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学校日和  作者: めろん
71/102

第71回 流血日和

『アオー…ン!!』


満月の夜、静かな森に狼の遠吠えが響きわたった。


「…」


プリンから貰ったひよこさん帽子を無言で見つめるミント。


「いやでも被んないワケにもいかないし…」


ミントはそう言いながらひよこさん帽子を被った。


「…」


でもやっぱり何か嫌なようで。


ミントはローブのポケットから久々に杖を引っ張り出すと


「出ろ!」


爆発覚悟で杖を振ってみた。


すると


ぽんっ


「!?」


ミントの手に青い帽子が現れた。


「え?嘘?!本当に出ちゃった!?」


呼び出し魔法が成功して驚くミント。


「…浮け!」


信じられない様子で、先程現れた帽子に向かってミントが杖を振ると


ふわり


とその帽子が浮いた。


「わあ!!いつの間にかオレ無属性魔法出来るようになってる?!」


浮いている帽子を見ながら目を輝かせるミント。


「わは〜♪なんでか分かんないケドよかったぁ〜♪」


そう言いながら、ひよこさん帽子を取って普通の帽子を被るミント。


「ふふ♪浮け!」


普通の帽子があるので、用無しのひよこさん帽子を右手でクルクル回しながら、ミントが落ちている枝に向かって杖を振ると


ドカンッ!!


さも当然のように枝が爆発した。


「…あれ?」


不思議に思ったミントが


「…出ろ」


再び杖を振ると


バコンッ!!


再び爆発が起こった。


「ええ?!どうし―…」


ミントは頭を抱えながら叫んでいる途中で


「…まさか…」


ギギギと機械のように右手に持っているひよこさん帽子の方に目を向けた。


ぽすっ


「…」


ひよこさん帽子を被った後で、ミントが先程と同じように杖を振ると


ふわり


と枝が浮いた。


「えええ?!オレが魔法使えたのって、このダサ―…もとい…ひよこさん帽子のおかげなの?!」


あまり嬉しくない事実に頭を抱えるミント。


「…プリンもちゃんと機能性見極めて選んでくれてたのか…」


ミントは溜め息をつきながら


「はあ…何故だ…何故この帽子には三本の毛が生えているんだ…?」


ひよこさん帽子の天辺についている三本のフェルトの毛に疑問を投げ掛けた。


これで、めでたくミントはひよこさん帽子を常に被ることになりました。


「…は!待てよ!?もしかしてこの新作眼帯にも何か秘密が?!」


ハッとしたミントは、杖を振ってポトフから貰った眼帯を呼び出すと、右目にそれを装備してみた。


「…」


視界が狭くなっただけだった。


「わは〜…これでよく普通に生活出来るなポトフ…」


ふらふらと歩きながらポトフの視界を体験するミント。


「これだと、もし右から襲撃があったら―…」


ミントがそう言った瞬間


『アオーン!!』


「え―…」


ミントの右側の叢から、一匹の黒い狼が踊り出た。


ガブッ!!










