第28回 喧嘩日和
今回はミント達の一日を覗いてみましょう。
一限目、体育。
今日は男子生徒達は外でサッカーです。
「行くよポトフっ!!」
そう言うと、ミントは相手のチームのディフェンスを見事にかわしてポトフにパスをした。
「任せろミントォ!」
華麗にボールを受け止め、ゴールに向けて突っ走るポトフ。
「ぷわ…」
ポトフが向かっていったゴールには、キャンディー枕を持ったゴールキーパーのプリンが立っていた。
「ポトフを止めろプリンーー!!」
と、プリンのいるチームが叫んだが
「ねむねむ」
「「ええええええ?!」」
あろうことか、プリンはゴールの真ん中で立ったまま寝始めてしまった。
「ポトフ!チャンスだよっ!!」
「おォう!」
ミントが言うと、ポトフはシュートのモーションに入った。
キランっ!!
「死にさらせェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
ドッカアアアアアアアアン
物凄い勢いでポトフからカーブがかかったボールが繰り出された。
ゴールではなく、プリンの顔面めがけて。
「「ええええええ?!」」
どかあああああああああん
「ぴわ?!」
物凄い勢いの固いサッカーボールが顔面に直撃したプリンは、そのまま横に吹っ飛んでいった。
「あっはっはっ!様ァみろ!!」
飛ばされた無様なプリンを見て笑うポトフ。
「…俺の安眠を妨げたのは貴様か?」
飛ばされたままの状態のプリンが禍々しい声で言った。
プリンは暗黒モードになると自分のことを"僕"ではなく"俺"と言うようになるみたいですね。
「テレポート」
そしてプリンが言った次の瞬間
ドシィィィィィィィィィン
「「ええええええ?!」」
ポトフは突如上から降ってきたサッカーゴールの中に閉じ込められた。
「ざっけんなァ?!」
ポトフがゴールの中から叫ぶと
「煩い。邪魔するな。俺は眠いんだ」
プリンはそう言ってそのまま眠りについた。
「てっ?!ふっざけんな!!?起きろテメェ!?」
必死で叫ぶポトフだが
「ぐー。」
プリンはぐうぐう眠っている。
「「…」」
呆然とする男子生徒達。
「って何してんのみんな?!早くポトフを助けてあげようよ!?」
ミントが言うと
「「いや自業自得だろ」」
皆に言い返されるミント。
「た…確かにそうだけど…っ!!」
ミントが慌ててポトフの所へ駆け寄った。
「大丈夫ポトフっ?」
「み…ミントォ…!」
ミントの優しさに涙ぐむポトフ。
「今助けてあげるからねっ!!」
ミントはそう言って、ポケットから杖を取り出した。
「待て待て待て待て?!」
それを見て激しく焦り出すポトフ。
「な、何する気だァ?!」
ポトフが尋ねると同時に
「浮け〜っ!!」
「ぎゃああああああ?!」
ミントは杖を振った。
思わず目を瞑るポトフ。
・・・
・・・・・・
「「?」」
爆発が起こらない。
恐る恐る目を開けてみる皆さん。
すると
ふわふわ
「「!?」」
サッカーゴールが宙に浮いていた。
「や…やた…!?」
ミントも驚いていた。
「た…助かった…!ありがとォミントォ〜!!!!」
ミントに抱きつくポトフ。
「う、うん!どういたしましてっ!!」
目を輝かせながら宙に浮いたサッカーゴールを見続けるミント。
((奇跡だ…))
とか思う皆さん。
二限目、薬草学。
「ハイじゃあ今日は簡単な解毒薬を作るよ!」
紫髪のクー先生が言った。
「えっと材料は"檸檬果汁"に"ミント"に"にゅるんだー"に"蛙の尻尾"だよ!」
先生が黒板に材料名を書き出していった。
「これらを100℃に熱した釜の中に擦り潰しながら入れてくだけ!じゃあやってみよう!」
クー先生が元気に言うと、クラスの皆さんは早速作業に取り掛かった。
「蛙の尻尾って…折角出世したオタマジャクシが可哀想だねー」
ココアが蛙の尻尾を擦り潰しながら言った。
「む?ミントか」
同じ班のプリンが擦り蜂を持ったままミントの方を向いた。
「いやいやいやいや?そこにミントが置いてあるでしょ?!」
同じ班のミント(人)がミント(植物)を指しながら言った。
「あっはっはっ!馬鹿って哀しいなァ?」
同じ班のポトフがにゅるんだーを擦り潰しながら言った。
…なんですかそれ?
