第38回 変貌日和
ちゅどおおおおおおおおん
ドカアアアアアアアアアン
「!?」
『『ギャーギャー』』
爆音と共に、木の枝で一休みしていた鳥達が一斉に飛びたった。
「…なになにー?」
不安気に辺りを見回すココア。
「っもー!なんで私一人しかいないのー!!!?」
涙目になりながらココアが叫ぶと
『ウホウッホウホ♪』
「!!」
ゴリラチックな魔物が現れた。
「いやー!キモイー!!」
脱兎のごとく走り出すココア。
『ウホウッホウホウッホウホウホウホウッホウホ♪』
バナナを振り回しながら追い掛けてくる魔物。
シュパーンシュパーン
「ええええええええ!?」
魔物が振り回しているバナナの先から青白い斬撃が飛び、辺りの木々を切りつけていた。
『ウホウホ♪』
そんな危険なバナナを持っているんだからたまったもんじゃないと思ったココアは
「えいっ!」
杖を振った。
ぽわんっ
『!?』
すると突然ココアの姿が消えた。
『ウホホ?ウホ?』
キョロキョロ辺りを見回す魔物。
『ウホホ〜?』
魔物は頭を掻くと、森の奥へと帰っていった。
「…ふう」
魔物がいなくなると、木が溜め息をついた。
ぽわんっ
「危なかったぁー…」
木は小爆発を起こすと、ココアになった。
「自然物に化けるなんて…流石私!」
ココアがそんなコトを言っていると
ガササッ
「っ!!」
ココアの後ろから、何者かが近付いてくる音がした。
ガサガサッ
足音は、だんだんココアに近付いてくる。
ガサッ…
すぐ後ろで足音が止まる音がした。
「いやーーーーーー!!」
ココアが悲鳴をあげると
「どしたのココア?」
聞き憶えがある声が聞こえてきた。
「ミント!?」
バッと振り向くココア。
そこにはミントが立っていた。
「魔物じゃなくて良かったー!!」
ココアが胸を撫で下ろしていると
「危ないココアっ!!」
「やっ!?」
ミントがココアを突き飛ばした。
「なに―…」
シュパーンっ
「!」
直後、青白い斬撃がココアが元いた場所を通っていった。
『ウホウッホウホ♪』
「! あいつっ!!」
そう言いながら立ち上がるココアの隣で
「…いにしえよりきたる琥珀…」
ぶわんっ
「σ!」
ってミントが言った。
『出番なんだなぁ〜♪』
次いで出てくる黒い鷹の頭と翼をもった獅子、σ。
「敵だよ!」
ミントが魔物を指さしながら言うと
『了解なんだなぁ〜』
σが素早く魔物に襲いかかっていった。
『ギャーハハハ!なんだなぁ〜♪』
ザシュッザシュッザシュッ
「…ありがとミントー…」
喜々として魔物をえぐるσを見ながらココアが言うと
「…どういたしまして…」
喜々として魔物をえぐるσを見ながらミントが言った。
『…っ!!』
『ギャーハハハ!なんだなぁ〜♪』
血にまみれて楽しそうに笑うσ。
「「…」」
無言になる二人。
すると
ドッッッッッ
「…っ?!」
「ミント!?」
背後から首を強打されたミント。
ガシッ
『ガハハ!隙あり!』
突如背後に現れたパンダチックな魔物が、倒れそうになったミントのローブを掴んだ。
「っ!?魔物っ!!」
慌てて距離を取るココア。
『ピンポーン ガハハ!』
ミントを摘み上げながら魔物が言った。
力なく腕を垂らすミント。
ミントは気絶していた。
「みっミントに何する気!?」
震えながらもココアが言うと
『食べる気♪』
って魔物が言った。
「っ!!駄目っ!!」
ココアが震えながら叫んだ。
『ガハハ!お前、コイツの為に何か出来るのか?』
ミントをぶらぶら振りながら魔物が笑う。
「っ…!σ!!」
ココアが振り向くと
「…え?」
そこには何もいなかった。
『ガハハ!召喚主が気絶したんだ 召喚獣は消えるに決まってんだろ?』
そんなココアを見て笑う魔物。
「くっ…!!」
悔しそうに魔物を睨むココア。
『ガハハ!残念だったなぁ!?』
魔物はそう言いながら笑うと
「!」
ミントを口の方へと運んでいった。
「っ…やめろっ!!」
そう叫んで魔物に向かって走るココア。
『ふんっ!』
ザシュッ
「きゃあっ!!」
ココアは魔物の鋭い爪で腕を切り裂かれた。
『…詰まんねえな』
腕を押さえているココアを見て、溜め息をつく魔物。
「…?」
ぱちっ
その時、ミントが気が付いた。
「!?」
ミントの目に真っ先に飛込んできたのは、腕から真っ赤な血を流しているココア。
