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学校日和  作者: めろん
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第5回 箒日和

朝露煌めく広いグランド。青い空に危ない森の緑が美しく映える。


「今日は一限目から体育かぁ〜」


相変わらず帽子を被ったミントが、伸びをしながらグランドに降り立った。


「僕、運動苦手…」


相変わらず枕を抱えたプリンが言った。


「へぇ〜そうなんだ?」


ミントが意外そうに言うと


「うむ。そうなんだ」


プリンが返す。


「今日はちゃんと起きたんだねープリン!」


ココアが言うと


「うむ。まさに寝耳に水だった」


プリンが言った。


「えっ?!何何ミント?プリンに水でもかけたのー?!」


驚いたようにココアが尋ねると


「神の御水だ」


ミントが答えた。


「は?」


さっぱりワケが分からないココア。


「コーラだ」


プリンが代わりに説明した。


「うっそマジ?!痛そー!!」


ココアが耳を押さえながら言った。


「うむ。マジ」


「そう?オレなら昇天しちゃうくらい幸せだけど?」


「…ネバネバしてる」


プリンが髪を触りながら言った。


ピーーーーーーーーー!!


「「!」」


ホイッスルがグランドに鳴り響いた。


「…授業を始める」


オレンジ髪をしたエル先生がやって来た。


「「おはようございますエル先生」」


ウサギさん寮の生徒が一列に並び、挨拶をした。

それに無言で手だけで応えるエル先生。


「…まずお前らに問う…ウサギさん寮」


クールだ。最高に彼はクールだった。言ってるコトが若干おかしいけど彼はクールだった。まさにクールオブクールだ。


「…魔法使いと言えば…?…おいそこの猫耳!」


「はっ…はいっ…!」


オドオドしながら猫耳赤髪のサラダが返事をした。


「言ってみろ…お前が思う魔法使いを」


エル先生が言った。


「ぼ…ぼくが…ですか?」


サラダが言った。


「サラダという人間は沢山いるだろう…だがな」


先生が言った。


「…お前という人間はお前しかいない」


「!」


((きゃー!!))


