第24回 初詣日和
年の始めにお友達と一緒に神社におまいり。
「大変大変っ!ポトフがいなくなっちゃったよ!?」
ミントが辺りを見回しながら、隣を歩いているプリンに言った。
A.M.7:00、ポトフを見失う。
「む?本当だ。ココアもいない」
プリンが言った。
「いやココアは元々来てないからね?」
ミントが突っ込む。
「うむ?そうだったか?」
プリンが小首を傾げる。
「そうそう…もー…ポトフ何処いったんだろ?」
ミントが辺りを見回す。
「ふふふ。これだから馬鹿は困るな」
「…そう言うならオレのマフラー掴むのやめない?」
プリンは、はぐれないようにミントのマフラーをしっかり掴んでいた。
「おおっ?!ミントォ!よかったよかったァ!!」
人混みの中からポトフが手を振った。
「ポトフ!」
ミントが手を振り返す。
A.M.7:20、ポトフと合流。
「…チッ」
「喧嘩売ってんのか枕?」
と、プリンをガンを飛ばすポトフの手には
『ぶきゅーっ!!』
おっとビックリ干支の登場。
ポトフは小さくて丸々と太った猪を抱えていた。
「ってどうしたのさ?!猪持って?!」
ミントが突っ込んだ。
「ん?あァ…これか?」
『ぶきゅーぶきゅーっ!』
ポトフが猪を見ながら言った。
「そこに捨てられてたから…」
ポトフが言うと
「…美味しそう」
「『?!』」
プリンの突然の危険な発言に驚くミントと猪。
「…やっぱそう思うか?!」
「『?!』」
更にビックリ。ここにきて初めてプリンとポトフの息が合った。
A.M.7:40、プリンとポトフの阿吽の呼吸。
『ぶぶぶぶきゅーっ!!』
猪が必死で何かを訴える。
「…猪鍋とか…美味そうだよなァ…?」
ポトフが猪を見ながら言った。
「ちょっと何言ってんのポトフ?!」
ミントが慌てて突っ込む。
「どちらかと言うと丸焼きの方が僕はお勧めだ」
ミントのツッコミなんかまるで聞いていないプリンが言った。
『ぶきゅー!ぶきゅきゅきゅー!!』
…きっと猪も必死でツッコミを入れているのでしょう。
「ほっ、ほら!!猪も嫌がってるし!!」
『ぶきゅー!』
必死に猪を庇うミントに感動する今年の干支、猪。
「おいおい何言ってだミント?」
ポトフが呆れたように言った。
「?」
疑問符を向けるミント。
「…コイツ、食って欲しいって言ってる」
プリンが言った。
『ぶきゅっ?!』
猪の様子からして、多分そんなことは一言も言ってない。
「んなワケ無いでしょ?!」
そう言ったミントが、ポトフから猪を奪い取った。
「…あのなァミント?」
ポトフが言った。
「牛とか豚とか鶏とか芋虫とかは、人間に食われる為だけに存在してんだぜェ?」
「何さらっと酷いコト言ってんの君?!つうか芋虫?!」
ポトフの発言に透かさず突っ込むミント。
「猪もそれに然り」
プリンがした追加発言にうんうんと頷くポトフ。
「なんで今日君ら仲良さげなの?!いいコトだけど!!」
ミントが猪を抱きかかえながら突っ込むと
「「はっ!!」」
二人が思い出したように顔を見合わせた。
「…と、兎に角!猪鍋だ!」
ポトフがそっぽを向きながら言った。
「だ、だから駄目だって!!干支が年の始めに死ぬってどんだけ縁起悪いの?!」
『ぶきゅー!!』
ミントが言うと、そうだーと言うように短い前足を挙げる猪。
「…でもミント、牛肉も豚肉も鶏肉も芋虫も食べてる」
プリンが言った。
「芋虫は食べてないけど…うっ?」
グサッとくるミント。
「そォだぜェ?この世の中はなァ…自分が生きてく為には、必ず何かを犠牲にしなきゃいけねェんだよ…」
ポトフがなんかほざいた。
「く…」
ミントには、それが真理のように感じた。
「…」
猪を見るミント。
『ぶきゅー…』
猪もつぶらな瞳でミントを見返す。
「…」
『…』
「…」
『…』
「よし食おう」
『ぶきゅ?!』
まさかの裏切り。
ミントがプリンとポトフに屈服した。
「あっはっはっ!よし!食うぜェ!!」
ポトフが呼び出し魔法でナイフとフォークを呼び出した。
A.M.8:00、殺猪事件発生?
