第36回 実技試験日和
ウサギさん寮の掲示板の前にて。
「そんな…っ!?」
掲示板に張り出されている掲示物を見て頭を抱えるココア。
「嘘だ…そんな…あんなヤツに負けたなんてーっ!」
ココアがわめいていると
「どしたのココア?」
「うむ。怪しいぞ」
ミントとプリンがやって来た。
「あ!ちょうどいいところにー!!」
二人に気付いたココアは
「ちょっとコレ見てよー!!」
二人に手招きをした。
「「?」」
小首を傾げながらココアの隣に移動する二人。
「コレコレー!!」
ココアはひとつの掲示物を指さした。
「?」
「む。順位ひょ―…」
ここで言葉を詰まらせるプリン。
とさっ…
「!?」
プリンがいつも大切に抱えている枕を落としたので驚くミント。
「プリン!?枕落ちたよ!?」
ミントは慌てて枕を拾ってプリンに差し出した。
「あ…ありがとう…」
お礼を言ったものの、プリンは掲示物を見続けていた。
「? どしたのさ?」
つられてココアとプリンが見ている掲示物を見てみるミント。
その掲示物には
+ + + + + +
第一学年 学年末実力考査
成績優秀者十名
1.プリン 1000/1000
1.ポトフ 1000/1000
3.ココア 985/1000
・
・
・
+ + + + + +
って印刷してあった。
「…わは〜!み〜んな頭いいんだね〜」
ちょっとした虚無感を自分に覚えるミント。
「「あいつが一位!?」」
ココアとプリンが同時に言った。
「…あいつって…ポトフのコト?」
ミントが尋ねると
「あいつが僕と同点!?」
「あんな女誑らしに私は負けたのー!?」
頭を抱えるプリンとココア。
「何やってんだァ?」
そこへポトフが頭を押さえながらやって来た。
「? 頭痛いのポトフ?」
ミントが心配そうに尋ねると
「ん? ああ…大丈夫だ」
気分が優れない様子でポトフが答えた。
「…無理しないでねポトフ?」
ミントの言葉に
「おゥ!」
微笑むポトフ。
「ちょっとー!!これどういうコトー!?」
そんなポトフにココアが
「なんでポトフが私より上なのー!?」
って言った。
「…ん? …ああ…」
すると、ポトフは頭から手を離し
そっ…
「!?」
ココアの左の頬に右手を添えて
「…そんな風に膨れたら、キュートな顔が台無しだぜ?」
流し目。
「…っもー!!なんなのそのキャラー!?」
顔を赤くしながらポトフの手を払うココア。
「…一位は一人で十分だ」
ボソッとプリンが言った。
「…あァ?」
素早くプリンを向くポトフ。
「っも〜!喧嘩しな―…」
ミントが言いかけると
ピンポンパンポーン
校内放送の音が鳴った。
『一年生のみんなぁ〜!!お外に集合だよ〜!!!』
そしてクー先生の声がスピーカーから聞こえてきた。
「お外ー?」
ココアが小首を傾げる。
「行こっか?」
ミントが言うと
「「うん」」
四人はグランドへと歩き出した。
『はいは〜い!みんな集まったかな〜!?』
拡声器からクー先生の声。
『今から学年末実技試験を始めるよ〜!!』
「実技試験?!」
クー先生の言葉に激しく焦り出すミント。
「…しかも学年末だよー?」
その隣でココアが言った。
「じゃあ もし赤点とったら…」
その隣でポトフが言った。
「…落第だな」
その隣でプリンが言った。
「何追い討ちかけてんの君ら!?」
ミントが涙目で言うと
「「めんご」」
謝る三人。
「なんなのその一体感!?」
ミントが突っ込んだ。
すると
『実技試験の内容を説明するね!!』
ってクー先生が言った。
『今からみんなを森に飛ばすから、学校に戻ってこれたら合格ね!!』
「! 良かっ―…」
ミントが顔をあげると
『あと、森には今までとはレベルが違う魔物がいっぱいいるから気を付けてね!!』
ってクー先生が言った。
「「え―…」」
『アースマジック☆』
リアクションの余地も与えずにクー先生が呪文を唱えると
ドカアアアアアアアアアン
「「ぎゃああああ?!」」
