第40回 髪型日和
よく晴れたお昼休みは、お外に出てみましょ。
ふわふわ
「い〜い天気だね〜♪」
伸びをしながらミントが言った。
彼は今、箒に跨って低空飛行中。
「ぷわ…ねむねむ」
プリンは欠伸をすると、大きな木の下にゴロンと横になった。
「もー!そんなコトしたら汚れるよー?」
プリンの隣でココアが言ったのだが
「ぐー。」
「速っ…」
プリンはすでに眠っていた。
「そんな馬鹿ほっといて、…俺と空中散歩しない?」
そこにやって来たポトフがココアに言った。
「…ホンっト女の子大好きだねポトフー?」
ココアが溜め息をつくと
すっ
「…俺が大好きなのは…ココアちゃんなんだけどなァ?」
ココアの耳元でポトフが囁いた。
「!?」
顔が真っ赤になるココア。
「なっ…何言ってんのよ馬鹿ーっ!!!」
スパァン!!
「う゛!?」
ココアが思いっ切りポトフに平手打ちをかますと、ポトフは左に吹っ飛んでいった。
ふわ
「大丈夫ポトフ?」
吹っ飛んだポトフの隣に着地するミント。
「お…おゥ…」
ココアに打たれた右頬を押さえながら起き上がったポトフが
「…今のは完全に死角だったぜ…」
って呟いた。
(そっか…右目眼帯してたんだっけ…)
ポトフの設定を思い出すミント。
「設定とか言わないの」
…すみません。
「でも…右側があんまり見えないのによく昨日の恐竜に勝てたねポトフ?」
ミントが言うと
「あっはっはっ!!俺は強ェからなァ!」
笑いながらポトフが言った。
「そうだねー!回復以外は魔法使わないで勝っちゃってたし!」
ココアが眠っているプリンの髪の毛をいじくりながら言った。
「そうそう!回復魔法以外は―…」
ここまで言うと、ミントはハッとなって
「…ごめんねポトフ…?」
下を向いた。
「?」
小首を傾げるポトフ。
「昨日…オレのせいで…」
下を向いたまま呟くミント。
「あ…あっはっはっ!ミントのせいじゃねェよ〜?」
困ったように笑いながらポトフが言うと
「…ローブに穴が…」
ミントが言った。
「あっはっはっ…は!?」
驚いて自分のローブを脱いで確認するポトフ。
「…嘘だろ?!」
ポトフのローブには、昨日の恐竜魔物がポトフを爪で貫いた時に出来たどでかい穴が空いていた。
「待て待て!?俺は今日の午前中ずっとこれで過ごしてたのか?!」
ポトフが尋ねると
「うん…」
申し訳無さそうに頷くミント。
「っ…そんなっ…」
ガクッと膝をつくポトフ。
「…格好悪ィ…」
そして震える声でポトフが言った。
「…ごめん…ポトフ…」
ポトフから目を背けるミント。
「直してあげよっか?」
するとポトフの後ろからココアの声がした。
「「…へ?」」
ココアの声に振り向くミントとポトフ。
「私、裁縫得意なのー!」
すると、ココアはにこっと笑って裁縫道具を魔法で呼び出した。
ぱちっ
「…む…」
目を擦りながら状態を起こすプリン。
すると
「凄い凄い!!」
「すっげェ…!!」
近くでミントとポトフの声がした。
「…?」
キョロキョロ辺りを見回すプリン。
「えへへー♪でしょー?」
すると得意気に笑うココアとその前に座っているミントとポトフを発見した。
ととと
そちらに移動するプリン。
「ココアって器用なんだね〜っ!!」
ミントがポトフのローブを見ながら言った。
ポトフのローブは、穴が空く以前とほぼ同じ状態に修復されていた。
「?」
状況が分からないので小首を傾げるプリン。
「あ!プリンおはよー!」
プリンが起きたコトに気が付いたココアが挨拶をしたので
「うむ。おはよう」
ココアに挨拶するプリン。
すると
「「ぶっ!?」」
ミントとポトフが噴き出した。
「?」
その行動に小首を傾げるプリン。
すると
「…!?」
プリンの視界の隅に、水色の三編みされた髪の毛が飛込んできた。
それは明らかに自分の髪の毛。
「なっなんだこれは!?」
プリンが三編みにされた髪の毛を掴んで誰にともなく尋ねると
「おさげ♪」
ってココアが言った。
「!!」
気が付けば、反対側にも三編みが。
プリンのヘアスタイルは、"おさげ"になっていた。
「ヤー!!」
慌ててヘアゴムを取るプリン。
バッサァ!!
すると三編みが勢いよくほどけ、プリンのヘアスタイルは、いつもの状態に戻った。
「あー!?折角縛ったのにー!!」
ココアが言うと
「縛るなっ!!」
プリンが言った。
「可愛かったのにー!!」
更にココアが言うと
「ぼっ僕は男だっ!!」
ってプリンが言った。
(お。学習したみてェだな)
とか思うポトフ。
「いいじゃーん!羨ましいぐらいつやつやでサラサラのストレートないい髪の毛なんだしー!!」
プクっと頬を膨らませながらココアが言うと
「…照れる」
枕で顔を隠すプリン。
「…ね?!だから縛らないと勿体無いと思うの!」
目を輝かせながらココアが言うと
「そうなのか?」
聞き返すプリン。
「うんっ♪だから私が縛ったげる!」
ココアが元気に頷いてから言うと
「う…うむ!お願いする」
プリンが頷いてからココアの前に座った。
((…アホだ…))
とか思うミントとポトフでした。
夜。
「…いつまでそうしてる気?」
お風呂場から出てきたミントが、髪の毛をバスタオルて拭きながらプリンに言った。
「ふふふ 気に入った」
顔を左右に振りながらプリンが言った。
その度に動くひとつに縛ったプリンの長い髪。
プリンのヘアスタイルは今、ポニーテールになっている。
「はは…気に入っちゃったんだ?」
ミントが言うと
「うむ!」
満足そうに頷くプリン。
(…本人が気に入ってるなら…もう何も言うまい…)
とかミントが思っていると
「切りてェ…」
ポトフが呟いた。
「…ポトフ?」
ミントがポトフの方を向くと
ぽんっ
と呼び出し魔法でハサミを出現させた。
「死にさらせェェェ!!」
ハサミを構えてプリンの所へ走るポトフ。
「死にさらせ…ってプリンのどこ切る気ーっ!!?」
殺る気満々のポトフにミントが突っ込むと
バッッッッッッッサァ!!
「うおわ!?」
ドカ―――――――――ン
「ポトフー!?」
ポトフが吹っ飛んだ。
「ふふふ」
プリンのポニーテールに打たれて。
「…実に便利な髪型だ」
満足そうに笑うプリン。
「…もしかしてその為に縛ってるの?」
ミントが尋ねると
「む?この為以外にこの髪型の存在意義があるのか?」
プリンが尋ね返してきた。
「…ほどきなさい」
「えー?」
「いや"えー?"でなくてね?」
微笑みながらプリンのヘアゴムを取り去るミント。
「ぶう…気に入ってたのに…」
ぷうっと膨れながらプリンが言った。
「はいはい。もう寝ようねー」
ミントはプリンの言葉を軽く流すと
カチッ
と部屋の電気を消した。
「おやすみー」
「うむ。おやすぐー。」
「あはは 相変わらず早いねぇ〜」
てな流れでミントとプリンが寝静まった頃
「俺、可哀想じゃねェ?」
ポニーテールに負けたポトフが、部屋の隅で呟いた。