第56回 告白日和
「「…」」
ミントとポトフは、旅館の前でポカンと口を開けて立っていた。
立派な瓦で出来た屋根をつけた木造平屋建てのその旅館は、二人を圧倒するほど巨大で豪華だった。
「…おっきいね」
旅館を見つめたままミントが言うと
「ね」
旅館を見つめたまま同意するポトフ。
「? 早く早くー」
そんな二人に向かって、プリンが旅館の入り口の前で手招きした。
「「あ…はい」」
二人は口を閉じるとプリンの後を追い掛けた。
「「…」」
畳がズラリと並んでいる大きな和室に通されて思わず言葉を無くすミントとポトフ。
「…凄い広いね」
部屋を見つめたままミントが言うと
「ね」
部屋を見つめたまま同意するポトフ。
「? どうした?」
プリンが小首を傾げながら尋ねると
「「いえなんでもございまセン」」
ほぼ同音で答える二人。
「む?そうか」
プリンはそう言うと、荷物を移動させた。
「…金持ちは違うね」
プリンを見つめたままミントが言うと
「ね」
プリンを見つめたまま同意するポトフ。
すると
コンコン
ノックが聞こえてきた。
「はい?」
ミントが返事をすると
サーッ
と襖が開き
「失礼致しま―…」
春色の着物を身に纏った桜色の髪をした女の子が現れた。
「「!?」」
ミントとプリンとポトフが驚いていると
「…―せん」
サーッ
トンっ
女の子は静かに襖を閉めた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
すとーんっ!!
「ココア!?」
「ココアちゃん?!」
ミントとポトフが勢いよく襖を開けると
「いやーっ!!なんでこんなとこにいんのー!?」
綺麗にまとめた頭を抱えながらココアが叫んだ。
「旅行」
普通に答えるミント。
「はっ!そらそうか!!」
口に手を当てながら納得するココア。
「ココアこそなんでこんなとこに?」
小首を傾げながらミントが尋ねると
「…此処、私の家だもん」
ってココアが答えた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ええええええええ!?」
ココアの意外な住まいに驚くミント。
「…着物姿も素敵だよココアちゃん?」
その隣でココアの肩に手をまわしながらポトフが言った。
「そりゃどうも」
スパァン!!
「ぐはァ?!」
真横に吹っ飛ぶポトフ。
「…少しは学習しろ」
吹っ飛んだポトフの横にしゃがみ込みながらプリンが言った。
「はあ…こんなコトなら今日お手伝い休めばよかったー…って…あ」
ココアが溜め息をつきながら言うと、何かを思い出したようにミントを見た。
「?」
ミントが小首を傾げると
「丁度いいところに!!」
パンッと胸の前で手を合わせながらココアが言った。
「へ?」
ミントが聞き返すと
「ちょっと待っててー!」
って言って、ココアは廊下の向こうへと消えていった。
「ほらアロエっ!こっちこっち!!」
しばらくすると、ミント達の部屋にココアが戻ってきた。
「なんですか?」
同じような春色の着物を身に纏った短めの茶髪の眼鏡っ子・アロエを連れて。
「! アロエ?!」
驚いたようにミントが声を出すと
「! ミントさん!」
驚いたように声を出すアロエ。
「はいミントこっち出て」
「へ?」
ココアはそう言ってミントを部屋から出して
「えへへ♪アロエは虫どころか病原菌も殺せないくらい優しいコなんだよミントー?ね、アロエっ?」
にこっと笑いながら言った。
「え?…あ…はい」
コクリと頷くアロエ。
「いやいくら優しくても病原菌は殺そう?!」
透かさず突っ込むミント。
「そんなの気にしないのーっ!…チャンスだかんねアロエっ!頑張りなよー?」
ココアはそう言うとミント達の部屋に入って
すとんっ
と襖を閉めた。
「? ミントは?」
入ってきたココアにプリンが小首を傾げながら尋ねると
「しーっ!黙って盗聴するのーっ!」
自分の口に人指し指を当てながらココアが言った。
「と、盗聴?」
プリンが聞き返すと
「ほらプリンもっ!」
ぐいっ
「ぴわ!?」
ココアはプリンを襖に近付けた。
ぐにっ
「ぐはァ?!」
それによってプリンはポトフの背中に乗っかってしまったワケだが
「ちょっと黙っててー!」
ポカンッ
悲鳴をあげたポトフは、ココアのげんこつで黙らせられた。
「…俺って一体…?」
理不尽な出来事に悲しくなるポトフでした。
その時襖の向こうで
「…チャンスですか…その通りですね」
微笑みながらアロエが言った。
『『!』』
襖ごしにドキッとするココアとプリン。
「…チャンス?」
ミントが小首を傾げると
「ミントさん」
アロエが口を開いた。
「アロエ、ミントさんを初めて見た時からずっと…」
アロエが切り出すと
『いくのよアロエー!!』
襖ごしに小声で応援するココア。
『ぴわわっ…ココア、これは聞かない方が―…』
プリンが焦りながら小声で言いかけると
『黙って聞く!』
ココアに小声で制された。
「…ずっと…」
ミントを真っ直ぐ見つめるアロエ。
(…え?こ…この流れは…まさか…?)