一年生達の足下が突如爆発し、一年生達はバラバラに森へと飛んでいった。
『ファ〜イト☆』
にっこり微笑むクー先生でした。
「ったたた…」
腰を擦りながら起き上がるミント。
「この展開多くないか?」
起き上がりながら言ってはいけない発言をするミント。
「…ま…普通の実技じゃなくて良かったぁ〜♪」
ミントが伸びをしながら言うと
『ぐばばばば』
「へ?」
どこか懐かしい声が後ろから聞こえてきた。
「…まさか?」
ミントが恐る恐る後ろを向くと
『『ぐばばばば!!』』
「いつぞやのクマさんがいっぱーーーーい!!!?」
いつぞやの熊的な魔物がズラリと並んでいた。
『『ぐばばぁ!!!!』』
魔物達が怒鳴った。
「なんか怒ってらっしゃる!?」
思わず後ろに飛び退くミント。
すると
べきょっ
って音がした。
「…べきょ?」
激しく嫌な予感がしたミントは、恐る恐る自分の足下を見下ろした。
『『ぐばぐばあ!!!』』
「やっぱりいいい!!?」
ミントは卵的なものを踏み潰していた。
『『ぐばばばば!!!』』
一斉にミントに襲いかかる魔物達。
「ごごごごごめんなさーーーーーーーーーい!!!」
死ぬ気で魔物達から逃げるミント。
『ぐばああ!!』
『ぐぐぐばあああ!!』
『ぐばぐば!!』
『『ぐばばばばば!!』』
「何言ってんのかさっぱり分かんないケド本当ごめんなさーーーーーーい!!」
泣き叫ぶミント。
『『ぐばばばばあ!!』』
怒り狂う魔物達。
「っ…悪いのはオレの方だけど…致し方ない!!」
ミントはそう呟くと、立ち止まって魔物達に向き直った。
「…輝く金い―…」
『『ぐばああ!!』』
「っろぉぉぉ!!!?」
ドカアアアアアアアアアン
鋭い爪で魔物達に吹っ飛ばされるミント。
「えっ詠唱ぐらいさせて下さいよ!!!?」
再び走り出すミント。
『『ぐばばばば!!!』』
もちろん魔物達はそんなに優しくない。
怒り狂いながらミントを再び追い掛け始める魔物達。
「あわわわわ…どうしようどうしようどうしよう?!止まってからじゃないと魔法陣出せないし…本当どうしよう?!!!」
この場を切り抜ける方法を考えながら全速力で走るミント。
『『ぐばあっ!!』』
怒濤のように押し寄せる魔物達。
「わーん!!こんなコトなら普通の実技試験の方が良かっ―…」
泣き叫ぶ途中で
「…そうか!」
ミントは閃いた。
「これなら…詠唱も要らないっ!」
そして立ち止まるミント。
『『ぐばああ!!!』』
先程のように襲いかかる魔物達。
スッ
するとミントは魔物達に杖を向け
「浮けええ!!!!」
って叫んだ。
ドカアアアアアアアアアン
『『ぐばあっ?!』』
爆発する魔物達。
「やった…!!」
魔法が失敗した事を初めて喜ぶミント。
『『ぐっ…ぐばっ―…』』
ヨロヨロと起き上がる魔物達が
「浮けええ!!!!」
ドカアアアアアアアアアン
大爆発。
『『ぐ…ば…』』
最後の力を振り絞って起き上がる魔物達が
「浮けええ!!」
ドカアアアアアアアアアン
大爆発。
『『…』』
ついに魔物達は起き上がる事が出来なくなくなった。
「…」
そんな魔物達に歩み寄るミント。
『『ぐ…』』
ビクッと反応する魔物達。
「…卵…割っちゃってごめんね?」
『『!』』
そんな魔物達にミントが言った。
「大事な卵だもん…怒るのは当然だよね?」
ミントが続ける。
『『ぐ…ば…?』』
ぐぐぐ
っと顔をあげてミントを見上げる魔物達が
『『!?』』
石化した。
「あはは♪」
なんと!ミントが自分らに杖を向けているではありませんか!
「…君らさっき…オレの詠唱邪魔した上に殴り飛ばしたよね?」
ミントは微笑んでいる。
『『ぐ…ぐばっ!?』』
たじろぐ魔物達。
「…なら」
それを見ると、ミントの顔から
「…オレが怒るのも当然だよね?」
フッと微笑みが消えた。
『『っ!?』』
魔物達の顔が真っ青になるや否や
「浮け」
ちゅどおおおおおおおおん
大爆発。
こうして、ミントは無事に危機を乗り越える事が出来ました。