第47回 下校日和
「とうとう春休みだねーっ!!」
重い荷物を引きずりながらグランドに降り立ったココアが言った。
今日はポカポカした良い天気。
「はは…春休みだね…」
続いてグランドにやって来たミント。
彼はがっくりと肩を落としている。
「ぷわ…ねむねむ」
次いで欠伸をしながら外に出てきたプリン。
「はァ〜…駅まで長ェんだよなァ」
最後に、伸びをしながらポトフがやって来た。
「あははっ!何言ってるのさポトフ?」
ミントが笑いながら言った。
「はェ?」
ポトフが首を傾げると
「こっちにはプリンがいるんだよ?」
ってミントが言った。
「! 成程ォ!」
理解したようにポンと手を叩くポトフ。
そしてプリンを見た。
「…なんだ?」
ポトフがこちらを向いている事に気が付いたプリンが聞くと
「早くテレポートしよォぜェ?」
ってポトフが言った。
「…」
何か便利な道具のように言われた事が気に喰わなかったプリンは
「…テレポート」
って言った。
ピュッ
瞬間、三人の姿が消えた。
…三人?
「…れ?」
その場に一人残されたポトフ。
すると、ヒラヒラと紙が舞い降りてきた。
「?」
ポトフはその紙を拾い上げた。
その紙にはプリンの綺麗な字で
[十時発]
って書いてあった。
「…」
時計を確認するポトフ。
只今の時刻、9:48。
「酷くない?!」
ポトフは慌てて駅に向けて走り出した。
ポッポ〜
白い蒸気を噴き上げて、黒い蒸気機関車が走る走る。
「ぜェ…ぜェ…ぜェ…」
個室の椅子に倒れ込んで苦しそうに荒い息継ぎをするポトフ。
「大丈夫ポトフ?」
ポトフの背中を摩りながらミントが言った。
「学校から十二分で駅まで走ってきたなんて凄いねポトフー?」
感心したようにポトフを見るココア。
「チッ…間に合ったか」
ボソッと吐き捨てるプリン。
「テメ…喧嘩売ってんのか?」
あえぎながらプリンを睨みつけるポトフ。
「…フン」
ぷいっとそっぽを向くプリン。
すると
「まぁまぁ…はいポトフっ!」
って言って、ミントが骨付き肉を差し出した。
「わォ!」
すぐさま目を輝かせるポトフ。
「ありがとなァミン―…」
口の周りの汚れを拭いながらポトフが言いかけると
「それ、プリンが買ったんだよ?」
にこっと笑いながらミントが言った。
「え?」
口に腕を当てたまま固まるポトフ。
「あははっ!プリン優しー!」
ココアが笑いながらプリンを見ると
「…ぐー。」
プリンは枕に顔を埋めて爆睡していた。
「あらら 照れちゃった♪」
そんなプリンを見て微笑むココア。
「ほらほらポトフ、お礼は?」
ミントが言うと
「ふんっ!置いてった分でチャラだ!!」
そっぽを向きながらポトフが言った。
((あの仕打を肉一個で許せるのか?))
とか思うミントとココア。
「…ま、今日から春休みだねー!」
腕を伸ばしながらココアが言った。
「…帰りたくないなぁ…」
がっくりと肩を落とすミント。
「? どうしてー?」
小首を傾げるココア。
「どうしてって…フハハハハ」
するとミントが狂ったように笑い始めた。
「ちょっとミント!?」
そんなミントを見て焦ったココアは
「…」
「…?」
ポトフが下を向いている事に気が付いた。
「どうしたのポトフー?」
「!」
ココアが心配そうに声をかけると、ポトフは顔を上げた。
「なっなんでも無いぜェ?」
そして、にこっと微笑むポトフ。
「でもさっき元気無さそうだったよー?」
それでも心配そうにココアが言った。
すると
「…俺…」
ポトフが口を開いた。
ふわ…
「!?」
ポトフはココアを優しく抱き締め
「…ココアちゃんと…別れたくなくて…」
って言った。
「春休み最高☆」
スパァン!!
