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学校日和  作者: めろん
39/102

第39回 恐竜日和

太陽が西に傾き、空と森が橙色に美しく輝きだした。


「トリート」


ポトフは部分変身魔法が解けたココアの左腕に手をかざし、回復魔法を唱えた。


ぷわっ


「…もォ大丈夫だよココアちゃん?」


ココアの左腕を完全に治療し終えると、ポトフが言った。


「ありがとーポトフー!」


ココアがお礼を言うと


「他に怪我は無い?」


心配そうにココアの顔を見ながらポトフが尋ねた。


「だっ…大丈夫だよー!」


顔を赤くしながら立ち上がるココア。


「そっか よかったァ」


にこっと微笑んで立ち上がるポトフ。


「学校まで…まだまだだね〜…」


遠くの方を見つめながらミントが言った。


「うむ。さっきまで逆走してたからな」


頷くプリン。


ココアに追い掛けられていた三人は、学校と反対方向に走っていたのでした。


「…そう言えば、何で走ってたんだっけー?」


小首を傾げながらココアが言った。


どうやらココアはキレてた時の記憶が曖昧なようだ。


「「…」」


無言になるミントとプリン。


「…まァ…早く学校に帰ろォぜェ?」


歩き出しながらポトフが言った。


ぐにっ


「ぐに?」


素早く変な交換音をリピートするポトフ。


「…」


「…」


「…」


「…」


ゆっくりとポトフの足下に視線を落とす四人。


ポトフの足下には、巨大な太い尻尾的なものがある。


「…」


「…」


「…」


「…」


ゆっくりと尻尾に沿って上を見上げる四人。


『グルルルルルルルル…』



・・・




・・・・・・




「What's that?」


(あれは何?)


「That's a dinosaur」


(あれは恐竜だ)


「Oh! A dinosaur!?」


(まあ!恐竜!?)


「Yeah!」


(そォだぜ!)


上から順に、ココア、プリン、ミント、ポトフが言った。


・・・




・・・・・・




「「Dinosaur!!!?」」


同時に絶叫する四人。


『グオオォオオオオ!!』


それと同時に、恐竜のような魔物が雄叫びをあげなさった。


「「ぎゃああああああああああああああ!!!?」」


脱兎のごとく逃げ出す四人。


『グオオグオオオオ!!』


地獄の底から響いてくるような唸り声を発しながら


ドシンドシンドシンドシン


見た目に似合わず軽快な走りで追い掛けてくる魔物。


「何あれ何あれええ!?」


泣き叫ぶココア。


「恐竜だ」


答えるプリン。


「ポトフの馬鹿ーっ!!」


叫ぶミント。


「誠に申し訳無い!!!」


謝るポトフ。


『グオオォオオオオ!!』


迫る魔物。


「プリン!!今こそテレポートだよ!!」


ミントが言うと


「テレポートは元いる場所が固定されてないと使えない」


ってプリンが答えた。


「じゃあピタって止まってピュッと行こー!!」


ココアが言った。


ぴたっ


と止まる四人。


「テレポ―…」


プリンが言いかけると


『グオオォオオオ!!!』


ゴ―――――――――ッッ


魔物がプリンに向けて火を吹いた。


「「プリン!?」」


ミントとココアが叫ぶと


「…痛い」


炎が通り過ぎていった後、黒焦げになった焼きプリンが言った。


「ったく…トリート」


回復魔法を唱えるポトフ。


ぷわっ


焼きプリンが通常のプリンに戻る。


「うー…止まったら火を吹かれちゃうし、止まらなかったらテレポート出来ないし…どうすればいいのー!?」


頭を抱えながらココアが叫んだ瞬間


『ストップ!!』


って魔物が言った。


ぶわ


「「!?」」


ミントとプリンとココアの足下に魔法陣が現れ、三人は身動きがとれなくなった。


『グハハハハ!これでもう逃げられないぞ』


恐竜魔物が笑いながら言った。


((お前喋れんのかよ?!))


とか思う四人。


『グハ…今動けるのはお前だけだぞ眼帯?』


魔物が言った。


「はェ?」


そう言われて初めて自分の動きが封じられていない事に気が付くポトフ。


『グハハ…俺様は優しいから俺様の尻尾を踏んだお前に選択肢をやろう』


魔物が言った。


「…選択肢?」


聞き返すポトフ。


『俺様と戦うか、そこにいるお友達三人を捨てて逃げるか、だ』


魔物がニヤリと笑いながら言った。


「…俺が逃げる思ってんのか?」


ポトフが魔物を睨みながら言った。


「「!?」」


「…ねェちょっと視界の隅で意外そうに驚くのやめてくんない?」


ポトフが発した言葉を聞いて目を見開いた三人に突っ込んだ後


「かかって来やがれトカゲ野郎ォ!!」


自分の身長の何倍もある魔物に向かってポトフが叫んだ。


『グハハハハ!!勇敢だな?』


そんなポトフを見て笑う魔物。


「「頑張ってポトフ!!」」


応援するミントとココアに


「おゥ!」


と応えるポトフ。


(…あ。)


