第14回 仲直り日和
焼けつくような太陽。限りなく青い空。蝉があちこちでミンミンやかましく鳴いている。
今は、とても暑い夏。
「あっづ〜…」
ミントが言った。
「本当本当ぉー…アイス食べたーい…」
その隣で汗を拭いながらココアが言った。
「はいどォぞ?ココアちゃん」
透かさずポトフがココアにアイスを差し出した。
「わぁー!ありがとポトフー!!」
「いやァ〜レディの為なら、俺なんでもしちゃうよォ?」
ポトフがニヤケながら言った。
「きゃー!!ポトフくーん!!」
「プリンくんもいるわー!!」
「でも寝てるわね?」
「「可愛い〜!!」」
「ポトフくーん!ここ分かんないんだけど〜!!」
女子達が駆け寄ってきた。ポトフは意外と頭が良いようだ。
「あっはっはっ!なんでも教えちゃうよォ〜?」
「「きゃー!やらしー!!」」
てな具合でポトフが女子達に連れ去られた。
「あははー元気ねー」
ココアが笑いながら言った。
「で、歩きながら寝るのやめないプリン?」
ミントが隣を鼾をかきながら歩いているプリンに言った。
「…むー」
プリンが目を覚ましてから唸った。
「どうしたのープリンー?」
ココアが尋ねた。
「アイツと相部屋ヤダ」
プリンが女子達に勉強を教えているポトフを睨みつけながら言った。
「まだ言ってるの〜?いい加減慣れてよ?」
ミントが言うと
「ぶう」
プリンが膨れた。
「…相変わらず仲悪いのねー?」
ココアがミントに小声で言った。
「本当だよ…もう部屋にいると喧嘩止めるのが大変で大変で…」
ミントが溜め息混じりに言った。
「あはは…頑張ってミントー?」
ココアが困ったように笑った。
「アイツのせいでテスト前なのに集中出来ない」
プリンが言った。
「あははー…確かにやかましそうよねー」
ココアが笑うと
「あ゛」
ミントが何かを思い出したように頭を抱えた。
「?」
「どうしたのーミントー?」
二人がミントを見ると
「プリンとココアー!!勉強教えてー!!!!」
「「え?」」
ミントが泣き叫んだ。
てなワケでウサギさん寮の談話室でレッツ勉強会。
「…でー、こうなるんだよー?」
「ほへ〜」
ココアが説明すると、ガリガリとノートに書き写すミント。
「で…あれ?プリンーテスト範囲って何処までだっけー?」
ココアがプリンに尋ねた。
「魔法学は六十八ページまでだ」
プリンが答えた。
「そっかそっか!じゃあ魔法学はここまでだよー!」
ココアが教科書を閉じながら言った。
「…死ぬ」
ミントが書き写し終わると頭を机の上に乗せた。
「ふふふ。ミント、次は薬草学だ」
プリンが言った。
「うえ〜?」
ミントが泣きそうな顔をしながらプリンを見上げた。
「あははー頑張ってミント!はいコーラだよー!」
コトッ
ココアがミントの目の前にコーラを置くと
ズゴーっ
「っしゃあ!!やるかぁ!!」
一気に飲み干し、エネルギーをチャージしたミント。
「相変わらず凄いねーミント」
ココアが感心しながら言った。
「ではまず薬草の種類は…」
再びガリガリとノートに書き始めるミント。
(ってかテスト前なのに友達に勉強教えてもらう…オレって駄目だなぁ…)
なんか悲しくなってきたミント。頑張って!
