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学校日和  作者: めろん
70/102

第70回 殺気日和

日も暮れ始めた頃


「ぴくちゅっ!!」


静かな森から小さなくしゃみが聞こえてきました。


「…うう…なにか今勝手に僕が操作されたような…」


鼻に手を当てながらよく分からない事を言うプリン。


「…♪」


すると、どこからか楽しげな歌が聞こえてきました。


「む?」


歌が聞こえてくる方へ顔を向けるプリン。


「今〜逢いにゆきます〜♪だから〜もう少し待っててね〜♪愛しの愛しのミントきゅ〜ん♪♪♪」


プリンから少し離れた、少し開けたところに、黄色い髪を高いところで縛っている女の子がスキップをしながらやって来た。


「あれは…」


その女の子を見て


「…誰だっけ?」


小首を傾げるプリン。


「ああっ!!愛しのミントきゅんはいずこ…?アタイは…チロルは切ないです…!!」


すると、切なげに胸に手を当てながら女の子・チロルが嘆いた。


「…ああ」


ポンと手を叩いて思い出すプリン。


「! ミントきゅん?!」


その音に素早く反応し、目を輝かせながらプリンの方を向くチロル。


「僕はプリンだ」


そんなチロルにプリンが言った。


「ガッテム!!あんたはいっつもミントきゅんにまとわりついてる邪魔者Aじゃない!!」


輝いていた目に殺気が宿るチロル。


「僕はプリンだ」


そんなチロルにプリンが言った。


「キー!!黙んなさい!!アタイがミントきゅんに逢いに行くと必ずジャストタイミングで瞬間移動しやがって…!!おかげで今年度に入ってから、アタイ、一回もミントきゅんとお話出来てないのよ!!?」


地団駄を踏みながら怒りを露にするチロル。


「ごめん」


さらりと謝るプリン。


「謝って済んだら殺人は存在しねぇんだよ」


長い発言をしたのにたった三文字で返されたので、更に殺気が増すチロル。


「む?そうなのか?」


小首を傾げるプリン。


「ってワケでゴートゥーヘル!!死になさい!!」


チロルはそう言うとプリンに向けて杖を振った。


バチィン!!


「ぴわ?!」


その瞬間、プリンは断頭台に頭と両手を固定された。


それでも彼は枕を離さなかった。


「カット☆ダウン」


チロルが親指を下に向けると


ガコンッ


プリンの首の上にある鋭い刃の止め具が外れた。


鈍色に光る刃がプリンの首に向けて落下する。


「てててテレポート!!」


真っ青になったプリンがそう叫んで


ぴゅっ


断頭台から離脱した直後


ガショオォォオォン!!!


刃は先程までプリンの首があったところを通過し、鋭い音を立てて停止した。


「シーット!!避けてんじゃねぇよこの野郎!!!」


断頭台の隣に現れたプリンに怒鳴るチロル。


「さっ…ささ…殺人は犯罪だっ!!」


先程まで自分がいた刃が最後まで落ちた断頭台を見て、この上ない恐怖に苛まれるプリン。


「そんな一般常識知ってるわ!!馬鹿にすんなよこのクソ枕!!」


チロルが再び怒鳴ると


「ごめん」


さらりと謝るプリン。


「大体何よその長ったらしくてウザイ髪は!?あんた男でしょ?!」


もはやプリンのすべてが気に食わなくなってきたチロル。


「切ると寒いだろう」


さらりと答えるプリン。


「首ごと衣更えじゃあああ!!」


プリンとの暖簾に腕押しな会話にキレたチロルは、再び杖を振って、今度は馬鹿でかい鎌を呼び出した。


「だっ…だから殺人は犯罪―…」


驚いたプリンがチロルを止めようとした瞬間


「黙りゃ〜せえぇい!!!ここではアタイが法律よ!!!」


ってチロルが叫びながら大鎌を振り下ろした。


ザンッ!!


「っ?!」


プリンの頬に、細い血の筋が出来る。


僅かだが、避けきれなかったようだ。


「ひ…ひひひひひひひ…」


チロルはプリンの血を見ると、狂ったように笑い始めた。


「てててテレポート!!」


身の危険を肌で感じとったプリンは、戦闘から離脱した。


「ひひひひひひひひひひ…逃がさないわよお…♪」


大鎌についた血を、うっとりとした様子で眺めながるちょっと危険なチロルちゃんでした。










「棄権不可って…レディとミントに会ったらどォすんだよ…?」


頭を抱えながらポトフが言った。


野郎(ミントは含まず)はどうでもいいようですね。


「逃げるワケにも…戦うワケにもいかねェだろ…?」


戦闘から逃げることと、女性(何故かミントを含む)と戦うことは、彼の麗しき騎士道に反するようですね。


「それに今日は―…」


発言の途中で


「ロックンロール!!」


ポトフの後ろから呪文が聞こえてきた。


「…」


ポトフが何気無く右に跳ぶと


ドッカ――――――ン!!


先程まで彼が立っていた場所に、巨大な岩石が落下した。


「…なんだよテメェら?」


面倒臭そうに振り向きながら、茂みに向けてポトフが言うと


ザザッ


「ふっ…うまく避けたようだな!!」


茂みの中から図体のでかい男が現れた。


「はーっはっはっはっ!!我らはチロルちゃんファンクラブだ!!」


その男…覚えているだろうか…パセリが言うと


ザザザザッ


「「以後よろしく!!」」


パセリの後ろから、四十人くらいの男子生徒が現れた。


「…それが俺になんの用だ?」


ムサ苦しい集団に思い切り気分を害されるポトフ。


「はーっはっはっはっ!!愚問だな!!お前を倒しに来たに決まっているだろう!!」


そんなポトフの質問に、パセリが朗らかに笑いながら答えると


「「決まっているだろう!!」」


お供の皆さんも続いた。


「…」


明らかに気分を害されるポトフくん。


「我が校切ってのイケメン且つ成績優秀な生徒の片割れであるキミを倒せば?」


そんなの気にも留めずに、パセリが言うと


「「我らメイン進出!!出世街道まっしぐら!!」」


まるで卒業式にやる呼び掛けのように続けるお供の皆さん。


「…片割れ?」


それがますますポトフの神経を逆撫でする。


「はーっはっはっはっ!!と、言うことだから覚悟しろ!!行くぞ野郎共!!」


パセリが片手を挙げると


「「おー!!」」


お供の皆さんも手を挙げ、ポトフに襲いかかった。


「…ついてねェな」


そんなムサ苦しい集団を見て、溜め息をつくポトフ。


「はーっはっはっはっ!!そうだな!!何せこの多勢―…」


パセリの発言を掻き消すように


「…俺は今、最高に機嫌が悪い」


ポトフが殺気を孕んだ声で言った。


「「っ?!」」


彼の尋常ではない殺気に一同が怯み、皆の動きが止まった。


その瞬間


狼唱(ろうしょう)


そう言って、ポトフはフッと姿を消した。


「「っ―…!!!?」」


その直後、ポトフは男達の背後に立っていた。


驚く間も無く倒れてゆく男達。


ポトフの迅速な蹴りによって、彼らは一瞬の内に倒されてしまったのでした。


しゅんっ


「…本当についてねェな」


男達が強制送還された後、ポトフは頭を抱えながらそう呟き


ドサ…


力なくその場に倒れ込んだ。

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