第16回 誕生日日和
蒸し暑い夏。夏休みは、ほとんどの生徒が学校内で過ごすこの学校。
もうすぐ長い休みと共に、八月が終わろうとしております。
「浮いたぁー!!!!」
白い羽がふわりと宙に浮くと、ミントが叫んだ。
彼は補習だったため、強制的に学校に居ることになっていました。
「よく出来ましたね!ミントさんもこれで合格です!」
黒髪のポリー先生が言った。これだけ長い間一緒にいたので感動も一入である。
「やっ…やりましたねミントさんっ!!」
一緒にいた眼鏡っ娘、アロエも言った。
「うん!!やったよぉ!!ありがとうございました先生!!」
「あっありがとうございましたっ!!」
ミントとアロエが頭を下げた。
「いえいえ。礼は要りません…それより」
先生が言った。
「これから頑張って夏休みの課題を終わらせて下さいね?」
顔を見合わせる二人。
「「あ゛」」
ばんっ!!
勢いよく自分の部屋の扉を開けるミント。
「ヤバイヤバイヤバイ!!あと三日しかないじゃん!!」
自分の机から課題の山を引っ張り出すミント。
「お…多…」
その量を見て、ミントが挫折した。
「無理だろこんな…」
すると
「ぷわ…おはようミント」
プリンがベッドから起き上がった。
「プリン!…宿題…終わった?」
ミントがプリンに聞いた。
「うむ。初日にすぱっと」
素晴らしいですね。神ですね。
「いっ…一日で終わらせたの?!」
ミントがプリンの言葉に僅かな希望を持った。
「うむ。一日で終わらせたの」
プリンが答えた。
「…よぉし!やってやる!!」
そう言うと、ミントは問題集を開いて、ペンを握った。
「ファイト」
ミントを応援するプリン。すると
「ふァ…?なんだミントォ?勉強ちゅ―…」
ポトフが起き上がりながら言いかけると
「ミントの勉強の邪魔だ。失せろ」
プリンが右手をポトフに向けた。
「んだと枕―…」
「テレポート」
プリンが言うと、ポトフが消えた。
「…ここはこれだから」
それにも気付かずガリガリと問題を解いていくミント。
すると
コンコン
「?」
ノックする音が聞こえた。
「…誰だ?」
プリンが尋ねた。
『私だよー?ココアー!入って良いー?』
ドアの向こう側からココアの声が聞こえた。
「う、うむ。多分」
プリンが答えるとドアが開き、ココアが現れた。
「ミ〜ントきゅ〜ん!!」
+α。チロルも一緒に入ってきた。
「あぅえわわ…ミント勉強中っ!」
プリンが慌てて言った。
「あれぇー?そうだったのー!?」
ココアが驚いたように言った。
「ごめんねー?邪魔しちゃったかなー?」
「何用なんだ?」
プリンが尋ねた。
「なんかチロルがどうしてもミントに会いたいって…」
ココアが答えると
「ミントきゅ〜ん?今日はなんの日でしょうか〜?」
ミントの脇に立ってチロルが言った。
「…」
ミントはガリガリと勉強している。
「ミ〜ントきゅ〜ん?」
チロルが再び声をかけた。
「…何?」
ミントがペンを動かし続けながら短く聞き返した。
「そこ、間違ってるよ?」
チロルがページの真ん中辺りを指さしながら言った。
「は?…て、あ。本当だ」
ミントが驚きながら言った。そしてガリガリと直していく。
「そっかそっか!ありがとうチロル!!」
ミントが微笑みながら言った。
「やぁん!…で、今日はなんの日だ?」
チロルが聞いてきた。
「?…なんかあったっけ?」
ミントが首を傾げる。
「今日はアタイのバースデーみたいなーーー!!!」
チロルが言った。
「え?そなの?おめっとー」
・・・
・・・・・・
((どうでも良さげだー!?))
とか心の中でツッコミを入れるココアとプリン。
が、
「い…今…お祝いしてくれたの…?!」
チロルが驚いたように言った。
((良いのかあれでー!?))
「う…嬉しい…」
顔を赤くするチロル。そして
「ぐすっ…嬉しいよおぉー!!」
「っ!!!?」
ミントがガバッと顔をあげた。やはりミントは涙にめっぽう弱いようだ。
「うわーん!ミントきゅ〜ん!!」
「ななな泣かないでよチロル?!」
(…私達って…お邪魔?)
ココアがこそっとプリンに話しかけた。
(…ふむ…そのようだな)
プリンが返すと
(テレポート)
二人の姿が部屋から消えた。
「うわーん!!ミントきゅん大好きぃ〜!!」
「ぅえ!?ちょっ?!何言っちゃってんの!?」
顔を真っ赤にするミント。
「だって〜っ!今日初めてアタイにおめでとうって言ってくれたんだもん〜!!」
チロルが言った。
(何してんだよファンクラブ!?)
