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学校日和  作者: めろん
74/102

第74回 仲良し日和

「…ってェのが俺の華麗なる誕生秘話だ」


プリンに投げつけられた枕を抱えながらポトフが言った。


「…はへ〜…」


ポトフの華麗なる誕生秘話に真剣に耳を傾けていたミントは


「…あ、狼になったときの記憶はないのポトフ?」


思い出したようにポトフに質問した。


「理性がぶっ飛んで、本能だけで行動するようになるからな」


頷きながら答えるポトフ。


「! ポトフに理性なんかあったんだね!?」


その答えを聞いて驚くミント。


「ん?驚きポイント違うくない?」


ポトフが聞き返すと


「てっきり食欲と色欲の塊なのかと」


人指し指を立てながらミントが言った。


「あっはっはっ!最悪な男だな俺?」


悲しげに笑いながらポトフが言うと


「あはは♪…あ!」


ミントは笑って再び何かを思い出した。


「否定はしねェんだな?」


微笑みながら悲しげに呟くポトフ。


「"水色の髪の少年"って、プリンのコトだよね?」


そんなの気にも留めずにミントが小首を傾げた。


「…やっぱし?」


初めは別人だと思っていたポトフも、華麗なる誕生秘話をミントに話している内にそのことに気が付たようだ。


「…だからプリンはあの時あんなコトしたんだねぇ」


すると、肩をすくめながらミントが言った。


「あの時?」


あの時、それは、ポトフとプリンが学校で初めて会った時。


≫≫≫


ガチャ


「起きてプリン?」


そう言いながらプリンの枕を奪うミント。


「…む…?」


目を覚ましたプリンが目を擦りながら枕を受け取ると


「今日からこの部屋に一緒に住むことになったポトフくんデス」


隣に立っているポトフを手でさしながらミントが彼を紹介した。


「!」


ポトフを見て、驚いて目を見開くプリン。


「あっはっはっ!初めましてェ♪」


そんなプリンに、ポトフは右手を差し出しながらにこやかに言った。


「・・・初めまして?」


確認するようにゆっくり聞き返すプリン。


「? 初めまし―…」


微笑んだままポトフが小首を傾げると


「テレポート」


プリンが言った。


すると、ポトフが姿を消すと同時に


バッシャーン!!


お風呂場から大きな水の音が聞こえてきた。


「!? プリン?!まだお風呂沸いてないよ!?」


驚いたミントがプリンに言うと


「あいつ嫌い」


プイッとそっぽを向きながらプリンが言った。


「ええ?!そんないきなり!?」


人を嫌いになるスピードが素晴らしく早いプリンにミントが突っ込んでいると


「何すんだテメェ!?それが初対面のヤツに―…」


びしょ濡れのポトフが怒鳴りながらお風呂場から出てきた。


「テレポート!!」


そんなポトフに向けて再び叫ぶプリン。


バッシャーン!!


先程より激しい水の音。


「はわわ…一体どうしたのさプリン!?」


ミントが慌てながら機嫌が悪いプリンに尋ねると


「あんなヤツなんか大っっ嫌い!!」


ほとんどいつも無表情をキープしていたプリンが、珍しく怒りを露にして怒鳴った。


≫≫≫


「…プリンにとっては久しぶりの再会だったんだね」


困ったように笑いながらミントが言った。


「…っ!!」


プリンの気持ちを思うと胸が痛くなるポトフ。


「…俺…」


ポトフは下を向くと


「枕に謝ってくる…!!」


しっかりとした声でミントに言った。


「…そっか」


その言葉を聞いて、ミントは微笑むと


「クローズ!!」


ローブから杖を出して天井に腕を伸ばしてミントが叫んだ。


シャアッ!!


すると、一斉に何かが閉まる音がした。


「! ミント!?」


無属性魔法を使えるようになったミントにポトフが驚いていると


「今、学校にあるカーテン全部閉めたから満月の光は差し込む心配はないよ♪」


にこっと笑いながらミントが言った。


「!! ありがとなミント!!」


ポトフは嬉しそうにお礼を言うと


ひょいっ


とミントを担いだ。


「いってらっしゃ…ってあれえ?!オレも!?」


ミントが気付いたときは、もう部屋の外。


「こっちだ!!」


「出ました枕臭!!」


なんだかんだ言って、楽しそうなミントくんでした。









バンッ!!


ドアを勢いよく開け放つポトフ。


薄暗い魔物学の教室。


その教卓に、長い水色の髪の少年が後ろを向いて立っていました。


「枕!!」


「プリン!!」


その姿を見て、彼のことを呼ぶポトフとミント。


「…」


しかし、彼はまったく反応を示しません。


「ま…枕…あの約束は…」


ポトフが恐る恐る口を開くと


「…なんの話だ?」


「「え―…」」


彼はゆっくりと振り向き


「俺はゴマプリンだ」


嘲笑うような声で自らを名乗った。


((ゴマの方でしたか!!))


ミントとポトフが仰天していると


「微風」


ミントを向いたゴマプリンが魔法を唱えた。


「うわあ?!」


「! ミント!!」


ミントが微風に巻き込まれる直前で彼を抱えて左に跳ぶポトフ。


バコ―――――――――ン


「…大丈夫か?!」


机の下に潜って瓦礫を避けながらポトフが尋ねると


「う…うん…ありがとポトフ」


驚いたように彼にお礼を言うミント。


「危ないから…ここに隠れてろな?」


そう言ってにこっと笑うとポトフは持っていた枕をミントに預け、机の下から飛び出した。


「クク…俺と戦う気か?」


戦闘体勢のポトフを見て、邪悪に口角を吊り上げるゴマプリン。


「ああ」


ポトフは不敵に笑いながら頷くと


「速攻でカスタードに戻ってもらうぜェ!!」


そう叫びながらゴマプリンに突進していった。


(カスタード?!)


