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学校日和  作者: めろん
54/102

第54回 麻痺日和

「まっずゥ…」


口を手で覆いながらヨロヨロと森の中を歩くポトフ。


「クソ…枕のヤツ…」


悪態をつきながら、ポトフは木々の間の地面から飛び出している大きくて平な白い岩の上に座った。


「ん?」


自分が座っている白い岩の中心に、大きな黒い染みがついている事に気付いたポトフ。


「…っ!!」


それを見た瞬間、ポトフの顔から血の気が引いた。


ガサガサ


『…人間?』


そんな時、ポトフの背後に巨大な熊のような魔物が忍び寄っていた。


『…』


ガサガサ


気付く気配がないポトフに更に接近する魔物。


「…」


それでもポトフは、固まったように一点を見つめ続けている。


『キミ、強い?』


無防備なポトフに魔物はそう言うと、鋭い爪を突き立てた。









ドスッッッ










「…あー不味かったあ…コーラ持っててホントよかった…」


空のコーラのビンを振りながら一人でトボトボと歩くミント。


「ってココどこ?!」


今気が付いたように辺りを見回しながらミントが言った。


此処は昼間なのに暗い森の中。


「うわあ…」


顔色を悪くするミント。


「暗いなあ…魔物とか…魔物とか魔物とかいそうだなあ…」


ミントは肩を落としながらそう言うと


「…護身用!!ローズホイップ!!」


シュ


先端に真っ赤な薔薇が一輪咲いたトゲトゲの鞭を出して、左手でしっかりと握り締めた。










「ぐー。」


お花畑の真ん中で、枕を抱えて立ったまま眠っているプリン。


ぱちっ


「…むう…帰ってこない」


目を覚ましたプリンは、辺りを見回しながら言った。


彼の二人のお友達はしばらく前に、マズソウを口にして森へと走り去ってしまっていたのでした。


「迷子?」


小首を傾げるプリン。


そして二人が入っていった森を見る。


「…」


森の前には


[でんじゃらす]


って赤で書いた立て札が立っていた。


「あぅえわわっ…ミントーっ!」


それを見たプリンは、慌てて森へと歩いてゆきました。


「…走るの苦手」









ボタボタボタッ


白い岩の上に、温かい赤い血が数滴滴った。


「っ…!!」


突然の出来事に驚きながら右肩を押さえるポトフ。


『残念…キミ、弱いね?』


そんなポトフを見て、爪に付いたポトフの血を舐めながら魔物が言った。


「っ…ふざけ―…」


ポトフがキッと魔物を睨みつけると


『ごめんね。ボク、弱いヤツは嫌いなんだ』


ガッ!!


「っ?!」


魔物はポトフの首に手をかけると、そのままポトフを白い岩に叩き付けた。


そして


『死んじゃえ』


魔物は再び鋭い爪を振りかざした。










くんっ









「…」


いつまで経っても痛みが襲ってこないので


「…?」


ポトフが恐る恐る目を開けると


『…何これ?』


「!」


自分を襲おうとしていた魔物の腕に、トゲトゲした蔓が絡み付いている事に気が付いた。


「大丈夫ポトフ!?」


次いで聞こえてくるミントの声。


「ミント!!」


ポトフが自分を助けてくれたお友達の名前を呼ぶと


『…キミ、邪魔しないでくんないかな?』


邪魔が入ったので気が立っている魔物が言った。


「ぽっポトフを怪我させたヤツなんて許さないんだからっ!!」


そんな魔物に怒鳴るミント。


「ミント…!」


ポトフが感動していると


『ふぅん…じゃあキミは強いの?』


ミントの薔薇の鞭を振り払いながら魔物が尋ねた。


「…やってみれば?」


鞭を引き寄せながら静かに言うミント。


「…?」


いつもと違うミントに首を傾げるポトフ。


『わお…挑発だね』


そんなミントを見て、魔物はニヤリと笑うと


『いくよ』


鋭い爪を立てて、ミントに突進しようとした。


「多分来れないよ?」


その直後、失笑しながらミントが言った。


『はあ?』


魔物が聞き返した瞬間


「蓮華」


不敵に笑いながらミントが言った。


ビシコーン


バシコーン


ベシコーン


ベシコーン


ビシコーン


ベシコーン


バシコーン


バシコーン


ビシコーン


ビシコーン


『っ!!』


次々と襲ってくる鞭に全く対応できない魔物。


「フィニッシュ」


ミントはそう言うと


くんっ


『っ?!』


薔薇の鞭で素早く魔物を縛り上げ


ボンッ!!