ワンテンポ遅く今の流れに気付くミント。
「…ずーっと…」
アロエが再び言うと
(まさかあ!?)
顔が真っ赤になるミント。
その次の瞬間
「ミントさんの頭皮ひっぺがしてみたいと思ってたんです」
ってアロエが言った。
『『?!』』
襖ごしに驚く二人と
「…は?」
意味不明な言葉を聞き返すミント。
「ミントさんの髪の毛ってその色といいその別れ方といい…不思議ですよね?」
眼鏡をかけ直すアロエ。
『ちょっ…何言ってんのよアロエ?』
襖ごしに小声で動揺するココア。
「そ…だね?」
気にしている事を言われたのでミントがぎこちなく頷くと
「だから、アロエはミントさんの頭がどうなっているのか調べてみたいんです」
ってアロエが言った。
「は?…これは多分遺伝子の奇跡かと―…」
ミントが言いかけると
「奇跡なんてそんな非科学的な言葉、アロエは認めません」
ってアロエが言った。
「アロエ、一度興味を持つとなかなか止まれないんです」
アロエはミントを真っ直ぐ見つめると
「だから、少々採取させて頂きますね」
ってにこっと笑いながら言った。
『『何を?!』』
襖ごしに突っ込むココアとプリン。
「じっとしてて下さい」
「え?」
アロエは静かにそう言うと
ジャキンっ
「手元が狂ってしまいますから」
バタフライナイフを出して不敵に微笑んだ。
「ええええええええ?!」
ミントが絶叫すると
すとーんっ!!
襖が勢いよく開き
「ちょっとアロエー!!?ミントが気になってんじゃなかったのー!!?」
ってココアが叫んだ。
「はい 気になってますよ?」
そんなココアに小首を傾げながら
「研究素材として」
って答えるアロエ。
「研究素材?!」
透かさず聞き返すミント。
「50%ほど頭を採取させて頂きます」
アロエがバタフライナイフを構えながら言った。
「多っ!!?そんな事したらミントがハゲちゃうよー?!!」
頭を抱えながらココアが叫ぶと
「いやその前に死ぬだろ?!」
ってミントが突っ込んだ。
「逃げてミントっ!!」
慌てて叫ぶプリン。
「もちろん!!」
素早く逃げ出すミント。
「っていう事は…ええ?!ミントが好きなワケじゃないのアロエ?!じゃあどうしてミントを慰めたりチョコあげたりしたのよ!?」
頭を抱えながらココアがアロエに尋ねると
「解剖は対象物が最高のコンディションの時に行うのがベストです」
ミントを追い掛け回しながらアロエが言った。
今の彼女の走りは、以前ミントが見たトテトテ走りには程遠い、軽快なものだった。
「ええ!?じゃあさっき震えてたのは?!」
信じられないと言う風にココアが叫ぶと
「武者震いです」
ってアロエが答えた。
「何キャラなのよあんたー?!」
ココアが叫ぶと
「ちょっと待ってよアロエ!?」
ってミントが言った。
「何ですモルモット?」
立ち止まったアロエが小首を傾げると
「モルモっ?!…キミ、虫も殺せないんじゃなかったの!?」
ってミントが叫んだ。
すると
「…笑わせる」
鼻で笑いながらアロエが言った。
「「ホントお前何キャラなの!?」」
透かさず突っ込むミントとココア。
「当初の"おどおどキャラ"はどうしたのさあ?!!」
そして涙目で逃げ回るミント。
「そうよアロエ!!あなたは冴えないキャラだったハズじゃない!!?」
叫ぶココア。
「アロエ=ヨーグルト。ココアさんの従姉妹で今は旅館をお手伝い中。趣味は人間観察と解剖」
眼鏡をかけ直しながらアロエが言った。
「「聞いてねええ?!」」
透かさず突っ込むミントとココア。
「ぷわ…ねむねむ」
飽きたプリン。
「…ねェ俺って一体…?」
プリンの足の下で、展開から切り放されたポトフが切なく呟いた。




