第67回 お出掛け日和
「…!」
食堂でプリンを食べていたプリンの動きが止まった。
「? どしたァ?」
向かい側でポトフを食べていたポトフが顔を上げると
「今日ミントの誕生日」
プリンの蓋を見ながらプリンが言った。
「へェ〜…」
そのままポトフを食べ続けるポトフ。
「…ええ?!なんでもっと早く言わねェんだよ?!」
ワンテンポ遅れてポトフがプリンに突っ込んだ。
「今日ミントの誕生日」
繰り返すプリン。
「意味違ェし全然速くなってねェよ?!」
的確に突っ込むポトフ。
「きび」
無表情でプリンが言った。
「酷い略し方だな!?つうかその二文字の意味を捕えられた俺が凄い!!」
突っ込みながら自分自身を褒めるポトフ。
「ぷっちん」
プリンはそう言いながら、空になったお皿の上に再びプリンをぷっちんした。
「おかわりしてんじゃねェよ?!」
ポトフが突っ込むと
「プリンは美味しいと思う」
プリンを食べながらプリンが言った。
「いや知らねェよ?!」
突っ込みまくるポトフ。
「むう…誕生日とは具体的には何をするんだ?」
お皿に乗ったプリンをスプーンでつついてぷるぷるさせながら、プリンがポトフに尋ねた。
「…そォだなァ…」
ポトフを食べ終わったポトフは
「祝う」
口の周りを拭いながら言った。
「えらい抽象的だな」
再びプリンを食べ始めるプリン。
「じゃあ…プレゼントとか?」
閃いたようにポトフが言うと
「ぷれぜんと?」
プリンが小首を傾げた。
「なんで平仮名表記なんだよ…プレゼントも知らねェのかお前?」
訝し気にポトフがプリンに尋ねると
「知ってる」
抑揚のない声でプリンが答えた。
「…あっそう…」
そんなプリンを見て溜め息をつくポトフ。
「ふむ…プレゼントか…」
プリンを食べ終えたプリンがスプーンをお皿の上に置きながら首を捻った。
「ミントの欲しいモノってなんだろなァ〜?」
同じように考え始めたポトフが尋ねると
「さあ?」
首を傾げるプリン。
「少しは考えろよテメェ」
静かに突っ込むポトフ。
「むー…」
そう言われたので再び考え込むプリン。
「…俺?」
すると、ポトフがフォークを自分に向けながら言った。
「それは絶対にない」
即座に否定するプリン。
「じゃあ枕?」
自分に向いていたフォークを、今度はプリンに向けながらポトフが言うと
「…照れる」
枕で顔を隠すプリン。
「…お前なァ…」
それを見て、ポトフは呆れたように溜め息をつくと
「…行ってみるか?」
と言いながら椅子から立ち上がった。
「うむ。」
頷きながらプリンも立ち上がると、二人は食堂から出ていった。
「…?」
先程まで二人が座っていた席に、大量のコーラを持ってやって来たミントが目を丸くしながら
「プリンとポトフが一緒にお出掛け…?!」
食堂から出ていった二人を見送った。
学校からそれほど遠くないところにある街にやって来たプリンとポトフ。
「…」
「…」
二人は、賑やかな商店街を無言で歩いていた。
(…なんで俺はコイツを誘ったんだろ?)
