第35回 苦労日和
こんにちは。ミントです。
今回はオレがナレーターみたいですね。
どうぞよろしくお願いします。
ピピピピピピピピピピピ…
お。もう測り終わったみたいですね。
「「…はい」」
プリンとポトフが体温計を差し出してきました。
…いや自分で見ろよ?!
「…プリンは四十度 はい高すぎー」
プリンから受け取った体温計を見てオレが言った。
「…ポトフは三十度 はい低すぎー」
ポトフから受け取った体温計を見てオレが言った。
「「…ミント?」」
心配そうにオレを見るプリンとポトフ。
「おめでとう 君ら今日学校休みね」
オレは、体温計をケースに戻しながら二人に言った。
「「ええ?!」」
露骨に嫌そうな顔をするプリンとポトフ。
「ええ?!…じゃないよ?プリンは熱あるし、ポトフは熱ないんだからちゃんと休んどかなきゃでしょ?」
そう言った後、
「っええ?!三十度?!」
ポトフの体温がおかしいことに気付いたオレ。
「もう一回測ってみてポトフ?!」
「…おォ」
ポトフはオレから体温計を受け取ると、再び体温を測り始めた。
「ぶう…学校休むのヤー」
頬をぷうっと膨らませながらプリンが言った。
「…授業中ほとんど寝てる君が何言ってんのさ?」
オレが言うと
「…ミントと一緒がいー」
あらあら。嬉しいコト言ってくれますねプリンくん。
ピピピピピ…
「…四十度…やっぱ休んどいた方がいいよ」
ポトフから再び体温計を受け取ったオレが言った。
先程のは体温計のミスですね。
…ポトフが超低体温じゃなくて良かったぁ…
「ゴホッ…ってコトは…一日中コイツといるしかねェのか!?」
焦るポトフに
「うん」
って言うオレ。
「「やだ!」」
ぷいっ
あらあら。二人ともそっぽ向いちゃいましたよ。
やれやれですね。
「病気の時ぐらい仲良くなさい!」
そんな二人に喝を入れてみる。
「「…だって」」
「だってじゃないの!」
…何キャラなんでしょうねオレ。
「ゴホッ」
「ケホケホ」
…咳が出始めましたね?
「ゴホッ…ミントォ腹へったァ〜」
食べる元気はあるみたいですね。
でも食堂まで歩かせるワケにもいかないし、それ以前に食堂に病人食が売っているかどうか…
「…じゃあ オレがなんか適当に作ったげるよ」
オレが言うと
「「へ?」」
驚いた顔をする二人。
…まあ…突然オレが料理するなんて言ったら驚きますよね。
「おまたせ〜」
熱々のお粥を二人前持ってオレが部屋に戻って来ると
「「…」」
浮かない顔をする二人。
失礼ですね。
そんなの構わず二人にスプーンとお粥を渡すオレ。
「「…」」
?
二人からモヤモヤが…
(先食えよ)
(ふざけるな。貴様が先だ)
(テメェこそふざけんなよ)
(…何故僕が危険を冒す必要がある?)
(俺だって御免だ!!)
わは〜!
声を出さずに意志の疎通が出来るんですかこの二人〜
失礼ですね。
「さっさと食え」
「「むぐっ!?」」
無理矢理二人の口の中にスプーンを突っ込むオレ。
すると
「…うま」
「…おいしい」
・・・。
…まあ…そう言ってもらえて嬉しいのは確かなんですけど…
果てしなく意外そうな顔するの、やめてもらえます?
「ゴホッ…すっげェなミント!」
「ケホコホッ…あつあつ」
両親がまともに料理出来ないから自然についたウデなんですけどね。
「ゴホゴホッ」
「ケホケホ」
・・・。
「…医務室から風邪薬もらってくるね」
オレが言うと
「っ!み…ミント…!!」
「ありがとう…ミント優しい」
あはは
うつされたらたまったもんじゃないですからね。
…冗談です。
ガコン
オレがウサギさん寮から出ると
「「え…?」」
寮の前にいた女子達が、それほど期待外れだったのか一斉に肩を落とした。
「なっ何さ?」
気分が害されたので、オレが女子達に言うと
「「なんで一人で出てくんの?」」
・・・。
俗にいう逆ギレってやつですかね。
女子達も激しく気分が害されたようで。
「…一人で?」
意味が分からなかったので聞き返すオレ。
「「プリンくんとポトフくんはどうしたのよ!!」」
・・・。
なんか大分掴めてきましたよ。
「…プリンとポトフなら風邪で寝込んでるよ」
そういえば、今日はバレンタインデーでしたね。
そうなれば、女子が男子を待ち伏せる理由は、大体二択に絞られますよね。
「「風邪?!」」
「うん」
「「そんな…それじゃ」」
チョコを渡す為か、パシる為か。
「「お大事にってコレ渡しておいて!!」」
…もちろんオレは後者。
女子達は、有り得ない量の箱やら袋やらをオレに押し付けると
「「よろしくねミント!!」」
って言って寮の前から去ってゆきました。
オレに拒否権は存在しないみたいですね♪
「…はあ」
溜め息をついて回れ右をするオレ。
すると
「みっミントさんっ!」
「?」
後ろから名前を呼ばれたので更に回れ右をするオレ。
「…アロエ?」
そこにはアロエが立っていた。
「お…おはよう…ございます…あの…えと…その…」
「?」
オレが首を傾げると
「っ…コレっ!!」
そう言って、アロエは小さな箱をオレに差し出した。
・・・。
またか。
「うん 渡しとくよ」
そう言いながらオレがアロエの箱を受け取ると
「へ!?」
素っ頓狂な声を出すアロエ。
「ちっ違いますよ?!そっそれはミントさんに―…」
言葉を詰まらせるアロエ。
・・・。
!?