抵抗する隙も与えずに魔物を絞め殺した。


「…すっげェ…」


鮮やかなミントの鞭捌きにポカンと口を開けるポカン。


「ポトフっ大丈夫?!」


ミントは鞭をしまうと、心配そうな顔をしてポトフに駆け寄った。


「お…おゥ…ヒール」


自分が怪我をしていることを思い出して、素早く回復魔法を唱えるポトフ。


「どうしたのさポトフ?」


傷が治った事を確認してから、ミントがポトフに尋ねた。


「はェ?」


主語が無かったので小首を傾げるポトフ。


「…さっきの魔物…ポトフの方が絶対強かったでしょ?」


そんなポトフに真剣な目を向けるミント。


「あ…あっはっはっ!ちょっとよそ見してた隙を狙われて―…」


真剣な雰囲気に頭を掻きながら答えるポトフに


「嘘つき」


ミントが言った。


「う…」


怯むポトフ。


「ホント嘘つくの下手だねポトフ?」


ミントが言うと


「…良い子だからな?」


弱く笑いながらポトフが言った。


「…何があったの?」


そんなポトフに優しく問掛けるミント。


「俺…昔、此処に来たことがあって…」


すると、ポトフが口を開いた。


「…」


黙って聞くミント。


「気付いたら大出血してたんだ」


「んん?!」


いきなり話が飛んだので思わず突っ込むミント。


「? どしたァ?」


ポトフが小首を傾げると


「そこに至るまでの過程はどうした!?」


ってミントが言った。


「憶えてなァい♪」


にこっと笑うポトフ。


「へーえ!!じゃあ大出血してどうなったの?!」


ミントは無理矢理納得して取り敢えず話を進めよう促した。


すると


「…右目が使えなくなった…」


ポトフがぽつりと呟いた。


「!?」


急展開に驚くミント。


場に重たい空気が流れる。


「「…」」


沈黙。


すると


「わ!ミント!」


「「!」」


プリンがやって来た。


「…と、お邪魔虫」


「あァ?」


素早くプリンを睨みつけるポトフ。


すると


「「!?」」


ミントとポトフが目を見開いた。


「…む?」


プリンが小首を傾げると


「「後ろおおおお!!」」


って二人が叫んだ。


「後ろ?」


プリンが振り向くと


『ばーむくーへーん』


巨大な人型の魔物が巨大な弓矢を構えて立っていた。


鉛色に輝く矢は、確実にプリンを狙っている。


「…おっきい」


「「いや誰も感想求めてないから?!」」


呑気なプリンに、ミントとポトフが突っ込みを入れると


『ばーむくーへーん』


魔物が矢を放った。


巨大な矢がプリンに向かって物凄いスピードで飛んでゆく。


「プリン!!」


「枕!!」


突然のお友達のピンチに叫ぶミントとポトフ。


すると


「ハンドルマター」


ってプリンが言った。


巨大な矢の動きが止まる。


「テレポート」


その巨大な矢を掴んだプリンはそう言った直後、魔物の頭の上に現れた。


『ばーむくーへーん?!』


魔物が驚いていると


「返す」


グサッ


巨大な矢を巨大な魔物の脳天に突き刺した。


『ばむ…』


ドシ―――――――――ン


巨大な魔物は豪快に倒れると、消滅していった。


シュパンっ


「ぷわ…」


戦いが終わると、プリンは欠伸をしながらミントとポトフの前に現れた。


「「…」」


あまりにも一方的な戦いに口をポカンと開ける二人。


「む?どうした?」


小首を傾げるプリン。


「い…いや…」


「…凄いね?プリン…」


ポトフとミントが言うと


「…照れれれる」


トサッ…


枕を落とすプリン。


「「?!」」


有り得ない出来事に目を見開くミントとポトフ。


「…むむむ?まままくららが…」


カタカタと震え出すプリン。


「ぷ…プリン?」


ミントが心配そうに彼の名前を呼ぶと


「ぷゆゅ…しびゅれるる」


ぼてっ


「プリンー?!」


「枕ァァ?!」


プリンが倒れた。


「どどどどうなってんのポトフ!?」


プリンに駆け寄りながらミントが尋ねると


「…これは完璧に麻痺症状だな」


プリンをまじまじと見ながらポトフが言った。


「麻痺?!」


驚いたミントが聞き返すと


「雀蜂にでも刺されたんじゃねェか?」


ってポトフが言った。




・・・




・・・・・・




・・・・・・・・・




≫≫≫


「ハチさんに刺された」


「えええ?!大丈夫!?」


「うむ。多分」


≫≫≫


「…」


ポックリ


「枕ァァァァァ?!!!」


「大丈夫じゃなかったあああああああああ!!!?」


こうしてプリンは、冥界へと旅立ってゆきました。


「「冗談に聞えねえええええええええええ?!!」」


「…はやくたたしゅけて」



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