第51回 勘違い日和
「なんやねんアイツ?!」
昨日の出来事にご立腹の国王様。
「アイツって…プリンのコトですか?」
代名詞だったので尋ねるミント。
「プリン?!お茶目だな?!」
どこか懐かしいリアクションをする国王様。
「…プリンってのかアイツ…まぁ確かにプルプルしてたしな…」
「いや してないと思いますよ?!」
素早いミントのツッコミの後
「ミントの知り合いなのかアイツ?」
小首を傾げる国王様。
「え?…あ、はい プリンはオレの友達ですよ」
ってミントが答えると
「ミントと同い年なのかアイツ?!」
仰天する国王様。
「え?はい」
頷くミント。
「嘘だろ?!身長なんセンチだよアイツ?!」
頭を抱えながら国王様が聞いてきた。
「確か…178センチだったと思います」
小首を傾げながら答えるミント。
「ふざっ?!…スッゲ!!オレと24センチも?!」
思わず感動する国王様。
「身長バレますよルゥ様?」
静かに突っ込むミント。
「…そっか…そんなに高かったのかアイツ…それなら"ふふふ ちっちゃい"言われるのも納得―…」
顎に手を当てながら頷いていた国王様は
「出来るかあああ!!!」
って叫んで、被っていた王冠を床に叩き付けた。
「わは〜ノリツッコミですかルゥ様〜」
のほほんと微笑むミント。
「オレより…超…背が高いからって調子乗りやがって!!」
髪の毛をグシャグシャにしながら国王様が言った。
「悲しいですルゥ様」
のほほんと微笑むミント。
「腹立つ!!めっさ腹立つあのプルプル野郎!!」
ガタガタ震えながら国王様が言った。
「だからプルプルはしてないと思います」
のほほんと微笑むミント。
「よし!!そうと決まればやるぞミント!!」
素早く髪の毛を元に戻した国王様が言った。
「? 何をですか?」
小首を傾げるミント。
「脱走♪」
にこっと笑いながら国王様が言った。
「駄目です。と言いますか脈絡が見い出せません」
にこっと笑いながらミントが言った。
「えー?良いじゃん良いじゃ〜ん?」
ほっぺをぶーっと膨らませる国王様。
「キャラ変えたって駄目なものは駄目です」
にこっと笑いながらミントが言った。
「オレ…外の空気吸いたいなぁ…?」
両手の人指し指を胸の前でつんつんさせながら国王様が言った。
「窓から吸って下さい」
にこっと笑いながらミントが言った。
「…冷たいなミント?外出たらコーラいっぱい買ってやろうと思ったのに…」
下を向きながら国王様がボソッと言った。
「さあ行きましょう♪」
にこっと笑いながらミントが言った。
「…わーい」
こうして国王様とミントは城から脱け出しました。
「やっぱ外は良いな〜♪」
両手を上に上げて伸びをする国王様。
「…と言いますか、服変えただけでバレないって凄いですねルゥ様?」
道行く人々を見ながらミントが言った。
彼らは今、国王様が大通りの真ん中を歩いている事に全く気が付いていない。
と言うか、ミントの髪色の方が目立っている。
「う…」
その事に気が付いたミントは、帽子を深く被り直した。
「ほほぅ…まーだ髪色気にしてんのかミント?」
そんなミントを見て国王様が尋ねてきた。
「…当たり前じゃないですか…」
自分の髪の毛を摘みながらボソッと答えるミント。
右は赤なのに左は緑色。
これでは嫌でも目立ってしまう。
「いひひ♪染めれば良いじゃんか?」
それを聞いて、困ったように笑いながら国王様が言った。
「何回か染めてもらいましたケド…どうしても左右で色がおかしくなるんです」
下を向くミント。
気が付けばそこは国立公園でした。
「…まあ…その色だもんなあ…」
ベンチに腰を下ろした国王様は、ミントの髪の毛をしみじみと見ながら気の毒そうに言った。
「…ぅ」
涙ぐむミント。
「ミント…」
そんなミントを見て胸を痛めた国王様は
「オレの胸の中でドーンと泣けぇ!」
って言った。
「っ…身長が合いません」
涙ながらに冷静なツッコミをするミント。
「アホぅ!よおく見ろ!」
すると国王様が言った。
「…?」
ミントが顔を上げると
「身長+三十センチ!!」
国王様がベンチの上に立っていた。
「…」
ミントは一瞬固まったが
「うわーんっ!馬鹿じゃないですかルゥ様〜っ?!」
って言いながら国王様の胸に飛び込んでいった。
「いひひ♪少なくともお前よりは馬鹿じゃねえよ?」
ミントの背中を優しく叩きながら国王様が言った。
「うわーんっ!」
「よしよし」
二人がそんな茶番を繰り広げている時
「「茶番?!」」
青い空に黒い点がひとつ現れた。
「〜♪」
黒い点の正体は箒に乗って飛行しているポトフ。
彼はご機嫌なのか、鼻歌を歌っている。
「お?」
地上に何かを発見したポトフ。
「ミントじゃねェか!」
彼はぱあっと顔が明るくなり、すぐに急降下した。
スタッ
国立公園に降り立ったポトフは、魔法で箒を消すと
「ミントォ!!」
ミントの元へと走っていった。
「!」
懐かしい声に気が付いて、国王様の胸から頭を離してそちらに振り向くミント。
「…ポトフ?」
そして涙目のまま彼の友達の名前を呼んだ。
「?!」
涙目のミントに驚くポトフ。
「…ミントに何しやがったテメェ?!」
「「?!」」
そしてポトフは国王様に向かって怒鳴った。
「は?いや別に何も―…」
国王様が答えている途中で
「…ミントを泣かせるヤツは…」
ポトフはそう言って
「誰だろうと許さねェ!!」
ドカッッッ!!