格好良いです。彼はまさにキングオブクールです。この数分で数人の女子のハートを射止めてしまいました。


「ほ…箒…」


サラダがオドオドしながら言った。


「…なんだと?」


「ひっ!!」


驚いて自分の尻尾に抱きつくサラダ。


「もう一回言ってみろ」


先生が言った。


「箒…」


「もっと大きく!!」


「ほ…箒!!」


サラダが叫び、やまびこも叫んだ。


「…そや」


先生が言った。


「魔法使い言ったら箒だよな?」


そして指をパチンと鳴らした。

それぞれの生徒の脇に、一メートルくらいある箒が現れた。


「…その箒はお前らにくれてやる」


先生が言った。


「「あ…ありがとうございま―…」」


「礼はいい!…それより」


先生が大きく息を吸った。


「飛びたいか!!!?」


「「!?」」


先生が突然大きな声を出したので驚く生徒達。


「もう一度言う。飛びたいかおどれら!!!?」


「「はっはいっ!!」」


全員が答えた。


「よしきた!!ではまず箒を信じろ!!」


「「!?」」


ワケが分からないので先生を向く生徒達。


「自分を信じてくれない相手を乗せて飛べるかおどれら!?」


やはりワケが分からない。


「無心じゃ!!箒と一体化するんじゃ!!」


箒に跨る先生。そして大きく地面を蹴った。


「箒は友達〜〜〜っ!!」


そして先生は大空へと旅立っていった。


「「…」」


彼はクールな筈なのに、彼は意外に熱かった。


「…箒かぁ!!」


ミントが箒を手にとった。


「箒だねー!!」


ココアも箒を持ち上げた。


「うむ。紛うこと無き箒だ」


プリンが枕の反対側の手で箒を持った。


「こう…だったかな…?」


ミントが箒に跨り軽く地面を蹴った。


ふわんっ


「「!」」


生徒達が目を丸くした。


「…え?あれ?!オレ飛んでる?!」


ミントが箒に乗って飛んでいた。


「凄い凄ーい!ミントが飛んでるー!!」


ココアがはしゃいだ。


「ふふふ、一番乗りだな」


プリンがミントを見上げながら言った。


「ま、負けませんわ!!」


レモンが負けじと箒を手に、地面を蹴った。が、


どしんっ


飛べなかった。


「な?!」


顔を赤くするレモン。


「あははー!!駄目駄目じゃん委員長!」


ココアがそう言って地面を蹴った。が、


どしんっ


「あ…あれぇ?!」


ココアも飛べなかった。


「きゃははっ!あんた達駄目ねぇ?」


リンゴが言った。


「な、何ようっ!!あなた達は出来るって言うの?!」


ココアが返す。


「あったり前じゃない!あんな落ちこぼれにも出来るのよ?」


「「そーよ!!」」


ミカン、プラム、ザクロが続く。


「おっ落ちこぼれって…そんな言い方無いんじゃない?!」


ココアが怒りながら言った。


「きゃははっ!言ってればいいわ!!いくわよ」


「「ええ」」


そして四人地面を蹴った。


どしんっ


「「?!」」


が、飛べなかった。


「な、なんてことなの?!」


ミカンが言った。


「いやぁっ…恥だわ!!」


リンゴが言った。


「ふむ。やってみるか」


そんな四人を気にせずプリンが言った。


「えいっ」


地面を蹴るプリン。


べちんっ


が、飛べなかった。


「…痛い」


「「だ、大丈夫?!プリン?!」」


プリンが泣き出しそうだったので、慌てて駆け寄るココアと飛んでくるミント。


「ふむ。これは難しいな」


が、杞憂だった様だ。プリンがいつも通り抑揚の無い声で言った。


「そうだよねー…なんで飛べるのミントー?」


ココアが尋ねた。


「うーん…分かんない」


ミントが浮きながら言った。


「そっかー…じゃあ才能ってヤツかー」


ココアが羨ましそうにミントを見る。


「才能…?…オレが?」


心底驚いているミント。


「うむ。ミントの前世は羽虫だったに相違ない」


「ちょっとーそれ誉めてないよプリン?!」


「虫…虫…本当にそうかなあ…!!」


「え?」


ココアが驚いた。


「オレに…才能?!」


今のミントにはプリンの不思議発言も全く聞こえていない。


「こんなに嬉しいのは…コーラに初めて出会ったとき以来だ…!!」


ミントに駆け巡る衝動はこんなものでは治まらなかった。


「ヒャッホーっっ!!!」


ミントは先生と同じ様に大空へ二つの意味で舞い上がった。


「幸せそうだねー」


ココアが上を向きながら言った。


「ねむねむ」


「あららー…寝ちゃった…」


「風邪引きますわよ?」


レモンが言った。


「むー。」


「っ?!」


顔を赤くするレモン。


「ん?!あれあれぇ?!」


ココアが楽しそうに言った。


「…委員長、もしかしてプリンにツボっちゃった?!」


「なっ!?」


更に顔を赤くするレモン。


「ち、違いま―…」


「おどれら何サボっとんじゃー!?」


先生が戻ってきた。


「箒と友達になればいいんじゃ!!それだけじゃ!!」


急いで箒に跨る生徒達。

そこで必然的に先生の目に止まってしまうおねむ中のプリン。


「何寝とんじゃわれええ!!!?」


先生がプリンの青い長髪を掴んだ。


「ちょっ!?先生?!」


ココアが焦る。


「黙れ!!成敗しちゃる!!」


あ、噛んだ。…すみません。それは置いときましょう。


「起きろおのれ!!」


先生がプリンの髪を引っ張った。


「…」


プリンが目を覚ました。


「やっと起きたか!!」


先生が言うと










「…俺の安眠を妨げたのはお前か?」










ゾワッ


「っ?!」


冷たい空気が辺りを包む。


「はっ…えらい度胸あるなお前?」


プリンが邪悪に微笑んだ。


「…テレポート」


「!」


ひゅんっ


次の瞬間、先生が消えた。


「「…」」


辺りが静まり返る。


「…ぐー。」


いつの間にか眠りについたプリン。


((い、今のは?!そして先生はどこに?!))


気になったが起こす気にもなれないウサギさん寮の皆さん。




暗黒プリンここに誕生す。




一陣の風が吹き、生徒達の髪をなびかせた。


「うっはー!!たーのしかったー!!!!!!」


ミントが戻ってきた。

そう。彼だけがウサギさん寮で暗黒プリンを知らないただ一人の幸運な人物である。


「? どうしたのみんな?」


頭にお花が咲きそうなくらいアホに見えるミント。


「わ!またプリン立ったまま寝てる!!」


ミントが言った。


「プリンー?授業中だよー?」


「「!」」


ミントがプリンを揺すった。

そう。彼だけがウサギさん寮で暗黒プリンを知らないただ一人の愚かな人物である。


「プリンー?」


ミントが言うと


ぱちっ


プリンが目を覚ました。

周囲に戦慄が走る。


「おはよっプリン!」


微笑むミント。

ああミント、君はなんて愚かなんだ。消えてしまうよ。次回から主人公交代だよ。次の主役は俺かな…なんて心の中で叫ぶウサギさん寮の皆さん。


「うむ。おはよう」


「「!?」」


生徒達が驚いた。

プリンはいつも通りのプリンだった。


((さっきのは幻?!いやでも実際先生いなくなったし…))


恐ろしい光景を思い出す生徒達。


((…と、なると))


そしてミントを向く皆さん。


((恐るべしミント…))


みんなの心の中で密かに称えられていることなんて、今のミントには知る由も無かった。

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