ふと気が付いたプリンが


「テレポ―…」


って言った瞬間


『口チャック!』


魔物が言った。


「「…!?」」


その瞬間、何も喋れなくなるミントとプリンとココア。


『邪魔はさせん!!』


魔物はそう言うと、足を振り上げた。


『戦闘開始だ眼帯!!』


振り上げた足を振り下ろす魔物。


その足は、確実にポトフを狙っている。


しかし


「遅ェ」


ドシィィィィィィィィィン


軽々と避けるポトフ。


『何!?』


魔物は自分が足を下ろした為に起きた砂煙で、ポトフを見失ってしまった。


『どこだぁ!!』


魔物はキョロキョロと辺りを見回し始めた。


「ここにいるぜェ?」


『!』


魔物の目の前の砂煙の中からポトフが飛び出してきた。


『グオオォオオオオ!!』


慌てて炎を吹く魔物。


「遅ェっつってんだろ?」


『!!』


魔物の頭の上からポトフの声が聞こえてきた。


「「…!!」」


「…」


魔物が吹いた炎のとばっちりを受ける身動きがとれないプリン。


「…応援されたからには」


スッと右足を高く振り上げるポトフ。


「勝たねェとなァ!!!」


そしてポトフは思いっ切り足を振り下ろした。


ドシィィィィィィィィィン


『っ…!!』


そのまま倒れる魔物。


とっ


「あっはっはっ!大したコトねェなァ!」


魔物の頭の上から降りたポトフが言った。


「ん?それとも俺が強すぎんのか?あっはっはっ!」


そんな事を言いながらポトフが笑っていると


スッ


「「!」」


ミント達にかかっていた魔法が解けた。


「凄い凄いポトフー!!!かっこいー!!」


ぴょんぴょん跳ねながらココアが言うと


「よくも避けたな貴様…」


黒焦げになった焼きプリンが言った。


「あっはっはっ!様ァみろ!!」


するとプリンを指さして笑うポトフ。


「貴様っ!!」


プリンがそう言った瞬間


「!」


ある事に気が付いたミントが


「危ないポトフ!!!!」


ポトフを突き飛ばすようにポトフに向かって走っていった。










ドスッッッッッッッッッッ










ボタボタボタッ


「っ!!」


大量の真っ赤な血が地面に滴り落ちた。


「ポ…トフ…?!」


恐る恐るポトフを見るミント。


「…危ねェのは…ミントの方…だぜェ…?」


ポトフの腹は、巨大な真紅の鋭い爪に貫かれていた。


ミントは逆にポトフに突き飛ばされていたのだった。


「ごめんねポトフ?!オレが余計なコトしなければ普通に避けられたよね?!」


涙目でミントが言うと


「んなコトねェよ…ありがとなミント…?」


にこっと笑うポトフ。


すると、背後から真紅の爪の持ち主である恐竜魔物の笑い声が聞こえてきた。


『グハハ…もう終りだな眼帯?』


ズボッッ


魔物が真紅の爪を勢いよく引き抜いた。


ポトフの腹に更に激痛が走る。


「ガハっ…嘗めんな…!」


血が大量に溢れ出している腹に手をかざすポトフ。


そして


「…メディケーション!」


って言った。


ぷわわわわっ


「『!!』」


見る見る回復してゆくポトフ。


"トリート"より更に上の回復魔法です。


「ったく…お前しつけェ」


ドカァァァァァァァァァン


ポトフは魔物に上段回し蹴りを見舞わした。


『グハ―…』


すると魔物は消滅していった。


「大丈夫ポトフー?!」


心配そうに尋ねるココア。


「大丈夫ダイジョ―…」


ポトフがそう言った瞬間


キンッ


「ぐァ!?」


ポトフは突然頭を抱えて苦しみだした。


「「ポトフ?!」」


驚くミントとココアの後ろで


「…テレポート!」


プリンが言った。










シュパンっ


満月の光が射し込む薄暗いミント達の部屋に瞬間移動した四人。


「っしょっ!」


急いでポトフをベッドに運ぶミント。


パチッ


と電気をつけるココア。


シャッ


とカーテンを閉めるプリン。


「「それ必要!?」」


思わずプリンに突っ込みを入れるミントとココア。


「…何かしておこうと」


プリンが言った。


「そう?…ポトフ…きっと疲れたんだね…」


ミントがポトフを見ながら言うと


「…そだねー…」


ココアが心配そうに言った。


「…む。もうこんな時間」


プリンが言うと


「わ!本当だー!」


驚くココア。


「もう寝よっか?」


ミントが言うと


「「うん」」


二人が頷いた。










皆が寝静まった頃


ムクッ


痛みが引いたのか、状態を起こすポトフ。


「……………………枕?」


そしてポトフは、プリンが閉めたカーテンを見て小さく呟いた。


四回に跨った実技試験、お疲れ様でした。

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