カー。カー。
夕方になり、烏が山に帰り始めた。
「…以上だ」
そう言うと、プリンが魔物学の教科書を閉じた。
「お疲れ様ーミントー!」
ココアが言った。
「うわーん!ありがとう二人とも〜っっ!!!!」
ミントが持っていたペンを後ろに投げ飛ばしながら言った。
すると
スコーンッ
「ったァ?!」
ミントが投げ飛ばしたペンが誰かに当たった。
「?」
振り向くミント。
「いったいなァ〜?ペン?」
そこには額を押さえながらペンを拾うポトフがいた。
「あーごめんねポトフ?」
ミントが謝った。
「あっはっはっ!気にしてねェよミントォ〜」
ポトフがミントにペンを返すと
スコーンッ
サクッ
「ったァ?!」
再びペンがポトフの額に直撃した。そして刺さった。
「何すんだ枕ァ!!?」
額に刺さったペンを引き抜くと、透かさずプリンを睨みつけるポトフ。
「…気にしないんだろ?」
プリンが不敵に笑いながら言った。
「テメ…表出ろコラァ!!」
「おっ落ち着いてよポトフ!!」
ミントが焦りながらポトフをなだめた。
「ほ、ほらちゃんと謝ってよプリンー?」
ココアがプリンに言った。
「嫌」
プリンが返す。
「テメ?!」
「落ーちー着ーけー!!」
ミントがポトフを押さえた。
「…まったく…何が気に喰わないのさプリン?」
そしてプリンに言った。
「全て」
プリンが即答した。
「面かせ枕ァ!!!!」
「落ち着いてよポトフー?!」
ココアが言うと
「ウンっ!」
コロって態度が変わるポトフ。
「…はぁ…もぉ〜…」
ミントが溜め息をつくと
「もう約束忘れたの?!」
プリンとポトフに言った。
「「う…」」
約束と聞いて顔色を悪くする二人。
「約束って?」
ココアがミントに尋ねた。
「喧嘩したら仲直りするまで部屋に入れない!」
ミントが答えた。
「「く…」」
流石に部屋に入れないのはキツイので、二人が喧嘩するのをやめた。
「はい仲直りっ」
手慣れた手付きでポトフとプリンの手を握手させるミント。
「「っ!!」」
露骨に嫌そうな顔をする二人。
「じゃあ夕御飯にしよっか!」
ミントが言った。
「賛成ー!お腹すいたー」
ココアがミントと共に寮の出口へと向かった。
「…あっはっはっ!プリンくんと仲直り出来て良かったァ〜」
渾身の力を込めてプリンの手を握るポトフ。
「貴様と直る仲などハナから持ち合わせていないがな?」
渾身の力で握り返すプリンが言った。
「「…ふふふ…」」
邪悪に微笑みながら睨み合う二人。
「何してんのー?早く行こー?」
ココアが出口の近くで言った。
ぱっ
「はァ〜い♪」
ポトフはプリンの手を離すと、走ってココアの元へいった。
「プリンも早く〜?」
ミントがプリンに声をかけた。
「うむ。」
するとすぐさまプリンは、いつものプリンに戻った。
「ぷわ…ねむねむ」
夕御飯が終わり、部屋に戻ったプリンが言った。
「今日は疲れたなぁ〜」
ミントが延びをしながら言うと
「おっ!そォ言えば、今日はミントが最初だよな風呂?」
ポトフが言った。
「あぁ!そうだったね!」
そう言うとミントはタンスから着替を引っ張り出した。
「…じゃあお風呂入ってくるけど…喧嘩しちゃ駄目だよ?」
ミントが二人に言った。
「もっちろん!」
「ねむねむ」
二人が返事をすると、ミントはお風呂場へと入っていった。
「「…」」
残された二人。
「…」
「…」
「「…気に喰わねェ…」」
二人が同時に呟いた。
「…なんだと枕?」
ポトフが言うと
「僕はプリンだ」
プリンが返した。
「はっ!誰がテメェの名前なんて呼ぶか枕っ!!」
ポトフが鼻で笑いながら言えば
「僕も貴様の名前を呼ぶつもりは更々無い」
プリンが冷ややかに返す。売り言葉に買い言葉です。
「テメェ…喧嘩売ってんのか?」
「…税込みで一万五百円だ」
「高けェよ?!」
そして喧嘩になる。
こんな流れが日常化してしまったミントの部屋。
「俺がテメェに何したっつうんだよ?!」
ポトフが言った。
「僕がただ貴様の存在が気に喰わないだけだ」
プリンが返す。
「存在?!テメェ何俺を部分否定してんだよ!?」
「完全否定したつもりだが?」
プリンが鼻で笑いながら言った。
「くっ…!!」
どうも口喧嘩ではポトフの分が悪いみたいですね。
「くっそォ!!」
ポトフがプリンに殴りかかった。
パシィン
「っ!!」
「…ふっ」
ポトフの拳を軽々と枕を持っていない方の左手で止めるプリン。
「…この程度か?」
なんかキャラが違うプリン。いつの間にか暗黒モードに突入してますね。
「っのォ!!」
ポトフが再び殴りかかろうとした時
ガラガラガラ
「「!」」
風呂場の扉が開き、バスタオルを頭に被ったミントが現れた。
「…」
無言で二人を見た後
「ははっ…何してたのかなぁ?」
ミントが微笑んだ。
「まさかでも…喧嘩…とかしてないよねぇ?」
「「う…」」
二人が言葉を詰まらせた。
「…へぇ?してたんだ?」
ミントが言った。
「ち、違っ!コイツが悪いんだぜミントォ?!」
ポトフがプリンを指さしながら言った。
「元はと言えば貴様がふっかけてきたんだろう?」
プリンがポトフに言った。
「あァ?!んだとこの枕もう一回言ってみろコラァ?!」
「一度で聞き取れんのか貴様は?」
「テメェっ―…」
ぶわんっ
「「!?」」
ミントが突然、琥珀色に輝き出した。
「い〜ぃ加減にしてくんないかなぁ〜?」
『そうなんだなぁ〜』
σの登場。
「「ぎゃああああああああああああああああ!?」」
夜中に大声を出すのはやめましょうね。
「はい仲直りっ」
『なんだなぁ〜』