第26回 病院日和
今日は健康診断と身体測定をする為に、国立病院にお邪魔します。
「これは?」
お医者さんが"C"みたいな円を棒で指しながら言った。
「分かりませェん」
ポトフが答えた。
「じゃあこれは?」
「分かりませェん」
「こっちは?」
「分かりませェん」
「これは?」
「分かりませェん」
「こちらは?」
「分かりませェん」
「こっちは?」
「あのォ」
「ん?」
「俺、右目眼帯してるんですけどォ?」
左目を隠したポトフが言った。
「あーそれじゃ何も見えないね!」
「「あっはっはっ」」
笑い合うポトフとお医者さん。
「はいプリンくん枕置いて?」
聴診器を持ったお医者さんが言った。
「嫌」
プリンが答える。
「いやお願いだから…そのままじゃ胸の音聴けないでしょ?」
お医者さんが困ったように再び言った。
「断固拒否」
断固として枕を放さそうとしないプリン。
「…何してんのさプリン」
身長を測っていたミントがその様子を見ながら言った。
「オレだって仕方なく帽子脱いでるのに…」
今のミントは帽子を被っていないので赤と緑の髪色が剥き出し状態だ。
「ミントくん160cmね?」
ミントの身長を測っていた看護師さんがそう言ったので身長計から降りて素早く帽子を被るミント。
「はい、カード」
そして看護師さんに身長を記録して貰ったカードを受け取ると、次の測定場所に移動した。
すると
「く…」
ミントは壁に寄りかかって苦しそうに頭を押さえているポトフに出くわした。
「ポトフどうしたの?さっきまであんなに元気だったのに?」
声をかけないワケにもいかないのでポトフに声をかけるミント。
するとポトフが苦しそうに
「お…お…」
って呟いた。
「お?大丈夫ポトフ?!」
本当に辛そうなのでポトフの肩を支えるミント。
その瞬間
「…女の子がいねェ…」
ってポトフが言った。
「…」
冷めた顔してポトフの肩を放すミント。
「く…なんで病院なのに…女の子がいねェんだ!?」
と、ポトフ。
ちなみにこの部屋に居るお医者さんと看護師さん達は皆男性で、この部屋に居る生徒達ももちろん男の子です。
「病院って言ったら…ナースだろ?!」
ポトフが悔しそうに言った。
「ははは…ナースと女医は女子の方を診てるよ」
ミントが冷ややかに返す。
「くそゥ…何処を見ても男男男…ムサイ…むさ苦しすぎる!!」
ポトフが頭を抱えながら言った。
「女の子プリィィズ!!」
ポトフが壊れた。
「はあ…どんだけ飢えてんのさ君は?」
ミントがポトフに尋ねると
「女の子は柔らかいから好きだ…♪」
ポトフが幸せそうな顔してなんか言い出した。
「ポトフ?!」
危ない発言に驚くミント。
「男と違って全身がこう…ぷにぷにふかふかしてるよなァ〜♪」
ポトフは幸せそうだ。
「ちょっポトフ?!キャラが崩壊してるよ!?」
ミントがポトフを揺するとポトフがミントの方を向いた。
するとポトフが
「…ミントちゃん♪」
って言った。
「はあああああああ?!」
全身に鳥肌が立つミント。
「あっはっはっ♪女の子がいる〜♪」
ポトフがミントを見ながら言った。
「いやいやオレ男だからね!?」
でも確かに女の子っぽい顔をしているミント。
「ちょっと語り手?!」
…ゴホンッ
「ミントちゃ〜ん♪」
「うわあっ!?」
ポトフが迫ってきたので逃げ出すミント。
しかし
ガバッ
「あっはっはっ♪捕まえたぞん♪」
「ぎゃああああああ?!」
ミントはあっけなくポトフに抱きつかれてしまった。
「ちょっ…そこのお医者さん!?コイツおかしいんですけど!!」
ミントが近くにいたお医者さんに助けを求めて叫ぶと
「ん?どれどれ?」
ミントに呼ばれたお医者さんは、ミントに抱きついているポトフに近付いてきた。
「ミントちゃァん♪ちゅっちゅ〜♪」
「むぎゃあああああ?!」
その間ポトフの唇を死ぬ気で避けるミント。
「ほほう…」
その時お医者さんが何か分かったように呟いた。
「ど、どうにかして下さい〜っ!!」
ミントがポトフの顔を遠ざけるためにポトフにアイアンクローしながら言った。
「…"女の子がいないと駄目駄目病"患者ですね」
って真剣な顔してお医者さんが言った。
「…は?」
呆気にとられるミント。
「…つまり彼は女の子がいないと気が狂ってしまうのです」
お医者さんが言った。
「気が狂うと、この病気にかかった患者の脳はそれを正常化させるために、しばしば幻影を見せる場合があります」
お医者さんが続けた。
「幻影ってまさか?!」
ミントがはっとなる。
