第50回 ご乱心日和
暖かい日差しが差し込む城内中庭にて。
「行きますよ!!」
竹刀を持った兵士が踏み込みながら言った。
「来ないでええええ?!」
兵士を寄せ付けまいと薔薇の鞭を振り回すミント。
しかし
ベシン
「うわ!?」
ミントは兵士の竹刀によって腹を打たれ、後ろに吹っ飛ばされた。
そのまま壁に激突するミント。
「「兵士長代理!」」
ミントを吹っ飛ばした兵士と周りで見学していた兵士の皆さんが慌ててミントに駆け寄った。
「いたた…」
腰を押さえながら起き上がるミント。
「大丈夫ですか兵士長代理?!」
兵士の一人が心配そうにミントに声をかけると
「…オレ代理なんですから…もうちょっとお手柔らかに出来ませんか?」
ってミントが言った。
「…申し訳ございません。"城の兵士は常に本気で"と総長から仰せ付かっておりますので…」
本当に申し訳無さそうに言う兵士。
(これでよく兵士長になれたな家の親は…)
とか思うミント。
すると
「ヤッポ〜♪頑張ってるぅ?」
国王様がやって来た。
「「! 国王様!!」」
慌てて姿勢を正す兵士の皆さん。
「いひひ♪お前らに一週間休業を言い渡す」
国王様が笑いながら兵士の皆さんに言った。
「どーせ今は平和だしな♪それと、いつも頑張ってるお前らにご褒美だ♪」
そして笑いながら兵士の皆さんに何かを渡す国王様。
「「!!」」
驚く兵士の皆さん。
「いひひ♪せいぜい楽しむんだな?」
そんな兵士の皆さんを見て面白そうに笑いながら国王様が言った。
「「はっはい!!ありがとうございます!!」」
兵士の皆さんは国王様に敬礼すると、嬉しそうに中庭を去っていった。
「何をあげたんですか?」
兵士の皆さんがいなくなってからミントが尋ねると
「怪しげな店の入場券」
って答える国王様。
「怪しげな店ってなんですか?!」
思わず聞き返すミント。
「いひひ♪ミントって意外と強いらしいなぁ?」
頭の後ろで腕を組みながら国王様が言った。
「え?いやそんなコ―…」
ミントが否定しようとすると
「オレ、ミントと戦ってみたくなっちゃった♪」
って国王様が言った。
「はい…ってええ?!」
ミントが聞き返した瞬間
「っ!!」
ミントは巨大化したフォークの股に首を挟まれた。
「…早く構えろよ?次は外さねぇぞ?」
不敵に笑う国王様。
「ええ!?」
ミントが戸惑っていると
「安心しろ…魔法は使わないどいてやる…よっ!!」
そう言いながら国王様はフォークを構え直して、再びミントに突き出した。
「なんでこうなるんですかルゥ様?!」
とっさに薔薇の鞭を振ってフォークの軌道を変えるミント。
「お!やっと名前で呼んでくれたなミントぉ!!オレうれぴい☆」
キャピッと喜びながらガンガン突いてくる国王様。
「何キャラなんですかあああああああああ?!!!」
こうしてミントと国王様の戦闘が始まりました。
「あーびびった!ミントって召喚魔法使えんのかぁ!!」
フォークを地面に突き刺しながら国王様が言った。
「何…言ってんですか…出させてくれなかったクセに…」
国王様の隣でへたばっているミントが言った。
「いひひ♪あったりまえだろぉ?厄介だもん」
そんなミントに微笑みを向ける国王様。
「厄介って…召喚獣知ってるんですか?」
小首を傾げながら聞き返すミント。
「? お前の父ちゃんも使うだろ?」
すると軽く驚いたように国王様が言った。
「ええ?!そうなんですか!?」
国王様の言葉に驚くミント。
「おう ちなみにその薔薇の鞭はお前の母ちゃんとおんなじだぞ?」
更に付け足す国王様。
「えええ!?最悪じゃないですか?!」
自分の薔薇の鞭を見ながら頭を抱えるミント。
「だな♪」
にこっと笑いながら国王様が言うと
「国王様、アラモード社社長のゼリー=アラモード様がお見えになりました」
一人のメイドがやって来て言った。
それを聞いて
(…プリンのお父さんってゼリーって言うんだ…?)
