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学校日和  作者: めろん
42/102

第42回 屋上日和

授業参観当日。


沢山の生徒達の親が、学校にやってきた。


そんななか


澄みきった青い空がよく見える屋上に、ひとり佇むポトフ。


「…」


彼は柵に寄りかかって、流れる白い雲を左目で追っていた。


「ポ〜トフっ」


「?」


後ろから名前を呼ばれたので振り向くポトフ。


「! …よォミント♪どしたァ?」


そして後ろに現れたミントに挨拶した。


「"どしたァ?"って…ポトフが突然いなくなるから心配してプリンと一緒に学校中探し回ってたんだよ?」


ミントが頬をぷくっと膨らませながらポトフに言うと


「? ミントだけじゃねェか?」


ポトフが小首を傾げながら言った。


「へ?」


後ろを向くミント。


「あれ!?プリンがいない!?」


するとプリンがいない事に気が付いた。


「さっきまで後ろにいたのに…」


ミントはそう言った後


「まぁいいや」


って溜め息をついた。


「こんなトコで何してたのポトフ?」


ポトフの隣へ移動するミント。


「まばたき」


って答えるポトフ。


「…そう?」


どこかで聞いたことあるような無いような…とか思うミント。


「…いい天気だなァ〜?」


空を見上げながらポトフが言った。


「そだね」


同じように空を見上げるミント。


青い空には、一羽の鳶が太陽の周りを旋回している。


「…ねぇポトフ?」


空を見上げたままミントが口を開いた。


「何だァ?」


空から目を離し、ミントを向くポトフ。


「最近…元気ないよね?」


空から目を離しながらミントが言った。


「はェ?」


ポトフが聞き返すと


「…授業参観のプリント貰ってから…ずっと」


心配そうな顔でポトフを見るミント。


「あ…あっはっはっ!そんなコトないぜェ?俺は今、超元気だ!!」


元気に笑ってみせるポトフ。


「嘘つき」


そんなポトフに、ズバッとミントが言った。


「あ…あっはっはっ…」


たじろぐポトフ。


「どうしたのさ?」


ミントが再び尋ねると


「…」


ポトフは黙りこくった。


「ポトフ〜?」


ミントがじりじりと迫っていくと


「…いねェんだよ…」


ポトフがボソッと呟いた。


「へ?」


聞き取れなかったので聞き返すミント。


「…俺なァ?両親がいねェんだァ〜」


そう言いながら、ポトフは遠くの森に目をやった。


「いない…?」


ポトフの言葉に驚くミント。


「おゥ つーか捨てられたっつった方が正しいな…」


悲し気な顔をするポトフ。


「…っ」


ポトフがあまりにも悲し気な顔をするものだから、何も言えなくなるミント。


「…酷ェよなァ〜…」


ポトフはそう言った後


「…俺をゴミ袋に入れてポイだぜェ?」


って言った。


「嘘ぉ!?」


その言葉に驚いたミントが聞き返すと


「嘘♪」


にこっと笑いながら、ポトフはミントに言った。


「…そっか…」


弱く笑うミント。


すると


「あっはっはっ!心配してくれてありがとなァミントっ!」


「わ!?」


カバッ


ミントに抱きつくポトフ。


「ちょっ、ポト―…」


ミントが言いかけると


「…っ」


「!」


ポトフが微弱に震えている事に気が付いた。


「…ポトフ…」


ポトフの背中を優しく叩くミント。


優しい風が屋上を吹き抜けていった。


風になびく二人の髪の毛とローブ。


そして次の瞬間












ごばあっ












「「…」」


ポトフの腹の虫が豪快に鳴いた。


「…ふっ…台無しだね?」


噴き出しながらポトフから離れるミント。


「あ…あっはっはっ!そォ言えば朝から何も食べてねェや〜」


左手の裾の部分のローブを左目に押し当てながらポトフが照れ笑いをする。


「…」


そんなポトフを見て、胸を痛めるミント。


「…そだ!!」


するとミントがなにかを思い出したように手をポンっと叩いた。


「えへへ♪」


ローブのポケットに手を突っ込んで、何やらゴソゴソとやり始めるミント。


「?」


左手を離したポトフが小首を傾げると


「じゃーんっ!!」


とミントが効果音付きで、ビニール袋に入った


「骨付き肉!!!!」


を取り出した。


目を輝かせるポトフ。


「えへへ♪ポトフ探してる途中、お店で見付けたから買ってきちゃった♪」


にこっと笑いながらミントが言うと


「おかわり♪」


口の周りの汚れを拭いながらポトフが言った。


「…速…」


一歩下がるミント。


「あっはっはっ!骨まで美味いぜェ♪」


朗らかに笑うポトフ。


「しっか〜し!!」


するとミントがローブのポケットから


「こんな事もあろうかと!あと99本買っときましたあ〜!!」


ででんっ


と大量の骨付き肉を取り出すミント。


「おおゥ!?」


目を最高に輝かせるポトフ。


「ありがとォミント!!最高だ!!大好きだ!!!」


至極幸せそうな顔をしながら骨付き肉の山に喰らい付くポトフ。


「あははっ!」


そんなポトフに、ミントは笑いながら


「君のお金だけどネ♪」


ってポトフの財布を逆さまにして振りながら言った。




・・・




・・・・・・




・・・・・・・・・




「ノォォォォォォォ!!」


すっからかんになった自分の財布を見て、アメリカンな悲鳴をあげるポトフでした。










その頃。


「きゃあ!!プリンくんだわっ!!」


「お一人で歩かれるなんて珍しいっ!!」


続々と寄ってくる女の子達。


「あぅえわわ…っ」


プリンは女の子達に囲まれていた。


「え?ミントとポトフくんを探してるんですか?!」


「う…うむ…」


頷くプリン。


「やーんっ♪私も一緒に探してあげます〜♪♪♪」


「あたしもあたしも〜!」


「い…いや…別に―…」


焦りながらプリンが言うと


「遠慮しないで下さぁいっ!!」


「私達っ、全然暇ですから〜♪」


「むしろご一緒させて下さいっ!!」


口々に言う女の子達。


「い…いや遠慮では―…」


プリンが言おうとすると


「…お優しいんですね?」


女の子達が口を開く。


「…容姿端麗で…」


「…背が高くて…」


「…足長で…」


「…落ち着きがあって…」


「…愛くるしくって…」


プリンを誉めちぎる女の子達に


「うう…っ」


顔を真っ赤にするプリン。


「その上―…」


すると女の子達が


((お金持ちでっ☆☆☆☆))


ギラリンと目を輝かせた。


「「素ぅ敵〜〜〜〜☆」」


顔を真っ赤にしながらエキサイトし続ける女の子達に


「助けてミントーっ!!」


プリンは悲鳴をあげるのでした。

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