オレに!?
「あ…ありがとアロエ」
「いっ…いえっ…その…すみませんっ!!」
そしてアロエは物凄い勢いで走り去っていった。
トテトテトテトテトテトテ
…遅いけど。
・・・。
…びっくりした…
再び回れ右をするオレ。
「エロガッパ」
あ。コレ、新しい合言葉です。
…コレ言ってるプリンとか見てみたいですね。
ゴゴゴゴゴ…
寮への扉が開くとまず目に入ったモノは
「「プリンくんとポトフくんが風邪って本当!?」」
…女子達。
「うん」
「「じゃあこれも渡しておいてミント!!」」
・・・。
…ごめんなさい。
ちょっと独りにしてもらえます?
ガコン
自分の部屋に大量のチョコを置いてきたオレが、再び寮から出ると
「プリン様が風邪引いたって本当ですか!?」
「おおう!?」
巨体の男…マッチョとでも言うんですかね…が、オレに話しかけてきた。
「そ…そですけど…?」
「そんなっ…」
残念そうに下を向く巨男。
「では…コレをプリン様に渡して頂けますか!?」
そう言って巨男はオレに綺麗にラッピングされた箱を差し出した。
・・・。
プリン…様?
・・・。
と言うかそれ以前に…
「ええええええええ!?」
思わず仰天するオレ。
「どっどうしましたぁ?」
オレのリアクションに驚く巨男に
「…つかぬコトをお聞きしますが…あなた性別は?」
と質問してみるオレ。
「? 男ですけどぉ?」
ですよね!!
「じゃあ何故にプリンに今日この日にチョコを…?」
オレが尋ねると
「心は乙女ですもんっ!」
って答える巨男。
・・・。
…まさか…いやまさかね?
「…あなたの名前は?」
まさかとは思ったが、一応名前を聞いてみるオレ。
「わたくし…ですか?」
するとその巨男は、体を可愛く…気持悪いけど…体をくねらせて
「プリン様の言うことならなんでも利いちゃう、見た目は男、心は乙女!その名も"タルト"でぇす☆」
って言った。
・・・。
…タルト…やっぱコイツがプリンに低反発枕贈ってきたストーカーだったのか。
「あはは。プリンの言うことなんでも利いちゃうんですかぁ〜」
「もちろんです☆」
にこっと笑うタルト。
「消えてって言ってましたよ?」
にこっと笑うオレ。
「なっ!?」
衝撃。
「う…うそ…そんな…」
タルトはバレンタインチョコを握り締めると
「うわーん!!」
泣き叫びながら走り去っていった。
・・・。
タルトには可哀想だけど…
プリン、もう大丈夫だからねっ!
コンコン
「失礼しまーす」
医務室の前に辿り着いたオレがドアをノックすると
ガラガラッ
「やんミントきゅん!!アタイのチョコをもらいに―…」
「失礼しました」
ガラガラ
ピシャンっ
・・・。
この学校に医務室の先生は存在しないのだろうか?
ガラガラッ
「じゃあ何しに来たの?」
再びドアを開けたチロルが笑いながら言った。
「風邪薬をもらいに来ました」
「あ〜んやっぱりぃ?!アタイのチョコもらいに来たんだぁ〜!!」
「違います。風邪薬をもらいに来ました」
「えへへ♪ちゃんと作ってきたよ…☆」
・・・。
…宇宙人?
「いや…だから―…」
「ハイ!あ〜んっ☆」
「むがっ!?」
無理矢理口の中にチロル特製のバレンタインチョコを突っ込まれたオレ。
「…どう?」
・・・。
あれ?
…全身に力が入らな―…
ドサッ
「ミントきゅん!?」
?
オレ…倒れたのかな?
あはは
なんかもう起き上がれそうにないわ〜
プリン…ポトフ…風邪薬、届けられなくて…ごめんね
…オレ…もう…死―…
「やん☆気絶するくらい美味しかったのね!」
・・・。
殺意が芽生えました。