第52回 ドアごし日和
カリカリカリカリカリ…
「…ふえ…」
溜め息をついてペンを机に置くミント。
彼はごっそり出された春休みの宿題に取り組んでいたようです。
「なんで春休みまで宿題が…」
そんな事を言いながらがっくりと肩を落とすミント。
すると
ピンポーン♪
「…?」
彼の家の呼び鈴が鳴った。
(誰だろ―…)
とかミントが立ち上がりながら思っていると
『ミ〜ントォ!』
「…」
家の外からポトフの声がした。
(何故オレの住所を…)
久しぶりの静かな休日を一瞬にして破壊したお客さんに、更にがっくりと肩を落とすミント。
しかし居留守決め込むワケにもいかないので、ミントは帽子を被りながら玄関へと向かっていった。
『…れ?』
再び外から聞こえてくるポトフの声。
『…本当に此処であっているのか?』
すると、その後に抑揚の無い声が聞こえてきた。
(!?プリンもいるの?!)
とか思うミント。
『テメェ…俺の鼻を馬鹿にすんなよ?』
ポトフが言った。
(臭い辿ってきたの?!)
とか思うミント。
『…貴様はわんわんか?』
『その歳で"わんわん"とか言うな』
そんな二人の会話をドアごしで聞いていたミントは
(激しく開けたくないなあ…)
とか思っていた。
『っかしいなァ…』
ポトフはそう言うと
ピンポイントピンポーン♪
呼び鈴で奇跡を起こした。
すると
『煩い』
ってプリンが言って
ドスッ
って効果音がして
『ぐはァ?!』
ポトフの悲鳴が聞こえてきた。
(?!)
ドスッという効果音にミントが焦っていると
『テメっ…何しやがった枕ァ?!』
声を荒げてポトフが言った。
『ぷるぷるきっく』
いつもの抑揚の無い声で答えるプリン。
『な?!俺はそんなダサイ技に飛ばされたのか!?』
変な技名にショックを隠しきれないポトフ。
すると
ピンポーン♪
『ミントー入れてー』
ってプリンが言った。
『流しやがった?!』
更にショックを受けるポトフ。
(…入れるべきか否か…)
ミントが悩んでいると
『…残念。留守か』
数秒と置かずにプリンが言った。
『諦めんの早ェな?!』
透かさず突っ込むポトフ。
『当たり前だ。何故僕がミントもいないのに休日まで貴様と一緒にいなければならない?』
そんなポトフにプリンが言った。
『…嫌か?』
数秒間置いて、ポトフが声のトーンを落としてプリンに尋ねた。
(!? なんかいい雰囲気になってない?!)
思わず二人が仲良くなるのでは?と期待するミント。
『うむ。ヤー』
(なってない!!)
しかしプリンの一言によってミントの期待は綺麗に裏切られた。
『お?ポッティーじゃん』
そこに、新たな声が聞こえてきた。
『あ!国王様!』
驚いたような声を出すポトフ。
(ルゥ様?!!)
本気で驚くミント。
『っ?!出たなプルプル野郎!!』
そんなの気にせず国王様が言うと
『む?僕はプリンだ』
って言い返すプリン。
『どっちでも一緒だ!!』
国王様が怒鳴ると
『ふむ。そうなのか』
すんなり納得するプリン。
『いや納得すんなよ?!』
透かさず突っ込むポトフ。
『?! よく見るとポッティーも背ぇ高いな?!なんセンチ!?』
気が付いたように国王様が尋ねると
『? …174?』
って答えるポトフ。
『っ!!? オレよりじゃすと20センチ―…』
衝撃を受ける国王様。
『はェ?国王様って15よ―…』
ポトフが言いかけると
『シャラーップ!!!!』
全力でその言葉を遮る国王様。
『ふふふ ちっちゃい』
そんな国王様に向かって楽しそうにプリンが言った。
『だまっ…黙れプルプル野郎!!』
震える声で怒鳴る国王様。
『ふふふ ちっちゃい』
再び楽しそうにプリンが言った。
『うわーん』
ついに泣き出した国王様。
『国王様泣かせた?!』
衝撃を受けるポトフ。
『ポッティ〜っ』
ガシッ
泣きながらポトフにしがみつく国王様。
『た…高い高ァい』
そんな国王様に、ポトフは"高い高い"をしてあげました。
『わーい高くなったー!!って馬鹿にしてんのかポッティー?』
喜んだと見せかけて静かにどすを利かす国王様。
『いいいいえ?!』
素直にびびるポトフ。
『ふふふ 高い高い』
微笑みながらプリンが言った。
『こんのプルプル野郎…』
ガタガタ震える国王様。
(…ヒトの家の前で…)
とか思うミント。
『あ。そう言えばミントは?』
すると、引き続き外から国王様の声が聞こえてきた。
『留守だ』
って答えるプリン。
『タメ口?!』
透かさず突っ込むポトフ。
『ふぅん…折角いい美容師紹介してやろうと思ったのに…』
口を尖らせながら国王様が言った。
(?!)
それを聞いたミントは
バンッ!!
「本当ですか?!」
家の中から飛び出した。
「「あ。ミント」」
声を揃えて飛び出してきたお友達の名前を呼ぶプリンとポトフ。
「なんだ いたんじゃん」
頭の後ろで腕を組みながら国王様が言った。
「ちゃんと染めてくれるんですか!?」
そんなの無視して国王様に問うミント。
「もち!」
にこっと笑って答える国王様。
「それ、何処にあるんですか!?」
目を輝かせながらミントが更に質問すると
「異世界♪」
ニヤリと笑いながら国王様が言った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
…パタン
無言で静かにドアを閉めるミント。
『『ミント!?』』
折角出てきたのに、また戻ってしまったミントにショックを受けるプリンとポトフ。
『いやいや本当の話だぞミント?!』
ドアごしに真面目な顔をして国王様が言った。
「へぇ…じゃあどうやってその異世界とやらに行くんですか?」
失笑しながらドアごしに国王様に尋ねるミント。
『ええと…お前らの学校のどっかの壁にある…む…虫食い穴を通って…』
頭を掻きながら国王様が言った。
「へーぇ?」
笑止。
『ちょっ信じろよ〜!?』
焦りながら言う国王様に
「いえいえ信じてますよ?新年度が始まったら是非行かせていただきます」
ってミントが言った。
『あ。あと、もうすぐお前の両親が帰ってくるそうだぞ?』
そこで思い出したように国王様が言った。
バンッ!!
それを聞いて、弾けるようにドアを勢いよく開け放つミント。
そして
ガシガシッ
「プリンっ!ポトフっ!!遊びに行こう今すぐ!!」
プリンとポトフの腕をしっかり掴みながらミントが言った。
「はェ?俺らはミントの家で―…」
ポトフが小首を傾げながら言いかけると
「今、家の中がとてもこの世のモノとは思えないほどメルヘンだから駄目!!」
ってミントが言った。
「「メルヘン?!」」
思わず意味不明ワードを聞き返す二人。
「っ!!行くよっ!!」
「わ!?」
「ミントォ?!」
そんなの答えている暇は無いと言わんばかりに、ミントは二人の腕を思いっ切り引っ張っていきました。
「…少なからずパー子の影響受けてんだな…」
そんなミントを見て、気の毒そうに微笑む国王様でした。