第17回 遭難日和
白い雪が空から舞い降り、地上を白く染めていく。
「わはー綺麗だね〜」
「本当だなァ〜!腹へったァ〜…」
雪が降り積もった白い綺麗な森の中に、ミントとポトフがおりました。
「ミントォ腹へったァ〜…飯はまだかァ〜?」
ポトフが長い木の枝を杖代わりにして寄りかかりながら言った。
「昨日食べたでしょ?」
ミントが短く返す。
「…飯は最低でも一日に二回食いたいぜェ…」
ポトフが呟いた。
「仕方ないでしょ?…オレら遭難したんだから」
ミントが言った。
「あっはっは!ミントって間抜けだなァ!!」
ポトフが笑いながら言った。
「君もだよ」
ミントが冷ややかに返す。
「ソウナンです…ってか?あっはっは!」
「あー寒い寒い」
二人がこんな状況になった原因は、昨日まで遡る。
≫≫≫
「今日からいよいよ修学旅行だなァミント!!」
ポトフが楽しそうに鞄を振り回しながら言った。
「うん!そだね〜ってプリン!寝ながら歩かないでよ?!」
ミントが反対隣を眠りながら歩くプリンにツッコミを入れた。
「ぐー。」
プリンは眠りながら歩き続ける。
「はぁ…で、スキー学習だっけ?」
ミントがポトフに尋ねた。
「おお!そうよ」
ポトフが答えた。
「スキーなんて初めてだよー。ちゃんと滑れるかなー?」
ポトフの隣を歩くココアが言った。
「大丈夫だよココアちゃん?俺が手取り足取り教えてあげるから?」
ココアの肩に手をまわすポトフ。
「遠慮しとくよー?先客がいっぱいいるでしょ?」
そう言ってポトフの手を払うココア。
「うゥんココアちゃんは相変わらず手厳しいな!あっはっは!」
ポトフが笑いながら言った。
「ほらそこの四人!早くバスに乗りなさーい!!」
紫髪のクー先生がバスの前で言った。
「「はーい」」
急いでバスに乗る四人。
こうしてバスは、学校を出発した。
「わー!雪が降ってきたよー!!」
ココアが窓の外を眺めながら言った。
「ぐー。」
ココアの隣にはプリンが眠っている。
よってココアは周囲の女子から密かに羨ましがられていた。
「ポトフく〜ん!私にもスキー教えてー!!」
「あーズルイズルイ私も〜!!」
「まったく…はしたないですわね?ポトフさん?わたくしもお願いします」
「あははっ何それ委員長〜!」
「オーケェオーケェ?こんな俺で良ければ、なんでも教えてやるぜェ?」
ポトフが言った。
「「きゃー!!やったー!!」」
女子達がはしゃぐ。
「「…」」
が、男子達から冷ややかな視線を浴びるポトフ。
「…オレ、かなり居づらいんだけど?」
ポトフの隣に座っていたミントが呟いた。
すると
「…うう?」
プリンが小さく唸った。
「ん?どうしたのープリンー?」
ココアがプリンの方を向く。
「…うううう」
プリンはうなされていた。
「ちょっと大丈夫ープリンー?!」
ココアが言うと、バスに乗った皆がプリンを振り向いた。
「「…プリンくん?」」
心配そうに声をかける皆さん。
「…バス」
そんななか、プリンが寝言を言った。
「バスガス爆発!!」
「「?!」」
皆がプリンの寝言に驚いた瞬間
ドッカアアアアアアアアン
バスが本当にガス爆発した。バスに乗っていたウサギさん寮の皆さんが様々な方向へと吹っ飛んでいった。
バフッ
「ったァ!?」
飛ばされたポトフが山に積もった雪に突っ込んだ。
「ひゃっ!?冷たァ?!」
ポトフが素早く顔をあげた。すると
「退いてポトフーー?!」
「うおわァ?!」
ドカァン
飛んできたミントがポトフに激突し、そのまま二人は意識を失った。
≫≫≫
こうして現在に至る。
「ったく…全てはあの憎たらしい枕のせいじゃねェか!!」
ポトフが言った。