『ぶきゅー!!』
ミントの腕の中で必死に叫ぶ猪。
すると
「ミントきゅ〜〜ん!!」
「っばぁ?!!!!!!」
チロルとココアがやってきた。
「やっほー!…て何してんのー?」
ココアが尋ねた。
『ぶきゅー!!』
必死でココア達に助けを求める猪。
「うわキモ…」
『ぶっ?!』
ココアの強烈な一言で瞬殺される猪。
「なななっなんで此処だと分かったのさ?!」
ミントが言った。
「あぁんっ!ミントきゅんの素敵な髪色は誰にも真似出来ない〜ってか…愛?」
チロルが顔を赤くしながら言った。
「くっ…またしてもこの遺伝子の奇跡のせいで…!!」
悔しそうに頭を押さえながら、地面を踏み付けるミント。
「て言うかやぁん!ミントきゅんったら…そんな小汚いもん食べないでアタイのお節を食べて〜っ!!!」
チロルが言った。
『ぶきゅ?!』
またもや強烈な一言に傷付く猪。
「ちちちっチロルの?!」
ミントが飛び上がる。
その拍子で猪がミントの腕から落ちてしまったが、猪はすぐさまその場から逃げ出した。
「…いや?」
チロルが泣きそうな顔で尋ねた。
「っ?!!!!!!!」
ミントが再び飛び上がる。
「そっか…そうだよね…」
「いいいいいや?!是非食べさせて致します!!」
ミントが慌てて言った。
「本当?!」
目を輝かすチロル。
「う…………………ぅん」
A.M.8:15、ミントの選択ミス。
(優しいねーミントー?)
ココアがボソっとポトフに言った。
(これで一歩良い男に近付いたなミント!)
(どちらかと言うと死に近付いた気がするが?)
((…そうね))
人気の無い場所に移動した五人。
A.M.8:30、朝食。
「はいミントきゅん?あーんっ♪」
チロルがなんか黒い物体を箸に挟んでミントの口元まで持っていった。
「ちちちっちょっと待った!?」
ミントが叫びながらチロルの動きを止めた。
「?」
小首を傾げるチロル。
「なんだそれは?!」
ミントが黒い物体を指さしながら言った。
「何ってやぁん!…オフコース目玉焼きに決まってるじゃない?」
「目玉焼きは白と黄色しか産み出さないハズだが?」
「と言うか元々お節に目玉焼きは無いと思うけどー?」
ミントが突っ込むと、ココアも突っ込んだ。
「愛があればいいの!…て言うかコレ、モノホンの目玉だもん?」
・・・
・・・・・・
ガシッ
「え?」
ミントが突然両肩を掴んだので顔を赤くするチロル。
「…チロル」
ミントが下を向いたまま言った。
「な、何ミントきゅん?」
ドキドキしながらチロルが聞き返す。
「ごめん。ホント勘弁して」
「え」
ミントはそう言い残すと、ドピュンとその場から走り去っていった。
A.M.8:35、ミント逃亡。
「…」
((最善の選択だな…))
呆気にとられるチロルと感心する三人。
「…やぁん!あんなに照れちゃって!きゃはっ☆」
((ポジティブー?!))
体をくねらすチロルに突っ込む三人。
「じゃ、みんなで先に食べちゃいましょ?」
三人の方にくるりと向き直るチロル。
「「か!?」」
三人に戦慄が走る。
「いやいやいやチロル?!ミントが戻って来るまで待ってようよー?」
ココアが言った。
つまり、永久に。
「えー?…そっか…」
お節が入った箱の蓋を閉めるチロル。
「それよりっミントきゅんを追い掛けなくちゃー!」
そしてチロルも走っていった。
「「…」」
呆気にとられる三人。
「…ミントも大変だねー?」
ココアが言った。
「うむ。危険料理だな」
プリンが頷く。
「で…どォすんだよコレ?」
ポトフがお節改め危険料理が入った箱を指さしながら言った。
「「処分」」
ココアとプリンの即答。
「処分って…どうやって?」
ポトフが尋ねた。
「さっきの猪にでも食わしときなさいよー?」
「うむ。最善の選択だな」
「人のコト言えねェが酷ェなお前ら?」
冷たく言い放つココアとプリンにポトフが言った。
『ぶきゅー』
「「!」」
A.M.8:50、丁度良いタイミングでさっきの猪再登場。
「「猪!!」」
三人が言うと
『ぶっ?!』
猪が飛び上がった。
『ぶきゅー!!』
そして一目散に逃げ出した。
「よし。お前が行ってこい」
プリンが言った。
「あァ?!なんで俺なんだよ?!テメェが行け!!」
ポトフが噛みつく。
「面倒」
プリンの即答。
「てっ…俺だって面倒だね!!」
ポトフが言い返した時
「ポトフーお願い?」
隣でココアがこう言うと
「はァい♪」
ポトフは笑顔で猪を追い始めた。
A.M.9:00、ポトフの猪追い。
「…まさに猪突猛進って感じー?」
「ふふふ」
…おあとがよろしい…ようで?