第69回 変身日和
風薫る爽やかな新緑の森の中で
「久しぶりだなぁ…森…」
がっくりと肩を落とすミント。
「というか森に行く必要性はあるのか?」
ミントはそう言いながら、トボトボ歩き始めました。
「大体誰がこんなデンジャラスなイベントを―…」
自分の発言の途中で
「…戦闘好きで金持ち…」
バトルと賞金という言葉から、馬鹿でかいフォークを持った銀髪のチビッコの姿がミントの脳裏を過った。
「…まさかね?」
肩をすくめるミント。
「はぁ…誰にも逢わなきゃいいんだけど―…」
ミントがそう言った直後
「バーンバニッシュ!!」
って背後から声がして
ドカ―――――――――ン
「なあああああああ?!」
剣の形をした炎が上空からミントを襲った。
「だっ誰?!」
なんとかそれを避けたミントが振り向くと
「バーンバニッシュ!!」
という声と共に、再び上空に炎の剣が現れた。
「…っ!!ローズホイップ!!」
それを避けながらミントは薔薇の鞭を出現させると、声がした茂みに向かって素早く鞭を走らせた。
「くっ…!!」
すると、茂みの中から猫耳がついている赤毛の少年が飛び出した。
「!? サラダ?!」
その少年・サラダを見て驚きの声をあげるミント。
「…なかなかやりますねミントくん」
体勢を整えたサラダが落ち着き払った声で言った。
「サラダ…背後から奇襲なんて、どうしてそんなキャラに適わないコトを?!」
信じられないと言うようにミントが叫ぶと
「ふふっ」
サラダは薄く笑った後
「金に目がくらんだ奴なんて所詮こんなもんですよ」
邪悪な声でそう言った。
「?! サラ―…」
ミントが聞き返そうとした瞬間
「バーンバニッシュ!!」
三度ミントに攻撃を仕掛けるサラダ。
「っ!!」
鞭を木の枝に絡ませて、それを頼りにうまい具合いに木に飛び乗って攻撃を避けるミント。
「賞金の為…消えてもらいますよミントくん♪」
枝の上に立ったミントを見上げながら、サラダが邪悪に微笑んだ。
「くっ…まるで裏社会を垣間見ているようだ…!!」
そんなサラダを見て、ミントが怯んでいると
「…戦闘中に独り言なんて余裕やな?」
下から別の声が聞こえてきた。
「え―…」
ミントが振り向くと同時に
「雪やこんこん!!」
という叫び声がして
ドッシ――――――――ン
「っ?!」
魔法の勢いで枝から落ちたミントは、突如空から降ってきた巨大な雪だるまの下敷きになってしまった。
「た…タマゴ…?」
雪だるまの下で、苦しそうな声でミントが尋ねると
「そや」
サラダな隣に、ソバカス少年・タマゴが現れた。
「さて…仕上げといくでサラダ」
右手をミントに向けながらタマゴがそう言うと
「はい」
サラダは左手をミントに向けた。
「な…何を―…?!」
雪だるまに潰されているので身動きが取れないミントが口を開くや否や
「「喰らえ!!結合魔法・氷炭!!」」
サラダとタマゴが同時に叫んだ。
ドカ―――――――――ン
と同時に、氷で出来た炎がミントを襲った。
巻き起こる爆煙。
バラバラと崩れ落ちる雪だるま。
「やったか?!」
腕で目を庇いながらタマゴが言うと
「やってないよ」
煙の向こう側から、ミントの声が聞こえた。
「「っ!?」」
驚いた二人がミントが居た方を向くと
「そっちが二人なら…こっちも二人でいいよね?」
煙が晴れ、無傷のミントと
『( ̄▽ ̄)ノ』
ミントを守るように彼の前立っている、金色の角を持ったユニコーンが現れた。
「「んん!?今なんて言った?!」」
突然現れたユニコーンの存在よりも、ユニコーンのカギカッコが気になったサラダとタマゴ。
「μ(ミュー)、やっちまいな」
そんな二人の突っ込みなど気にも留めずに、ミントは自分が召喚したユニコーン・μに攻撃の指示を出した。
『(#`Д´)ゝ』
その言葉にμは了解すると
