第11回 暴走日和
本日最後の授業、六限目の魔法学がもうすぐ始まります。
「…ふあ…眠…」
ミントが欠伸をしながら教科書と筆記用具を机の上に出した。
「ううう…」
パタパタパタ
その隣でプリンが悲しみながら枕についた泥を落としていた。
彼は先程の体育の授業で、ミントの様に箒に乗って飛べるようになったのだが、あろうことか、不覚にもその時彼は彼の大事な枕を落としてしまったのだ。
パタパタパタ
「ぐすっ…どろんこ」
((っ!!))
格好良い彼の可愛い発言に周囲の女子のハートは鷲掴み状態です。
「…元気出してよプリン?洗えば落ちるってそんなの」
ミントが言った。
「そだよー?泣かないでプリンー?」
ミントの反対隣に座っていたココアがプリンを励ました。ちなみにココアも飛べるようになりました。
キーンコーンカーンコーン
「「!」」
始業の鐘が鳴った。
キーンコーンカーンコーン
「…では授業を始めます。教科書の四十六ページを開いて下さい」
黒髪のポリー先生が言うと、生徒達が一斉にページを捲った。
「開きましたか?」
先生が確認すると、
「今日はそこに書いてあるように、"変身魔法"について学習していきたいと思います」
と言った。そして黒板に文字を書き始める先生。
「変身魔法かぁ…!」
ミントが目を輝かせた。
「きゃー!プリンくんの杖になりたーい!」
「「やらしー!!」」
「いやいやむしろ枕に!!」
「「やらしー!!」」
小声で何やら危険な発言をするフルーツ四人組。
「「…」」
それを冷えきった目で見るミントとココア。
「ううう…」
パタパタパタ
プリンはまだ枕についた泥を叩き落としていた。
「…変身魔法とは、"無"の魔法の中でも難易度が非常に高い魔法です」
先生が言った。
「"無属性"の魔法には、どんな種類がありますかミントさん?」
「へ?!」
先生が突然指名したので驚くミント。
「え…えっと…"物質魔法"と"回復魔法"と"呪魂魔法"と"召喚魔法"があります」
「はい。その通りです」
なんとか答えられたので、胸を撫で下ろすミント。
「では変身魔法はどれに当てはまりますかリンゴさん?」
先生が今度はフルーツ四人組のリーダー的存在のリンゴを指した。
「ぶ…物質魔法…?」
自信無さげに答えるリンゴ。
「その通りです。よく出来ましたね」
そう先生が言うと、微笑むリンゴ。
「リンゴさんが言ったように、変身魔法は物質の状態を変化させる魔法です。その物質が、この教科書だったり、自分だったりするワケです」
説明を続ける先生。
「"無属性"の魔法は、物を浮かすことから相手の首をはね…ゴホンッ…様々なものがありますね。そしてそれらの特徴として、解き方を知らないと元に戻せないという点があげられます。。」
何気に怖いことを言う先生。
「変身魔法で皆さんが元に戻れなくなってしまったら洒落になりませんので、まず、皆さんの机の上にある白紙をペンに変えてみましょう」
そう言うと、先生は杖を取り出した。
「では、変化させる物質を変化後の姿に想像しながら、杖を四拍子の指揮ように降ってみて下さい」
すると、
ぽわんっ
先生は見事に白紙をペンに変身させてみせた。
「「おおーっ」」
感動する皆さん。
「では、やってみましょう」
先生が言うと、皆が次々と杖を振り始めた。
ぽわんっ
「「!」」
刹那。変身魔法を軽々とやってのけた人物がいた。それは
「きゃー!凄い凄い凄ーい!!見て見て凄い成功したー!!!!」
ココア。
「素晴らしいですココアさん」
先生が驚いたようにココアを誉めた。
「凄いねココア!」
ミントが言うと
「えへへー♪ありがとミント!」
ココアが返した。
「こうも簡単に上級魔法を…では、ココアさんには一足先に解除魔法を教えます。皆さんはそのまま続けて下さい」
先生が言った。
皆がココアに負けじと机に向き直った。
「はぁ…オレはこれも出来ないのかな…」
ミントが溜め息をつくと、
「でもコレ上級魔法」
プリンが言った。
「上級…魔法?」
ミントが聞き返す。
「じゃあ余計出来ないじゃん!?」
プリンを向きながら突っ込むと
「MPは結構使うぞ?」
プリンが言った。
・・・
・・・・・・
「…じゃあ…もしかしてもしかしてもしかして?」
ミントが言った。
「うむ。もしかしてもしかしてもしかして」
プリンが返す。
「…オレも…出来るかも?!」
ミントが聞いた。
「かもかも」
プリンが言った。
パタパタパタ
枕の泥を落としながら。
「ようし…!」
自信を持てたミントが腕捲りをしながら杖を持った。
「ファイト」
プリンが応援した。
「うん!!」
そしてミントが滑らかに杖を振った。
すると
ボッカアアアアアアアアン
「「!?」」
ミントの机からキノコ型の爆煙が発生した。
教室の皆さんが驚いてミントの方を振り向く。
「は…ははは」
茶色く焦げたミントが黒い煙を口から出すと、後方に倒れた。
「ミントさん!何をしたんですか?!」
先生がミントに駆け寄りながら言った。
「…」
ミントの返事は無い。
「あぅえわわっ…ミントぉ…」
プリンがミントの側にしゃがんだ。
「はぁ…MPが高すぎるというのも、困ったものですね…」
先生が溜め息をつきながら言った。
「皆さんはそのまま続けて下さい。…ではプリンさん、ミントさんを医務室へ運ぶので手伝って下さい」
「うむ。」
先生とプリンがミントを支えながら立ち上がると、教室をあとにした。
「「…」」
静かになる教室。
((…ミントって…凄いんだな))
とか思う皆さん。
「…………………えへへ」
「「?!」」
危険な笑みに皆が後ろを振り向いた。
「えへへへへ♪」
声の主は、ココア。
「ど、どうしたんですかココアさん…?」
サラダが恐る恐る尋ねると
「…変身魔法って…楽しい♪」
ココアが言った。
「それっそれっそれー♪」
ぽわんっぽわんっぽわんっ
教科書と机と観葉植物が招き猫に変身した。
「えへへへへー♪」
ぽわんっぽわんっぽわんっ
今度は椅子と時計とサラダがテディベアに変わる。
…ん?サラダ!?
「えへへへへーえへへ♪」
危険に微笑み、クラスの皆に杖を向けるココア。
「「っ!?」」
戦慄が走る皆さん。
「…次は誰を何にしよっかなァー?」
どす黒いオーラを放つココア。
「こ、ココアさん?!落ち着いて下さい!?キャラが違いますわ?!!!!!」
レモンが言った。
「ななな何が貴方をそんな風にさせたんですの!?」
レモンが言うと、ココアが邪悪に微笑んだ。
「…前回私の出番が無かったからよーーー!!!!」
「「ウチら関係なくない?!!!」」
クラスの皆が突っ込むと、
「関係なくなくなくなくなくなくないわっはっはっ!!」
ココアが言った。
関係ないのか関係なくないのか分かりませんね。
「みーんなみんなみんなっ土偶になっちゃえーーーーーーーーーーーー!!!」
「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!?」」
ぽわわわわわわわわわんっ
教室から絶叫が途絶えると
ゴトゴトゴトゴトっ
っと堅くて重い物が、たくさん床に落ちる音が教室から聞こえてきた。
一体教室で何が起きたのでしょうね?