだ。
「「!?」」
驚いたが、ミントの言った通りにする三人。
『ふふっ…その通りです主…きゃっ☆』
ζが言うと
『『ぐば―…!?』』
魔物の絶叫が中途半端に聞こえた。
「…終わったζ?」
ミントが言った。
『ええ』
ζが返す。
「ありがと…!戻ってζ!!」
ミントが言うと
しゃんっ
と澄んだ音がして、空気が揺れるのを感じた。
「…ミント?」
ココアが口を開いた。
「あ!…もう目を開けていいよみんな!」
ミントが言った通り目を開ける三人。
「一体なんな―…」
ココアが発言の途中で息を飲んだ。
「…!」
「す、凄い…です!」
プリンとサラダも同様に驚いた。
「何何どういうコトー?!」
ココアが言った。
「なんで魔物がみんな石になっちゃってるのー?!」
四人を取り囲んでいた熊の魔物達は皆、白く石化して動かなくなっていた。
「召喚獣"バジリスク"を呼んだんだよ。ζは相手より魔力が上だったら石に出来るんだ」
ミントが言った。
「バジリスク?」
ココアが首を傾げた。
「…バジリスクは…えっと…巨大なトカゲに鶏のトサカがついていて…その目を直視してしまうと相手を石化させてしまう、究極の恥ずかしがり屋さんだと言われています」
サラダが説明した。
「ミント凄い」
プリンが言った。
「う、うん…オレもびっくりした…」
ミントが呟いた。
「凄い凄い凄いよミントー!!よく分かんないけど、今、私達を助けてくれたんだよねー!?」
ココアが言った。
「え?…オレがみんなを…助けた?」
ミントが顔をあげて聞き返した。
「うむ。ミント凄い」
「そうですよ!!ミントくんは…直接ではないですけど…召喚魔法を使ってぼく達を助けてくれたんです!!」
プリンとサラダが言った。
「オレが…役に立てた?」
ミントが言った。
「「うん!」」
微笑む三人。それを見て、ミントも微笑み返した。
「じゃあさっさとこの森を抜けよー!!」
ココアが言った。
「うむ。もう眠い」
プリンが言った。
「プリンはいっつも寝てるじゃん!?」
ミントが突っ込むと
「ぐー。」
「寝た?!」
プリンが寝た。
「す…睡眠は一番のストレス逃避方らしいですよ?」
サラダが言った。
「サラダって物知りだねー!!」
ココアが言った。
「い、いえとんでもないっです!」
「ほら行くよプリン?」
「ぐー。」
四人が歩き出すと
「そう言えばサラダはなんでミントのMPの量が分かったのー?」
ココアがサラダに尋ねた。
「ああ!はい!それはこの猫髭のお陰なんです!」
「「猫髭?!」」
ココアとミントが聞き返した。
「はい!ぼく達、ルポ族の猫系統の種族がもつ猫耳と猫髭と猫尻尾は代々微弱な魔力周波数を…」
「ぐー。」
こうして四人は賑やかに森を抜け、学校へと戻っていきました。