『ψ(`∀´)ψ』
悪魔のように笑いながら、鋭く尖った自慢の金色の角を向けてサラダとタマゴに突進していった。
「わわわっ忘れてました!!ミントくんの召喚魔法!!」
慌てふためくサラダに
「来るで!!」
タマゴが避けるぞと合図を出した。
二人は避ける為に、まず膝を曲げようと試みた。
「「え?」」
しかし、膝が動かない。
「あははっ♪」
驚いている二人を見て
「避けられるとでも思ったの?」
ミントがにこっと笑った。
「?! なんやこれ!?」
ハッとして下を向いたタマゴが驚きの声をあげる。
タマゴとサラダの五体は、ミントの鞭によっていつの間にか動きを封じられていた。
「まっ待って下さい!!召喚獣を出したら召喚主は動けないハズじゃ?!」
真っ青になったサラダが叫ぶと
「へぇ?そうなんだ」
ミントが言った。
微笑みを絶やさずに。
「そうそう…って…」
サラダが頷いていると
『(⌒‐⌒)』
μ到着。
「にゃあああああ!?」
サラダ絶叫。
「サラ―…っだああ!?」
タマゴK.O。
『(≠▼_▼)y-~』
「"出直してきな"だそうです」
何故かμの言葉が分かるミント。
すると
しゅんっ
倒れていたサラダとタマゴの姿が消えた。
「?!」
『Σ(OДOノ)ノ』
突然の出来事に、ミントとμが驚いていると
ピンポンパンポーン♪
『お知らせ忘れました〜!戦闘不能になった参加者は自動的に学校へと強制送還されます〜!なので、倒れてるところを魔物についばまれるなんてコトは多分ないと思いますので安心して下さいね〜!』
クー先生による放送が入った。
「…ぅゎぁ」
苦笑いしながら一歩退くココア。
「おーほっほっほ!ここで会ったが百年目ぇえ!!」
「いっつもプリンくんとポトフくんと一緒にいてずるいんだからっ!!」
「逆ハーレム?!羨ましすぎよ!!オマケはどうでもいいけど!!」
「ってワケで、覚悟なさいココア!!」
現在ココアは、ウサギさん寮の女の子・リンゴ、ミカン、ザクロ、プラムの四人に囲まれているのでした。
ちなみにオマケ=ミント。
「あらら…リンゴもミカンもザクロもプラムもプリンとポトフのコトが好きなのねー?」
溜め息交じりにココアがそう言うと
「「よ…呼び捨て?!」」
衝撃を受けるフルーツ四人組。
「いやいや…私があの二人を"くん"付けで呼んでたら逆におかしいでしょ?」
いや、ポトフくんは物凄く喜ぶと思うが。
「黙れナレーター」
…ココアちゃん怖い。
「でもそれって親しげ〜」
「なんか良さげ〜」
「あたしも呼んでみたいげ〜」
「めっちゃ羨ましげ〜」
ぶーっとほっぺを膨らませるフルーツ四人組。
「はぁ…あんたらの望みはよぉく分かったわ」
ココアは呆れたように溜め息をついた後
「いい夢見させてあげる」
と言って杖を振った。
ぽわんっ
「「!? プリンくん!!?」」
すると、ココアが立っていたところに枕を持っていないプリンが現れた。
「だっ騙されちゃ駄目よみんな!!これはココアが変身して―…」
リンゴが三人に言い聞かせようとした直後
「…リンゴ」
ふわ…
「「っ!!」」
リンゴはプリン姿のココアに優しく抱き締められた。
正体がココアだと分かっていても、姿形から声までプリンなので真っ赤になってしまうフルーツ四人組。
そんな四人に追い討ちをかけるように
「僕と結婚してくれないか?」
プリン姿のココアがリンゴにプロポーズした。
「「めろり〜〜〜ん☆」」
プリン姿のココアの刺激的な言葉によって、幸せそうに気絶してゆくフルーツ四人組。
「…単純ねあんたらー?」
学校に強制送還された四人を見て、変身を解いたココアが肩をすくめながら言った。
「…!」
と、同時に
「ずっとプリンかポトフに変身しとけば女子には楽勝じゃない!!」
良からぬ考えを起こすココアちゃんでした。