素早く国王様に上段回し蹴りを見舞わした。
「ポトフ!?」
そんなポトフの行動に驚くミント。
「…いひひ♪いーぃ蹴りしてんなあ♪」
すると国王様が楽しそうに言った。
「「!?」」
国王様はポトフの蹴りを巨大化したフォークで防いでいた。
「テメェ…」
バック転をして素早く間合いを取るポトフ。
「いひひ♪お前ポトフってゆーのか」
国王様は戦る気満々のポトフにそう言うと
「遊んでやるよポッティー!!」
フォークを振り回しながらポトフに向かって突進していった。
「上等だァ!!」
こうしてポトフと国王様の戦闘が始まった。
「…ポッティー?」
遅いながら、国王様がつけたニックネームに小首を傾げるミントくんでした。
「…クソ…!!」
地面に片膝をつき、悔しそうに悪態をつくポトフ。
「いひひ♪なかなかやるじゃんポッティー?」
満足そうに笑いながらフォークを縮小する国王様。
詰まり、戦闘終了。
「大丈夫ポトフ!?」
戦闘に巻き込まれないように安全な場所にいたミントが慌ててポトフに駆け寄った。
「悪ィ…ミント…あんなチビッコ白髪に…」
申し訳無さそうに下を向くポトフ。
「ああん?」
「ポトフ、勘違いだよ?」
再びフォークを巨大化させた国王様をなだめながらミントがポトフに言った。
「…?」
顔を上げるポトフ。
「ルゥ様は、オレを慰めてくれてたんだよ?」
困ったように微笑みながらミントが言った。
「はェ?」
驚いて聞き返すポトフ。
「…そうさ…オレはミントを優しーく慰めてあげていたのさ!!」
どうにか私刑執行を踏みとどまった国王様が誇らしげに言った。
「そ…そうだったのか?!」
焦り出すポトフに
「ちなみにオレはこの国の国王様だぞポッティー?」
追い討ちをかけるように意地悪く笑いながら国王様が言った。
「はェ?!!!」
それを聞いて真っ青になるポトフ。
「いやぁ〜いきなりオレに蹴りかかってくるとは思わなんだぞ?」
うんうんと頷きながら国王様が言った。
「はわ!!口調が国王様っぽい!?すすすっすみませんでしたァっ!!」
慌てて頭を下げるポトフ。
「…いひひ♪楽しかったぜポッティー?」
「!」
下がったポトフの頭をポンポンしながら国王様が言った。
「…本当に戦闘好きなんですねルゥ様?」
ポトフに何事も無くてホッと胸を撫で下ろしながらミントが言うと
「ルークーレーツィーアーさーまー?」
にっこにこの総長が公園にやって来た。
「っ!!」
真っ青になる国王様。
「ふふ♪参りましょ♪」
ガシッ!!
総長に引きずられて、国王様は大人しくお城に帰ってゆきました。
「…ありがとうポトフ」
にこっと笑いながらミントが言った。
「はェ?」
ミントの言葉に小首を傾げるポトフ。
「オレの為にルゥ様と戦ってくれたんでしょ?」
微笑みながらミントが言うと
「あっはっは…勘違いだったケドな?」
照れ臭そうにポトフが言った。
「あははっ!…て」
ミントはふと思い出したように
「そう言えば、なんで王都に?」
ってポトフに尋ねた。
「ほェ?…あ」
するとポトフは思い出したように
「ホワイトデーのお返しを買いに来たんだった!!」
って言った。
「ああ?!忘れてた!!」
それを聞いてホワイトデーの存在を思い出すミント。
「おしっ!一緒に買いに行こうぜミントォ!」
「うんっ!ポッティー!」
「…ヤメテ?」
こうして二人は仲良くお買い物にゆくのでした。