「…ぷう…ここまで来れば…」


小さく息を吐いて、おでこに掻いた小汗を拭いながらプリンが言った。


「あ!ヤッホープリン!まだ生き残ってたんだー!」


すると、プリンの後ろからプリンが現れた。


「む?僕がいる」


後ろから現れたプリンに小首を傾げるプリン。


「あははっ♪私はココアだよー♪」


そんなプリンを見て、プリン姿のココアがきゃらきゃら笑いながら言った。


「そ…そうか…」


間伸びした口調の自分の声を聞いて、何か気持ち悪くなるプリン。


ドドドドドドドドドドドド


「ひひひ!!見つけたわよプッディィイイィイング=アラモオォオォォド!!」


すると、背後から危険な笑い声が聞こえてきた。


「!!」


真っ青になるプリンと


「?」


小首を傾げるプリン姿のココア。


「てててテレポート!!」


ピュッ


真っ青になったプリンは、迷わずその場から消え去った。


「シット!!また逃げやがっ…て?」


悔しそうに舌打ちしたチロルが小首を傾げた。


「鎌なんか振り回してどうしたのーチロルー?」


先程消えたと思ったプリンが目の前に居たから。


「ひひひ…ようやく観念したようね?」


邪悪に口角を吊り上げるチロル。


「へ?なんのコトー?」


更に小首を傾げるプリン姿のココア。


「…なんでいきなり間伸びした口調になったか知らないケド…」


チロルはギュッと鎌を握り直すと


「キルキル首切る!!!」


思い切りそれを振り下ろした。


「きゃっ?!いっいきなり何すんのよチロルー!?」


なんとか避けたプリン姿のココアが叫んだ。


「…"きゃあ"?」


その悲鳴に訝しげに目を細めるチロル。


「…あ!」


プリン姿のココアは思い出したように杖を振り


ぽわんっ


「私はココアだよー?」


変身魔法を解いた。


「!! 邪魔者B!!」


ココアを見て目を見開くチロル。


「は?」


ココアが小首を傾げると


「よくもアタイを騙したわね〜っ!!」


チロルは再び大鎌を振り回し始めた。


「勝手に騙されたあんたが悪いんでしょおおお!?」


死ぬ気でチロルの攻撃を避けるココア。


「詐欺師はみんなそう言うのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「あんたの過去に何があったってのよーーー?!!」









シュパンっ


「…疲れた…」


何度も瞬間移動して、流石に疲れたプリンは


「ぷわ…」


口に手を当てながら欠伸をした。


「…ねむね…む?」


そう言っている途中で


「…血?」


血の臭いに気付くプリン。


プリンがゆっくりと顔をあげると


「! ミント?!」


「……ぷ……りん……?」


そこには右肩から大量に血を流して倒れているミントと


『ガルルルル…』


黒い狼が居た。


「っ!!」


その狼を見て、目を見開くプリン。


『アオーン!!』


そんなプリンを見て、狼は今度はプリンに襲いかかろうとした。


「…レストリクション」


『!』


プリンは拘束魔法を唱えて狼の動きを封じると


「テレポート」


ピュッ


狼とミントと共に、場所を移動した。











シュパンっ


月の光に照らされた薄暗い部屋にやって来た二人と一匹。


「…此処は…?」


ミントが弱々しい声でプリンに尋ねると


「僕達の部屋だ」


しゃっ


プリンはカーテンを閉めながら答えた。


真っ暗になる部屋。


すると


ボンッ


何かが小爆発を起こした。


「…?」


暗闇の中で右肩を押さえながら小首を傾げるミント。


「…」


プリンは無言で部屋の明かりをつけた。


明るくなる部屋。


「…?!」


目を見開くミント。


「…ゥ」


先程まで狼が居たミントの目の前には、ポトフが倒れていたのだった。


プリンは倒れているポトフに歩み寄ると


「起きろ」


ゴスッ


ポトフに"ぷるぷるきっく"をかました。


「ったァ?!何すんだよ枕!?」


突然のプリンの攻撃に飛び起きるポトフ。


「貴様…自分が何をしたか分かっているのか?」


そんなポトフに、静かな怒りを込めた質問を投げ掛けるプリン。


「はァ?いきなり何言って―…」


ポトフはそう返している途中で


「?! ミント!?」


肩に重傷を負ったミントの存在に気が付いた。


「…ぽ…ぽとふ…」


ミントが弱々しく名前を呼ぶと


「眼帯つけてくれたんだな?!」


目を輝かせながらポトフが言った。


「この場面でそこぉ?!」


バシュッ


自分の怪我を顧みずに突っ込みを入れるミント。


よって彼の肩から血が噴き出した。


「「ミント!?」」


ミントの無茶な行動に驚くプリンとポトフ。


「めめっメディケーション!!」


そしてすぐさま回復魔法を唱えるポトフ。


「あ…ありがと…ポトフ」


肩が完全に回復したミントが眼帯を外しながらポトフにお礼を言った。


「どういたしまし―…」


ポトフはそう言っている途中で


「…血?!」


口の中の血の味に気が付いた。


「…ポトフ?」


ミントが小首を傾げると


「ま…まさか…俺…?!」


ポトフは顔を真っ青にして頭を抱えた。


「…その通りだ」


そんなポトフを見て、静かにプリンが頷いた。


「っ!!」


プリンの言葉を聞いて、ポトフの顔から更に血の気がひいた。


「…?一体何がどうなってるの二人とも?」


さっぱりワケが分からない様子でミントが二人に尋ねると


「…ごめんなミント…」


下を向いたポトフが、小さく肩を震わせながらミントに謝った。


「ぽっポトフ?!」


突然の出来事にミントが驚いていると


「…俺は"狼男"なんだ」


ポトフが言った。

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