外伝 日記日和
どうもお久しぶりです。こんばんは。ミントです。
なんか今から外伝始めるみたいですよ。
わあ、楽しみデスネ。
あはははは。
「ミントォ〜!!」
早速登場してくれました眼帯くんことポトフ=フラント十四歳。
まあ、もうすぐ十五歳になりますけどね。
「何、ポトフ?」
「もォ秋だな!」
「うん。秋だね」
「月見しようぜ!!」
・・・。
アナタ、狼男でしょう?
まあ、どうせ月が見たいってワケじゃないんでしょうけど。
「……お団子が食べたいの?」
「ウン♪」
にっこりと笑って元気に頷くポトフ。
夕食の満腹感が消えたから、夜食が欲しくなったみたいですね。
夕食を食べ終わってからまだものの十分も経ってませんけど。
「ないよ」
「えェェえ〜!?」
えええって、当たり前じゃないですか。
そんな都合よくお団子が部屋に置いてあるワケがないし、あったとしても、買ってきたその日に一つ残らずアナタが食べちゃうでしょう?
「やだやだやだァ!!団子食いたァ〜いィ〜!!」
わあ、駄々こね始めちゃいましたよ、この子。
ココアのおかげで夏のダンスパーティー以来、タラシ癖はなくなったみたいなんですけど、その分食意地が強烈になっちゃったので困ったものです。
……しかし、ポトフのあのタラシ癖を治すとは……ココアは凄いですね。
「ミントォ〜団子ォ〜!」
あー煩い。
あ。でも、最近オレ、ポトフを黙らせる方法を発見したんですよ。
「ほい」
「!」
オレが出した手鏡を見て騒ぐのを止めるポトフ。
これがポトフを簡単に黙らせる方法です。
こうすると、ナルシーな彼は、惚れ惚れと御自分のお顔様をお眺めになられるのですよ。
うっわ、俺ってマジで超イケメンじゃね!?
とか思いながら。あはは。
まあ、自分に自信が持てるというコトは、良いコトですよネ。
「……?」
ふと、ポトフの机の上に置いてある小さなノートがオレの目に止まりました。 そう言えば、何度か見たことがあるこのノート。
――日記とか書くようには全然見えないけど……
「……ちょっと中見ていい?」
「おゥいえー」
ちゃんと聞いているのかいないのかはほっといて、まだ自分の顔に見惚れているポトフが、アメリカンに了承してくれたので、オレは遠慮なくそれを見せてもらうコトにしました。
「む?ミント、それは?」
「えっと……ポトフの日記?」
只今の質問は、お風呂上がりのプリン=アラモードくん十四歳から。
ちなみに、これが日記だというコトは、表紙に書いてあったからすぐに分かりました。
「……ミント……」
「あ、もちろん、ちゃんと本人からの了承ももらったよ?」
ジトッとした目をこちら向けたプリンに、オレはさらりとそう言いました。
「む?そうなのか?」
「うん。プリンも見る?」
「う……うむ……」
枕を抱え、フローラルの香りを漂わせている彼も、なんだかんだ言ってポトフの日記に興味があるのか、こくりと頷いてオレの隣にやって来ました。
「……あれ?真っ白」
早速ノートの適当なページを捲ってみると、何も書いていない真っ白なページが顔を出しました。
「む。これは“メモレコ”だ」
「めもれこ?」
プリンが言った言葉を聞き返すオレ。
「うむ。日記のように思い出を録画することが出来る道具だ」
「へえ……どうやって見るの?」
「使用者が決めたパスワードを言えばいい」
オレの質問に、プリンはメモレコの上に右手を乗せてさらりと答えました。
「成程。ポト―…」
「……生肉」
『パスワードを確認しまシタ』
オレが本人にパスワードを聞く前に、いとも容易くそれを言い当てたプリン。
メモレコがプシュッと音を立てた次の瞬間、オレとプリンはセピア色の世界に立っていました。
≫≫≫
『大丈夫……キミは何があっても俺が守るよ、アリエッタ……』
『ボブ……!!』
そんな映画を見て、
「うふふ〜素敵ね〜」
金髪のお姉さんがうっとりしながらそう言った。
「すてき?」
その隣でサッカーボールを抱えながら小首を傾げるポトフくん六歳。
「ええ。うふふ〜私も言われてみたいわ〜」
「……ふゥん……」
危ない笑みを溢しながら言った言葉に、ポトフはなにかを学習したように頷いた。
「お昼ごはん出来たよ〜」
「「はーい」」
その時、キッチンからお兄さんの声が聞こえてきたので、ビデオを止めると、二人はそちらに移動した。
「はい、ポトフくん。好きなだけ食べてね!」
「うん!」
ポトフは、微笑みながらお兄さんが言った言葉に元気よく頷いた後、
「あ、ね、おにィさん」
「? 何、ポトフくん?」
「今日、おねェさんの誕生日だよね?」
と、お姉さんに聞こえないように、お兄さんに小さな声でそう言った。
「………………………ぁ」
それを聞いて、さっと顔を青くするお兄さん。
「……おにィさん、もしかしてわすれてたの?」
「そっ、そんなワケ―……ありますね。本当ゴメン、エリア……」
そして、お兄さんは発言の途中で罪を認めた。
「あっはっはっ!あ、だからね、ごはん食べおわったらいっしょにおかいものに行こう?」
「うん。もちろんいいよ……って、またおかわり?」
「食べざかりだもん!」
≫≫≫
(……成程。ポトフがキザリストになったのはエリアさんのせいで、大食いになったのはソラさんのせいなんだね?)