「ぶ?!」
素早くポトフに平手打ちを見舞わすココア。
よって真横に飛ぶポトフ。
「あ!ブドウのとこ行ってくるねー!」
ガラガラ
ピシャン
ココアは何事も無かったように個室をあとにした。
「…しどい…」
「あはは…懲りないね?」
右頬を押さえるポトフにミントが言った。
「…」
「…」
無言で席に座り直したポトフを見て
「ポトフは何処に住んでるの?」
ミントが明るく尋ねた。
「? あァ…森」
って答えるポトフ。
「森?!」
驚いて聞き返すミント。
「あっはっはっ!俺は"アクリウム"に住んでんだァ〜♪」
その反応を見て笑いながらポトフが言った。
「あ…アクリウムかぁ…確かに森の中だね」
納得しながらミントが微笑むと
「…今はな…」
下を向いたポトフがぽつりと呟いた。
「…」
そんなポトフを見て悲し気な顔をするミント。
「アクリウム…」
「「!」」
プリンが突然口を開いたので驚くミントとポトフ。
いつの間にか目を覚ましたプリンは
「ふふふ 田舎だな」
って言った。
「なっ?!テメっ馬鹿にすんなよ!?」
透かさず噛みつくポトフ。
「あはは…プリンは何処に住んでるの?」
ポトフをなだめながらミントが尋ねると
「丘」
って答えるプリン。
「「丘?!」」
驚いて聞き返すミントとポトフ。
「ってかなんで二人とも漠然としてるの?!」
アバウトな二人に頭を抱えるミント。
「ふふふ 僕はアクリウムの近くの丘に住んでいる」
そんなミントを見て微笑みながらプリンが言った。
「へぇ〜!」
「ってテメェも田舎もんじゃねェか?!」
目を輝かせるミントと突っ込みを入れるポトフ。
「僕はアクリウムの住民ではない」
ぷーっと膨れながらプリンが言った。
「え?じゃあ何処に?」
ミントが聞き返すと
「アラモードの丘」
って答えるプリン。
「「アラモードの丘?!」」
驚いて聞き返すミントとポトフ。
「うむ。僕の父親が買い占めた丘に住んでいる」
プリンは頷きながら
「だから僕は土地的には王都の住民だ」
って言った。
「…え? もしかして王都とアクリウムと砂漠の間にあるあのおっきい丘の事言ってるの?」
まさかねとか思いながらミントが尋ねると
「うむ。」
プリンは頷いた。
「ええええええええ!?」
驚きすぎて思わず飛び上がるミント。
「ふふふ 凄いだろう」
そんなミントを見て満足そうに微笑むプリン。
「…す…凄いってか…」
((どんだけ金持ちなんだよ?!!!))
とか思うミントとポトフ。
アラモードの丘は、普通の家の敷地との規模の格が違うのでした。
「そ…そっか…一応オレと同じ街に住んでるんだね」
驚きを隠せない様子のミントが言うと
「…照れる」
枕で顔を隠すプリン。
「…丘…」
再び呟くポトフ。
彼もまた驚きを隠せない様子。
「? でも前に王都に来たこと無いって言ってたよね?」
思い出したようにミントが尋ねると
「うむ。どちらかと言うとアルカイド寄りだから、そちらに行っていた」
ってプリンが答えた。
「アルカイド…ってあの砂漠街?」
ミントが言うと
「うむ。でもアルカイドは暑いから嫌いだ」
ってプリンが言った。
「…砂に埋もれちまえばいいのに…」
ポトフがボソッと言うと
「何回か埋まった」
ってプリンが言った。
「「ええええええ!?」」
驚くミントとポトフ。
「ってか"埋まった"ってコトは有志だよね!?」
「変わってるな枕!?」
「…照れる」
「「誉めてなァい!!」」
そんなこんなで、三人はそれぞれの家へと帰ってゆくのでした。