思わず心の中で突っ込むミント。


「クク…それは無理だ」


そんなポトフにゴマプリンが言った。


「何っ!?」


ポトフが聞き返すと


「邪魔なリミッターがなくなったからな」


ゴマプリンは邪悪に微笑み、その右手をポトフに向けた。


次の瞬間


「旋風」


ドカ―――――――――ン


「疾風」


バコ―――――――――ン


「突風」


ボカ―――――――――ン


「烈風」


ドッカ――――――――ン


「台風」


ズド―――――――――ン


「神風」


ちゅど――――――――ん


「がっ…!?」


六連発の強力な風魔法が、次々とポトフに襲いかかった。


「ポトフ!!」


思わず枕を抱えたまま机の下から飛び出すミント。


「クク…」


そんな彼を発見したゴマプリンは更に邪悪に微笑み、素早く彼に右手を向けた。


「!」


ミントが気付いたときにはもうすでに遅く


「…木枯らし」


ゴマプリンは樹属性一撃必殺の風魔法を唱えた。


「キラキラァ!!」


ちゅどおおおおおおん!!


同時にポトフの叫び声が聞こえ、冥界の風と聖なる光が激突して相殺した。


「大丈夫かミント!?」


すぐさまミントに駆け寄るポトフ。


「う…うんっありがとうポトフ!!」


ミントは彼にお礼を言うと


「…ポトフ、プリンに目くらまし出来る?」


油断なく砂煙の向こう側に目を向けながらポトフに尋ねた。


「? 多分」


ポトフが返すと


「お願いっ!!」


枕を机の上に置いたミントが薔薇の鞭を出した。


「…了解♪」


彼が何をしようとしているのかを理解したポトフは


「ピカピカァ!!」


晴れてきた砂煙の向こう側を指さしながら叫んだ。


カッッッ!!


「っ?!」


直後、薄暗い部屋は眩い光に包まれた。


「朝顔!!」


ポトフの技名に突っ込みを入れたい気持ちを必死で押し殺し、ミントは薔薇の鞭を走らせた。


クンクンクンッ


「…捕まえた♪」


ミントがそう言うと、光はどんどん薄れていった。


「!!」


ゴマプリンは、ミントの鞭に雁字搦めにされて床に倒れていた。


「スッゲェミント!!」


ゴマプリンが倒れている様を見て驚きの声をあげるポトフ。


「あはは♪ポトフの魔法程じゃないよ♪」


にこっと笑いながらミントが言うと


「あっはっはっ!照れるぜェ♪」


後頭部に右手を当てながら朗らかに笑うポトフ。


「…にしても、どうしたらカスタードに戻るんだ?」


そしてゴマプリンをまじまじと見ながら呟いた。


「…リミッター…」


ミントも同じように呟くと


「! もしかして!」


と言って、ゴマプリンに枕を持たせた。


すると


「!! くっ―…」


ゴマプリンは悔しそうな声を漏らし


「…ぐー。」


そのまま眠りについた。


「ビンゴ♪」


薔薇の鞭を消しながらミントが言った。


「…枕持ってないとゴマ化するのかコイツ…」


呆れたように溜め息をつきながら呟くポトフ。


「あはは…どうする?プリン寝ちゃってるけど?」


起こす?とミントが尋ねると


「部屋まで連れてってやろォぜ?」


ポトフは首を横に振って微笑んだ。









「…む…?」


何か温かいものを感じたプリンがゆっくりと目を開くと


「!?」


目の前の信じられない光景に驚き


ガバッ


と状態を起こした。


「お?起きたか枕?」


プリンが起きたことに気が付いたポトフが後ろを向きながら尋ねると


「ききっ貴様なんのつもりだ!?」


頬を赤らめながらプリンが言った。


プリンはポトフにおぶさっているのでした。


「お前をお家まで送ってやってんだよ」


ポトフがそう言うと


「!」


思わず過去を思い出すプリン。


「…約束…ホントごめんな?」


そんなプリンに謝罪するポトフ。


「…!」


それを聞いて驚いたプリンは


「…僕も…ごめん」


小さな声で枕をぶつけた事を謝った。


「!」


プリンの謝罪の言葉に驚くポトフ。


「…」


「…」


(な…なんかいい雰囲気になってない!?)


二人のよろしい感じの沈黙に、彼らの少し後ろを歩いていたミントが何かを期待していると


「…臭い」


ボソッとプリンが言って


「殺ス」


パッとポトフがプリンの足を持っていた手を離して


「ぴわ!?」


ドスッとプリンが床に落下した。


(なってない!!)


ミントの期待は、またもやプリンの一言によって綺麗に裏切られました。


「テメェ…人が超親切にレディかミントにしか貸さない背中を貸してやってんのになんだその態度は?!」


落下したプリンに向かって怒鳴るポトフ。


「…臭いものは臭いのだから仕方ないだろう?」


服の汚れを叩いて落としながら鼻で笑うプリン。


「テメ―…」


ポトフが何か言い返そうとした直後


「ふふふ 野獣は臭くて困るな?」


不敵に笑いながらプリンが言った。


「上等だァ!!」


こうして二人の喧嘩が始まりました。


「あはは…本当に仲良しだねぇ?」


二人の仲の良さになかば呆れるミントくんでした。

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