居た堪れない雰囲気に頭を抱えるポトフ。
「ぐー。」
すると、隣からいびきが聞こえてきた。
「寝るな」
べしっ
「…む?」
プリンの腰の辺りを軽く蹴って彼を起こすポトフ。
「ったく…俺らはミントの誕生日プレゼント買いに来たんだろ?」
呆れたようにポトフが言うと
「うむ。知ってる」
コクンと頷くプリン。
「はァ…じゃァな?俺あっち行ってくる」
ポトフは溜め息をつくと、プリンから離れるように右に曲がった。
「…」
ててて
そんなポトフを追い掛けるプリン。
「…」
ポトフが左に曲がると
「…」
ててて
彼を追い掛けるプリン。
「っなんでついてくんだよ?!」
振り向きながらポトフが突っ込むと
「…お店分からない」
下を向きながらプリンが言った。
「はェ?」
ポトフが小首を傾げると
「…僕、お店行ったことない」
枕で顔を隠しながらプリンが言った。
「?! いくつだよテメェ?!」
予想外の言葉にポトフが突っ込むと
「十四だ」
顔から枕を離して答えるプリン。
「ま…まァ俺と誕生日一緒だしな?!」
素直な返答に若干困るポトフ。
「…本当に買い物したコトねェのか?」
一息置いてからポトフが尋ねると
「うむ。食堂しかないぞ」
えっへんとプリンが答えた。
「いや威張るな?!」
その仕草にポトフが透かさず突っ込みを入れると
「…だから…ついてく」
恥ずかしそうにプリンが言った。
「枕…」
ラヴストーリーは突然に。
「「誤解を招くようなナレーションをするな」」
「おっそいなぁ〜」
夕陽が差し込んできた頃、自分の部屋で宿題をやっていたミントが伸びをしながら言った。
「どこ行ったんだろあの二人―…」
そう言いながらミントが机にペンを置いた瞬間
バンッ!!
って部屋の扉が開いて
「たっだいまァ♪♪♪」
ってポトフが入ってきて
ガバッ!!
っとミントに抱きついた。
「うわ?!おかえりポトフ!?」
流れるような動作に若干感動を覚えながらミントが言うと
パタン
と静かに開いていた扉が閉まった。
「! プリンもおかえり」
自分に抱きついているポトフを離れさせようと試みているミントが、扉を閉めてくれたプリンに言うと
「うむ。ただいま」
コクンと頷きながらプリンが言った。
「どこ行ってたの二人とも?」
ポトフの腕をペシペシ叩きながら尋ねるミント。
「あっはっはっ!秘密ゥ〜♪」
ポトフが朗らかに笑いながらそう言うと
「お店」
ってプリンが言った。
「ゥをい?!」
透かさず突っ込むポトフ。
「お店?」
ミントが小首を傾げると
「うむ。…誕生日おめでとうミント」
プリンは綺麗にラッピングされた箱をミントに差し出した。
「…へ?プリン?」
驚いたようにミントがその箱を見ていると
「あっはっはっ!俺からもあるぜェ?」
ポトフが笑いながら言った。
「え?ポトフも?」
ミントがポトフの方を向くと
「俺V」
にこっと笑いながらポトフが言った。
「…うーん」
「露骨に困った顔された?!」
露骨に困った顔をしたミントにショックを隠しきれないポトフ。
「謹んで返品致します☆」
「そして爽やかに返品された!?」
爽やかに返品を宣言したミントに更なる衝撃を受けるポトフ。
「…冗談に決まってるだろミント?…はい」
ポトフは軽く凹みながらミントを離すと、ミントに箱を差し出した。
「あははっ♪ありがとうプリン、ポトフ!!」
にこっと笑いながらお礼を言ってプリンとポトフから箱を受け取るミント。
「…どォいたしましてェ」
まだ凹み気味のポトフ。
「…照れる」
枕で顔を隠すプリン。
「わは〜♪なんだろう?」
嬉しそうに箱を見ながらミントが言うと
「あっはっはっ!開けてみろよミントォ♪」
立ち直ったポトフが朗らかに笑いながら言った。
「うん!」
ミントは元気に頷くと
「…でも」
二人の方に顔を向けた。
「「?」」
小首を傾げるプリンとポトフ。
「…オレの誕生日、先々週なんだけど?」
そんな二人を見て、悲しげに微笑みながらミントが言った。
「え」
衝撃を受けるプリン。
「あっはっはっ!どォいうコトだ枕?」
そんなプリンに、爽やかな微笑みを向けるポトフ。
「あぅ…えわわ…」
焦り始めるプリン。
「何情報だテメェ?!ミントが傷付いたじゃねェか!!」
ポトフが怒鳴ると
「だ…だってプリンの蓋に"今日は貴方のトモダチの誕生日!!"って…」
おろおろしながらプリンが言った。
「馬鹿かテメェはァ?!」
「ぷっプリンの蓋の嘘つきーっ!!」
手に入れた情報の真偽は、自分でよく考えて判断しましょうね。