「コ―…」
ミントが言いかけると
『さっさと逃げろよお前』
魔物がココアに向けて口を開いた。
「…」
しかし下を向いて腕を押さえているココアは、その場から動こうとしなかった。
『…どうした?逃がしてやるって言ってるだろ?』
魔物が再び言った。
「…」
動かないココア。
『ガハハ!どうせお前みたいな弱い奴にはコイツは助けらんねえよ!!』
笑いながら魔物が言った。
ピク…
微弱に反応するココア。
「おま―…」
ミントが魔物に何か言いかけると
「…弱い?」
「『!』」
ココアが口を開いた。
「ココア逃げて!!」
ミントがそう言ったが
「…弱い? …私が?」
まるで聞いてないココア。
「…ココア?」
困惑するミントに
『ガハハ!そうだ!!』
笑う魔物。
「…そうね…私は弱い…」
ココアが呟いた。
『ガハハ!ようやく認め―…』
「でも…」
『…?』
魔物の言葉を遮るココア。
「あんたには負けないわ」
そう言って、ココアは負傷した左腕に杖を当てた。
ヴィ―――――――――ン
『ぎゃああああああ!!』
「…」
ミントは茫然とその場に立ち尽くしていた。
いや、その場に立ち尽くして一点を見る事しかミントには出来なかった。
一点…それは
『ぎゃああああああ!!』
みるみる自分の血に染まってゆく魔物と
「キャハハハハハ!!!」
ヴィ―――――――――ン
悪魔のように笑いながらチェーンソーになった左腕で魔物を切り刻むココア。
ヴィ―――――――――ン
「キャハハハハハ!!!」
『ぐ…ゎ―…』
ついに魔物は消滅してしまった。
「キャハハハハハハハ?」
キョロキョロ辺りを見回すココア。
「コ…ココア? 魔物はもう倒した―…」
ミントが言いかけると
「キャハ!」
ココアが目を輝かせた。
「へ?」
ココアの目線を追ってみると
『も?!』
そこには牛チックな魔物がいた。
「コ…ココア?…まさか」
ヴィ―――――――――ン
「キャハハハハハ!!!」
ミントが言い終わる前に、ココアは左腕を振り回しながら魔物に向かって走り出した。
『もおおおおおおお!?』
ヴィ―――――――――ン
「キャハハハハハ!!!」
そして魔物を襲い始めるココア。
(…恐るべし"部分変身")
哀れな魔物を見つめながらミントが心の中で呟いた。
…説明が遅れましたね!
では、今からさらっとココアちゃんの変貌の理由を説明しますね!
魔物の言葉にプッツィン☆てキレたココアちゃんは、左腕に杖を当てて
「部分変身"アームアーム"!!」
って言って、"部分変身魔法"を使ったのです!
要するに、ココアちゃんは変身魔法の応用バージョンを使ったのですね!
わぁ!凄い!
「…なんなのさそのテンション?」
ふふふ♪
ナレーターに話しかけちゃ駄目ですよミントくん?
「…ごめんなさい」
それより、早く逃げて下さいミントくん!
「はい?」
後ろ後ろ!
「うし―…」
ヴィ―――――――――ン
「キャハハハハハ!!!」
「ろおおおおおおお!?」
魔物をぐちゃぐちゃにし終えたココアちゃんは、次はミントくんをぐちゃぐちゃにしてみたいようですね!
ガササッ
おや?あの二人は
「お?ミント!!」
「ミントだー!」
ポトフくんとプリンくんではないですか!
「ポトフ!プリン!」
がしがしっ
ミントくんは二人の腕を掴むと、更に加速しました。
「わ!」
「ミントォ?!」
驚く二人に
「いいから走って!!死ぬよ!?」
ってミントくんが言いました。
「「死?」」
二人が小首を傾げると、後ろから
ヴィ―――――――――ン
って機械音が聞こえてきました。
「「…?」」
後ろを向いてみる二人。
すると
「ココア?!」
「ココアちゃん!?」
「キャハハハハハ!!!」
笑いながらチェーンソーを振り回してこちらに向かって走ってくるココアちゃんが見えました。
「どっどういうコトだァミントォ!?」
ポトフが聞くと
「見たままのコトだよ!!死ぬよ!?」
って答えるミント。
「腕がチェーンソーになってる??」
プリンが言うと
「そうだね!死ぬよ!?」
ってミントが言った。
ヴィ―――――――――ン
「キャハハハハハ!!!」
「「ぎゃああああああああああああああ?!!!」」
仲が良いって、いいことですネ!