「…でもプリンの寝言でバスがガス爆発するワケないよね?」
ミントがポトフをなだめながら言った。
「そっか…あー分かんねェ!!」
ポトフが髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら言った。
「はぁ…此処は何処なんだろうね?」
ミントが辺りを見回しながら言った。
見渡す限り白銀の世界が広がっている。
「…真っ白…無駄な体力は使わない方が良さそうだね?」
ミントがポトフを向くと
「見ろよ!!雪コケシ!!」
ポトフは言ったそばから無駄な体力を浪費していた。
ポトフの隣には、雪で出来た見事な巨大コケシが建っている。
「ってなんでコケシだよ?!」
ミントが突っ込むと
「腹へったなァ…」
ポトフが腹を押さえながら言った。
「だからそんなコト言われても…ってああ!!!?」
ミントが何かを思い出した。
「どしたァミント?」
ポトフが首を傾げると
「呼び出し魔法!!」
ミントが言った。
・・・
・・・・・・
「あ」
ポトフがポンと手を叩いた。
「そっか…そうだよな!?俺ら魔法使いじゃんな?!」
そう言ってローブのポケットの中に手を突っ込むポトフ。
「そうだよ!!…オレは出来ないけど…」
ミントが呟くと
「…ん?」
ポトフが首を傾げた。
そして反対側のポケットに手を突っ込むポトフ。
「あ、あれェ?」
ポトフに変な汗が出る。
「…ポトフ?」
そんなポトフにミントが声をかけた。
「…まさかでも…杖がないとか言わないよね?」
ミントが言った。
「あ、あっはっは…鞄の中だァ〜」
ポトフが右手を頭の後ろにまわして言った。
ちなみに彼の鞄はバスのトランクの中に入れた筈なので、恐らくバスと共に爆発しただろう。
「…使えねぇ」
ミントがボソッと呟いた。
「…すまねェ」
ポトフが悔しそうに下を向いた。
「!…なァミント?」
するとポトフが呟いた。
「何?」
ミントが返すと
「雪って…食えるよな?」
・・・
・・・・・・
「いやいや?!気を確かに持とうポトフ!?」
ミントが言った。
「雪を食べるなんて汚いよ!?雪はね、空気中の塵や埃が核となって、その周りにそこら辺の泥水とか海の水とかが蒸発したヤツが―…」
「―…でも食えるよな?」
ポトフの目は、もう獣になっていた。
「待ってポトフ!?ほ、ホラ!オレなんか持ってるかもだし…」
そう言ってローブに手を突っ込むミント。
「!…これは…!!」
ミントが目を輝かせた。
「コーラ!!」
ミントのポケットの中から三本のコーラが出てきた。
「流石オレ!ナイスオレ!」
自分で過去の自分を誉めるミント。
「…」
それを無言で見るポトフ。
「…あ…ポトフ…コーラ嫌いだっけ?」
ミントが言った。
「…すまねェ」
悲しみの涙を光らすポトフ。
「そっか…残念だね」
そう言った瞬間
ズゴーッ
とコーラを一本飲み干したミント。
「くそゥ!!腹へったァ!!!!」
ポトフが叫んだ。
「ポトフ…でも君、二ヶ月ぐらい何も食べてなかったんでしょ?」
ミントが尋ねた。
「いいや?あん時は、なんとか食い物があったんだ」
ポトフが答える。
「え?何があったの?」
ミントが更に聞いた。
「壁」
ポトフが答えた。
・・・
・・・・・・
「ポトフ…?」
「ん?なんだ?」
ポトフが返すと
「…もう…雪でもなんでも食べればいいさ」
ミントがポトフに言った。
「うっひゃ!!マジで!?ほんじゃァいっただっきまァす♪」
こうして、ポトフは木の枝に積もっていた雪を喜々として食べ始めた。
「…」
ミントにはもう彼に突っ込む元気もなかった。
「うっひゃァ!!冷てェ!!」
「…コーラ飲も」