心の中で突っ込むミント。
「うわーん!!」
チロルはまだ泣いていた。
「チ、チロル…」
困り果てたミントが杖を手にとった。
「み、見てよチロル!オレ、浮遊魔法使えるようになったんだぁ!!」
「…え?」
チロルが顔をあげた。
「ミントきゅんて…学年で二番目に魔法が出来ないんだよね?」
「う…っん…」
悲しくなるミント。
「い、今からやって見せるね?」
そしてミントはチロルに向かって杖を振った。
ドカアァァァァァァァアン
「「?!」」
チロルが爆発した。
「えっ?あれっ!?ごごごごめんチロルっ!?」
ミントが焦りながら言った。
「…ううん…大丈夫」
チロルが呟いた。
「も…もう一度やってみて?」
気のせいなのか、嬉しそうにチロルが言った。
「う、うん…」
ミントが再び杖を振った。
ボッカアァアァアァアァン
チロル、再びの爆破。
「うわぁ?!本当ごめんチロルっ!!」
ミントが焦りまくる。
「あぁん!もっともっと!!」
…気のせいではありませんでしたね。完全にアレですね。危険ですね。近付かない方が良いですね。
「ぅ…ええ?どうして出来ないんだ?!」
自分の杖を見つめるミント。
「さっき出来たのに…」
「…ねぇ?もう一回やってみない?」
チロルがミントに言った。
「え?でもチロルが―…」
ミントが言うと
「大丈夫!…アタイのコトは…構わないで〜〜!!」
「チロル…!」
この時ミントの心の中では
(なんて優しい子なんだ!自分の身を犠牲にしてまで…)
この時チロルの心の中では
(最っっ高!!もっともっとカモぉーン!!!!)
…危ない危ない。
「…いくよ?」
ミントが言った。
「うんっ」
チロルが頷いた。
ダゴオォォォォォォォオン
チロル、三度爆発。
「あぁん!」
幸せそうに吹っ飛ぶチロル。
「チロルーっ!?」
慌ててチロルに駆け寄るミント。
「って…ぶっ?!」
ミントが顔を真っ赤にする。
「…?ミントきゅん?」
チロルが言うと
「ここここれでも着ててっ!!!?」
ミントが自分の服をタンスから引っ張り出してチロルに投げた。
「…?」
不思議に思って自分の服を見るチロル。
「っきゃあ?!」
チロルの服は、爆発のせいでズタボロになり、露出度の高い非常に危険な格好になっていた。
慌ててミントが投げた服を着るチロル。
「ごごごごめんねチロルっ?!」
ミントが焦りながら謝った。
「…ミントきゅんの服…おっきい…」
チロルが顔を赤くしながら呟いた。
ぼっと赤くなるミント。
「や、やっぱ返せ!!いや返すな!?でもやっぱ返せ?!」
ミントが恥ずかしさのあまり、壊れた。
「…これ…貰っても良い?」
チロルが尋ねた。
「えぇい!!そんな物、君にくれてやる!!」
ミントが狂いながら言った。
「…ありがと」
チロルが呟いた。
「素敵なバースデープレゼントだったよ?」
そう言って微笑むと、チロルは部屋をあとにした。
「に゛ゃーーーー!!!」
誰もいなくなった部屋で、気が狂っているミントが髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら叫んだ。
ガチャ
「おいこら枕ァ?!」
その時ポトフが部屋に入ってきた。
「ってアレ?いない―…」
ポトフが言うと
「に゛ゃーーーーー!!」
ドカァン
「うおァ?!」
ミントが叫びながらポトフに体当たりした。
「み、ミント?!どうしたんだァ?!」
ポトフが尋ねた。
「に゛ゃーに゛ゃー!!」
ポトフをポカポカ叩き始めるミント。
「たたたっ!?どうしたんだよミントォ!?」
ポトフがワケが分からないという風にミントに言った。
「に゛ゃーーーー!!!」
ミントは顔を真っ赤にしたままポトフをポカポカ叩き続ける。
「はっ!!お前まさか…」
ポトフがピーンときた。
「…化け猫に取り憑かれたか?!」
・・・
・・・・・・
「に゛ゃーー馬鹿ー!!」
「なっ?!馬鹿っつった!?今馬鹿っつった!?」
この後も、プリンが帰ってくるまでポトフをポカポカ叩き続けるミントでした。
その時プリンは、喜々としてポトフ叩きに参加したそうな。