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学校日和  作者: めろん
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第48回 帰宅日和

春の麗らかな日差しのなか、王都の一角にある赤い屋根のお家にやってきたミント。


ここは、国王様がいらっしゃるお城からそれほど離れていない場所。


「…帰ってきてしまった」


憂鬱な目で赤い屋根のお家を見据えるミント。


「オレの家…またの名を…変人テリトリー…」


変な事を呟きながら、ミントは玄関へと重い足取りで向かっていった。


「…はぁ…」


溜め息をつきながらドアノブに手をかけるミント。


ガション


「!」


ドアノブは空回りし、乾いた音をたてた。


つまり、鍵がかかっている。


「留守!?」


両親不在の可能性に目を輝かせるミント。


彼は鞄の中から鍵を取り出して、家の中へと入っていった。


ダダダダダっ


そして勢いよく駆け出し


バンッ


バンッ


バンッ


部屋という部屋の扉を開け放った。


「…!」


しかし、どの部屋もガランと静まり返っていて、部屋の中央にちくわが一本立ててあった。


「…誰もいない…っ!!」


これまでにない喜びに全身を震わせるミント。


「っメ〜ルヘ〜ンっ!!」


感極まって謎のフレーズを叫びながら、ミントは自分の部屋へと駆け出した。


バンッ


ばふっ


そのままベッドに倒れ込むミント。


しばらく使っていなかったせいか、ベッドから大量の埃が舞い上がった。


「ぅああ…最っっ高…♪」


しかしそんな事は今の彼にとってはどうでもいい事。


彼はムクッと起き上がると鞄の中からゴッソリとコーラを取り出した。


これは、先程駅のホームで買ったもの。


キュポンっ


ミントは早速ビンの蓋を開けると


「いっただきま〜す♪」


ズゴーっ


とコーラを一気飲みした。


良い子の皆さんは、危険ですので出来るだけ真似しないで下さいね。


「ぷっはぁ!!」


ミントは幸せそうに口の周りを拭うと


「コーラ最高ぉぉぉ!!」


って叫んだ。


そして


ばふっ


とミントは再びベッドに倒れ込んだ。


「ああ…変人両親も…プリンもポトフもいない…♪」


自分の胸に手を当てるミント。


「…これが…平穏…!!」


彼の心臓は感動でドキドキと高鳴っていた。


「幸せだなぁ!!!!!」


自分以外誰もいない静かな空間に、これ以上ない幸せを感じるミントくん。


彼はこの幸せを噛み締めるように、ワケもなく天井を見回した。


「…」


すると、だんだんと瞼が重くなってくる。


「…くぅ…」


ミントは自然な眠気に逆らう事なくそのままぐっすりと眠り始めました。


この平穏が、少しでも長く続く事を祈りながら。









青い空の下、緑の丘の頂上に場違いな豪邸が一軒建っている。


シュパンっ


「ぷわ…」


豪邸の門の前に、枕を持った少年・プリンが突然現れた。


ピピッ


『おかえリなさいまセ プリン様』


すると、無生物であるハズの門が口を利きました。


「うむ。ただいま」


平然と受け答えるプリン。


『旦那様が喜ばれまス 中へお入り下サイ』


門はそう言うと


ゴゴゴゴゴ


と、玄関へと続く扉を開いた。


「…ねむねむ」


眠たい目を擦りながら玄関へと歩いてゆくプリン。


ガチャ


そしてプリンが大きなドアを開けた瞬間


「プぅリぃぃぃぃン!!」


「ぴわ?!」


がばぁ!!


どしんっ


青い髪の紳士がプリンに飛び付いてきた。


勢いあまってそのまま倒れ込む二人。


「…む?お父さん?」


飛び付いてきた紳士を見ながらプリンが言った。


「そぅだよ〜プリンのお父さんだよ〜会いたか―…」


すると紳士改めプリンの父は顔を上げて固まった。


「む?」


プリンが小首を傾げると


ボタボタボタッ


おでこから大量の血が滴った。


「む?血だ」


呑気に言うプリンに対し


「わああ!?どうしたんだいプリン!!!?」


焦りまくるプリンパパ。


「多分さっきお父さんがぶつかってきた時に切った」


冷静に原因を述べるプリン。


「はわ!?私のせいなのか!!!?」


思わぬ大失態に驚きまくるプリンパパ。


「うむ。」


コクンと頷くプリン。


すると再び血が垂れた。


「はわわ!!もう動くなプリン!!お父さんが助けてやるからな!!!?」


プリンの血を見て、酷く焦った様子でプリンパパが言った。


「うむ。」


コクン


ボタボタボタッ


「わー!?だから動くなー!!」


「うふふ あら? おかえりなさいプリン」


プリンパパが騒いでいると、青い髪をした淑女が現れた。


「うむ。ただいまお母さん」


おでこから血をダラダラ流しながら淑女改めプリンママに挨拶するプリン。


「うふふ 夏休みも冬休みも帰って来ないから、心配していましたのよ?」


にこやかに微笑みながらプリンママが言った。


「うむ。ごめん」


さらりと謝るプリン。


「うふふ その様子だと、学校で素敵なお友達が出来ましたのねプリン?」


にこやかに微笑みながらプリンママが聞くと


「うむ!」


嬉しそうにコクンと頷くプリン。


ボタボタボタッ


「うふふ それは良かったですわね」


にこやかに微笑みながらプリンママが言った。


「そうか!!学校は楽しいか?」


プリンの言葉を聞いて喜びながらプリンパパが尋ねると


「うむ!」


元気に頷くプリン。


ボタボタボタッ


「うふふ あらあら おでこから血が出ていますよプリン?」


にこやかに微笑みながらプリンママが言った。


「うむ。知ってる」


コクン


ボタボタボタッ


「わー!?動くなー!!」


騒ぐプリンパパ。


「うふふ 丁度ここに絆創膏がありますわ」


にこやかに微笑みながら絆創膏を持ってプリンの元へ移動するプリンママ。


「おお!!ナイスだママ!!」


それを見て目を輝かせるプリンパパ。


「うふふ 痛いの、痛いの、とどまれ〜♪」


にこやかに微笑みながら謎のおまじないを唱え


ペタ


とプリンのおでこに絆創膏を貼るプリンママ。


「うふふ もう大丈夫ですよプリン?」


にこやかに微笑みながらプリンママが言った。


「うむ。ありがとう」


お礼を言うプリン。


しかしおでこからはまだ血がダラダラと流れていて、絆創膏はほとんど役目を果たしていない。


「うふふ 元気な血ですこと」


それを見てにこやかに微笑むプリンママ。


「うむ。元気な血だな」


コクンと頷くプリン。


ボタボタボタッ


「はっはっはっ!ママの絆創膏が効かないならもうお手上げだな〜!」


朗らかに笑いながらプリンパパが言った。


「はっはっはっ」


「ふふふ」


「うふふ」


よく分からないが、幸せそうな一家であった。


「ふふ―…」


ぼて


「プリーン!!」


「うふふ 丁度ここにホチキスがありますわ」


「おお!!ナイスだママ!!」


ツッコミがいない家庭は、危険極まりないですね。

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