「はい。今の彼の目にはあなたが女性に見えるのでしょう」
お医者さんが真剣な顔して言った。
「そんなっ…軽くヤバイじゃないですか?!」
ミントが泣き叫ぶと
「軽くありません。重症です。この病気は治りませんからね」
お医者さんが言った。
「えええ?!じゃあどうするんですか?!」
ミントが困り果てた顔で言うと
「消せばいい」
後ろから声がした。
「「!?」」
驚いて二人が振り向くと、そこには枕を抱えた水色長髪男、プリンが立っていた。
「消すって…プリン!?」
ミントが驚いたように聞き返すと
「言うこと利かない奴なんか消えてしまえばいい。」
プリンがポトフに近付きながら言った。
「どいつもこいつも枕を置けと…イライラする」
スッと右手をポトフに向けるプリン。
「ちょっプリン?!どうしたのさ!?」
今のプリンは、ミントが今まで見たことの無いようなドス黒いオーラを発生させていた。
つまり、今の彼は暗黒プリンである。
「プリン―…」
その時ミントが何かに気付いた。
「っ?!」
先程プリンに枕を置けとお願いしていたお医者さんが消えていた。
「あ、あの人どうしたのさプリン!?」
ミントが尋ねると
「…愚かな医者だったな…ククク…俺が枕を放すワケないだろう…テレポート」
ピュッ
ってプリンが言ってポトフが消えた。
「プリンキャラ違ーってかポトフー?!」
ミントが慌てて
「ポトフを何処にやったの!?」
プリンに尋ねた。
すると
「ぐー。」
「!?」
プリンは眠っていた。
「え?え?…何が起きたの?!」
ワケが分からない様子でミントが辺りを見回すと
「…暗黒プリンだ…」
「…悪魔降臨だ…」
とクラスの男子生徒達が囁き合っていた。
(?? 暗黒プリン?)
さっぱり意味が分からないので
「…プリン?」
ミントはプリンを揺すって起こす事にした。
「…む?」
目を覚ますプリン。
「プリン?ポトフを何処にやったの?」
ミントが寝起きのプリンに尋ねた。
「む?なんのコトだ?」
プリンが小首を傾げながら聞き返した。
「なんのコトって…さっきポトフをテレポートさせたでしょ?」
ミントが更に言うと
「?」
反対側に小首を傾げるプリン。
「もしかして…覚えてないの?」
ミントが言った。
「うむ。それだ」
コクンと頷くプリン。
すると
『『きゃああああ!!』』
「「?!」」
隣の女子生徒達がいる部屋から悲鳴が聞こえた。
「「まさか…」」
と男子生徒達が呟くと
『『ポトフくん?!』』
と女子生徒達が叫んだ。
((やっぱり…))
とか思う男子生徒諸君。
『『そしてなんなのこのオヤジ?!』』
女子生徒達が続けて叫んだ。
(あの医者もかー!)
ミントが気の毒そうに突っ込むと
『ま、待ってくれ!俺はこのオヤジに…』
とポトフの声が聞こえた。
((罪なすりつけたー!!))
とか思う男子生徒諸君。
『ま、待ちなさい!私は君のせいで…』
とお医者さんの声が聞こえた。
((オトナ気ねー!!))
とか思う男子生徒諸君。
『何ポトフくんのせいにしてんのよコイツ!!』
『そうよ!ポトフくんがそんなコトするワケ無いじゃない!!』
『みんな…俺を…信じてくれるのか?』
会話の後、再びポトフの声が聞こえた。
『『もちろんよ!!ポトフくんは何も悪くないわ!!』』
女子生徒達がハモって答えた。
((…))
何か釈然としないものを感じる男子生徒諸君。
すると
『ってんなワケ無いでしょー!?』
ドカアアアアアアアアアン
『『がはっ!?』』
ココアの声がして、何かがドアをぶち破る音がした。
((ナイスココアー!!))
壁に向かって親指を立てる男子生徒諸君。
『ちょっココア?!』
『ポトフくんに飛び蹴り!?』
って女子生徒達が言った後
『んなコトいいから上着着なよー?ドア全開だよー?』
ってココアが言った。
『『いやーん!!』』
女子達が恥じらいの声をあげた。
((…))
顔を赤くする男子生徒諸君。と同時にポトフに対する殺意が芽生えた。
ガラガラ
お医者さんとポトフが帰ってくると
「「ポトフ!!」」
「おおゥ?!」
次々にポトフに襲いかかる男子生徒諸君。
「待ってよみんな!?」
それを見てミントが言うと一斉にミントを向く男子生徒達。
「どっちかって言うとプリンのせいだよね?」
・・・
・・・・・・
「む?」
男子生徒達がプリンを向いた。
「「プぅリぃン!!」」
「ぴわっ?!」
標的を変えて次々とプリンに襲いかかる男子生徒達。
これだけ元気なら、彼らは健康そのものですネ。