とか思うミント。
「あ。そだった!」
国王様は思い出したように手をポンと叩くと
「そゆことだから、また後でなミント♪」
にこっと笑いながら国王様は中庭を後にした。
そして国王様が見えなくなった瞬間
「よし帰ろ♪」
ミントは速やかに城を出た。
「〜♪」
上機嫌でミントが城を出ると
シュパンっ
って音がした。
「…シュパン?」
どこか懐かしい効果音に思わず振り向くミント。
そこには
「! ミント!」
枕を抱えたプリンが立っていた。
(やっぱり…)
とか思いつつも
「わぁ久しぶりプリン!」
久しぶりの再会に自然と笑顔になるミント。
「うむ!久しぶり」
微笑んで返すプリン。
「お城に行くの?」
ミントが尋ねると
「うむ。父の忘れ物を届けに」
コクンと頷きながらプリンが答えた。
「忘れ物?」
ミントが小首を傾げながら聞き返すと
「金の延べ棒」
ってプリンが言った。
「賄賂じゃん」
思わず突っ込むミント。
「む?そうなのか?」
小首を傾げて聞き返すプリン。
「うん。確実に」
断言するミント。
「…入城料かと思った」
金の延べ棒がぎっしり入った袋を見ながらプリンが言った。
「入城料なんか無い…ってどんだけ高いんだよ?!」
常識外れなプリンに再び思わず突っ込むミント。
「…はあ…まあ賄賂ぐらいいっか…」
良くないと思うが。
「プリンのお父さんの所までオレが案内してあげるよ!」
「! 本当?!」
ミントの言葉にぱあっと顔を明るくするプリン。
「うん♪」
「ありがとうミント!」
こうしてミントとプリンはお城の中に入ってゆきました。
「ココだよ」
大きな扉の前で立ち止まるミント。
「わー…おっきい」
扉の大きさに思わず感嘆の声をあげるプリン。
すると
ギイ…
「お?こんなとこで何してんだミント?」
扉が開いて、国王様が現れた。
「あれ?お客様は―…」
客をほっといていいのかとミントが尋ねようとした瞬間
「わー!ちっちゃい」
って国王様を見ながらプリンが言った。
「!!?」
プリンの言葉に度肝を抜かすミント。
「…カッチーン♪もっかい言ってみろテメェ?」
ガタガタ震えながら聞き返す国王様。
「ふふふ ちっちゃい」
国王様の頭をポンポンしながら言われた通りもう一度禁句を言うプリン。
「ホントに言っちゃった?!って何オレの頭ポンポンしてんの?!」
予想外のプリンの行動に思わず突っ込む国王様。
「ふふふ ちっちゃい」
「トリプル?!オレもう立ち直れないよ?!」
プリンの言葉に泣きそうになる国王様。
「ふふふ ちっちゃい」
そんなのお構い無しにプリンがもう一度言った。
「ふふふ♪殺していい?」
にっこり笑いながらフォークを巨大化させる国王様。
すると
「ふふふ 白髪」
ってプリンが言った。
その言葉に
「頭蓋骨カチ割って脳味噌えぐり出してやるよ」
ついにキレた国王様は、巨大なフォーク振り回し始めた。
ドカンドカンドカンドカン
大破してゆく城内。
「わああああああああ?!ご乱心!ご乱心!!」
飛んでくる瓦礫を避けながらミントが叫んでいると
「何事ですか?!」
国王様が出てきた扉から青い髪の紳士が現れた。
「え?あ…あれっ!!」
その人がすぐにプリンパパだと分かったミントは、国王様達の方を指さした。
「あれ?」
ミントが指さした方を向くプリンパパ。
すると国王様の巨大なフォークを軽やかに避けているプリンが目に飛び込んできた。
「!! プリン!!」
プリンパパが叫ぶと
「あ。お父さん。忘れ物」
ピタっと動きが止まるプリン。
その瞬間
ザシュッ
「ぴわっ!?」
「「プリン?!」」
国王様のフォークによってプリンが吹っ飛んだ。
するとプリンパパが
「私の超可愛い息子に何してんですかああ!!!?」
って叫んだ。
次の瞬間
「聖なる南の十字星!!!サザンクロス!!!」
ってプリンパパが叫び、その直後に
「させるか!!ファスチネイションサンダー!!」
って国王様が叫んで
ドカ―――――――――ン
激しい光と雷が衝突した。
「ぎゃあああああああ?!社長と国王がご乱心!?」
飛んでくる瓦礫を避けながら叫ぶミントの隣で
「ぷわ…ねむねむ」
呑気に欠伸をするプリン。
傷は浅かったようだ。
「…城内で乱闘とは何事ですか?」
すると緑髪の紳士がやって来た。
彼はこの城の"総長"。
「!!」
目の前で繰り広げられている乱闘を見て目を見開く総長。
そして
「…お客様と国王様?」
乱闘している二人を静かに呼んだ。
「…ん?」
「ゲ…」
声に気付いて乱闘を止めるプリンパパと青ざめる国王様。
「ふふ♪ちょーっとよろしいですか?」
殺意が篭った笑顔で総長が言った。
「「は…はい…」」
総長の殺意に怖じ気付いて大人しく頷く二人。
「では、参りましょう♪」
総長はそう言うと、二人の胸ぐらを掴んでずりずりと引っ張ってゆきました。
「ぐー。」
「ホント大物だねキミ?」
この騒ぎを起こした張本人であるにも関わらず、呑気に立ちながら眠っているプリンに頭を抱えるミントでした。