「貴様に言われると激しく腹が立つな」
ブシュッ
「ぎゃああああああ?!」
ポトフの左目にプリンが思いっ切り檸檬果汁を噴きかけた。
蜜柑よりも数倍強烈です。
「何してんのよー?」
ココアが呆れながらブチブチとミントを千切り始めた。
「…」
ココアによって千切られているミント(植物)を見て、なんか胸が痛くなるミント(人)でした。
四限目、家庭科。
「では一月なので皆さんで協力してお餅を搗いてみましょう!」
金髪のピット先生が言った。
「まず臼に餅米を入れて、その後、杵とお水を使ってみんなで仲良く作ってみて下さいね!」
そう言ってピット先生が微笑むと、臼と杵と餅米が用意された。
「ぼくは用事が出来てしまったので少し席を外しますが、くれぐれも怪我をしないようにして下さいね!」
皆さんが作業に取り掛かってから暫く経つと、先生はそう言って教室から出ていった。
次の瞬間
キランっ!!
「死にさらせェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
「「ええええええ?!」」
ドカアアアアアアアアアン
「くぴゎ?!」
ポトフが杵をバットのように使ってプリンの後頭部を強打した。
そのまま前に吹っ飛んでいくプリン。
「あっはっはっ!思い知ったかァ!!」
吹っ飛んだプリンを見ながら笑うポトフ。
「ちょっとポトフー?!今のはやりすぎ―…」
ココアが言うと
「頭上注意」
プリンが倒れたまま言った。
「「?」」
上を向く皆さん。
すると
シュパンっ
「「ええええええ?!」」
ポトフの頭上に突如臼が現れた。
ゴッ!!
臼は重力に逆らうことなくポトフの顔面にぶち当たり、鈍い音を出した。
何故顔面かって?
それはポトフが上を向いたからですよ。
「…計算通り」
プリンがそう言いながら立ち上がると
ドシッ
バタッ
「「ポトフー?!」」
臼の隣に倒れたポトフの頭上には、小さなひよこさん達がくるくる回っていた。
気を取り直して餅搗き再開
ペッタン
「えいっ」
ペッタン
「えいっ」
ペッタン
「えいっ」
ミントが杵を振り上げた時に水をつけた手でお餅を引っくり返すプリン。
ペッタン
「えいっ」
((和む…))
皆さんがそんな絵を見てのほほんとしていると
「う〜…重〜い…」
女子の方の班からそんな声が聞こえた。
すると
ふわっ
「大丈夫ライチちゃん?」
「!」
ポトフがさっき重いって言った女の子、ライチの後ろから杵を支えた。
よってライチは今、ポトフに後ろから抱きつかれている状態になっている。
「ぽ、ポトフくん?!」
ボッと顔を赤くするライチと
「「きゃああああ!?」」
羨ましそうな声をあげる女子の皆さん。
「ずるーいっ!あたしも手伝って〜っ!!」
「やーん私も〜!!」
「待って待って!私も私も〜!!」
「あっはっはっまいったなァ?」
爽やかに微笑むポトフ。
「「きゃあああああ☆」」
キュンキュンする女子の皆さん。
「あぅんなの…ただのセクハラじゃーん?」
ココアが言うと
「「まったくだ」」
男子生徒達が声を揃えて言った。
ペッタン
「えいっ」
ペッタン
「えいっ」
ミントとプリンはまだまだ餅を搗いていた。
夜、反省会。
「…もうっ!なんでそんなに仲良く出来ないのっ?」
ミントが腰に手を当てながら言った。
「ぶう…こいつがふっかけてくるから」
プリンがそっぽを向いて膨れながら言った。
「…確かに今日はそうだったね…なんでプリンにちょっかい出すのさポトフ?」
ミントがポトフの方を向きながら言った。
「ムカつくから」
ポトフもそっぽを向いて膨れながら言った。
「はあ…何がそんなに気に喰わないのさ二人とも?」
ミントが溜め息をつきながら言うと
「「全て」」
綺麗にハモるプリンとポトフ。
「…あんだと?」
「何度も言わせるな馬鹿」
「…」
こんな二人を見て、何かを諦めたように
ズゴーっ
とコーラを飲むミント。
「おっ!結構美味しいじゃんダイエットコーラ♪」
ミントは新たな発見をした。
「…まず貴様の顔が気に喰わないな」
プリンが言った。
「おォ?奇遇だな?俺もテメェの顔が気に喰わねェ」
ポトフが噛みつく。
「スカした顔しやがってこの…イケメン!!」
ポトフが言った。
「ふっ…黙れこの眼帯イケメン」
プリンが不敵に笑いながら言い返す。
「なんだと枕イケメン!!」
「眼帯イケメン」
「枕イケメン!!」
「はは…本当に仲いいね君ら」
ミントが言うと
「「だっ誰がこんなイケメンと!!」」
声を揃えて言い返す二人。
果たして"イケメン"は悪口なのか、どうなのか…
そんなこんなでミント達の夜は今日も平和に更けてゆくのでした。