(ぶう……なんかそれカッコイイ……)
(え?……ああ、じゃあ、プリンにはネムリストの称号をあげるよ)
(わー!ありがとう、ミント!)
(ハハハハハ)
≫≫≫
「うーん……おねェさんの誕生日のプレゼント、なにがいいかなァ〜?」
首を捻りながらテクテク歩くポトフ。
「ね、おにィさんはなにがいいと思う?」
お兄さんに助けを求める為に、ポトフは立ち止まって振り向いた。
「って……あれ?」
「だぁれ?」
が、そこにはお兄さんの代わりに、右半分が赤く、左半分が緑色に染まった髪を隠す為に大きめの帽子を被っている同い年くらいの少年が立っていた。
「あ、ご、ごめんなさい。勝手に入っちゃって……」
彼の存在と同時に、自分がいつの間にかどこかの花壇にいることに気が付いたポトフは、象の形をしたじょうろを持っている彼にペコリと謝った。
「ううん。べつにいいよ」
少年は快くポトフを許すと、
「ね、キミ、プレゼント探してるの?」
と、ポトフに尋ねた。
「え?う、うん」
「じゃあ、これなんかどう?」
「これは……バラ?」
少年が手渡した赤い薔薇を見て、ポトフが小首を傾げながらそう言った。
「うん。バラの花ことばはね、“じょーねつてきでかんびなあいじょー”なんだって」
「じょーねつ……てき?」
「ええと、つまり……」
花言葉の意味が分からない様子のポトフに、
「バラは大すきな人にあげるお花なの!」
少年はにっこりと笑ってそう言った。
「……え?」
彼の言葉に頬を紅潮させるポトフ。
どうやらポトフは、彼が男の子だということに気付いていないようだ。
「あ、もうこんな時間!せんたくものとりこまなくちゃ!」
そんなポトフの反応にまったく気付いていない少年は、腕時計を見てそう言った後、
「じゃあ、ばいばい!」
と、ポトフに手を振りながら言った。
「え!?あ、ち、ちょっとまって!!」
「?」
ポトフは去ろうとした彼を慌てて呼び止めると、
「あ……ありがとう!」
頬を赤くしながらにこっと笑って彼にお礼を言った。
「あはは どういたしまして」
そう言って笑い返した少年は、なかなか足が速く、すぐに見えなくなってしまった。
「あ、こんな所にいたの、ポトフくん?勝手にどこか行っちゃ駄目って―……」
その少年と入れ替わるようなタイミングで現れたお兄さんは、
「わあ……綺麗な花壇だね〜」
沢山の色鮮やかな花が咲き乱れている少年の花壇を見てそう言った。
「……おにィさん、」
「ん?」
そんなお兄さんに、ポトフは少年が走り去っていった道を見つめたまま小さく呟いた。
「……俺、こくはくされちゃった……」
「へ!?」
≫≫≫
((・・・))
(ん?待て待て?オレ全ッ然憶えてないんだけど、つまり、ポトフがやたら女子に薔薇あげるようになったのはオレのせいなの?)
(ふむ。しかも、あいつの初恋の相手はミントらしいな)
(……余計なコト言わないでくれるかな、プリン?)
(ふふふふふ)
≫≫≫
「誕生日おめでとう、エリア」
「おめでとォ!!」
家に帰ったお兄さんとポトフが、留守番をしていたお姉さんに言った。
「わあ!ちゃんと憶えててくれたの、二人とも?」
二人の祝福の言葉に、顔をぱあっと明るくするお姉さん。
「え!?あ、も、もちろんだよ!!」
「ウソつ―…」
「ファイア」
ポトフがそう言いかけると、お兄さんの手から、お姉さんからは見えない絶妙な角度で火炎弾が発射された。
「? ポトフくん、なんか焦げてない?」
「わあ、本当だ。どうしたの、ポトフくん?」
一瞬のうちに真っ黒に焦げたポトフを見て、小首を傾げるお姉さんと腹黒く微笑むお兄さん。
「ご、ご、ご、ごめんなさい!!もうしません!!」
お兄さんの殺意が篭ったとっても素敵な笑みを見て、瞬時にその笑みの意味を悟るポトフ。
――次に余計なことを言ったら、命の保証は出来ない、と。
「……?ふふっ♪どんなプレゼントかしら?」
何故ポトフが急に謝ったのかよく分からなかったけれど、お姉さんはそう言いながらポトフがくれたプレゼントの包み紙を丁寧に開いた。
「「・・・」」
そこには、“初心者の為の料理ブック”なる本が入っていた。
「……うふふっ 何が言いたいのかしら、ポトフくん?」
「ぽ、ポトフくん?あの薔薇をあげるんじゃなかったの?」
それを見て、爽やかに微笑むお姉さんと顔を青くするお兄さん。
「え?だってあれは……」
ポトフはお兄さんの言葉に顔を赤らめて語尾を濁した後、
「そ、それにほら!おねェさんにはそっちの方が絶対必要で―…」
と、言っている途中で
「ペリッシュオーシャンんんん!!」
お姉さんの水系最大魔法に呑み込まれていった。
≫≫≫
「「・・・」」
ドメスティックヴァイオレンスなポトフの家庭を垣間見て、
「ん?どしたァ?」
((今度からはもうちょっと優しくしてあげよう……))
オレとプリンはそんなコトを思うのでした。
いかがでしたでしょうか。新連載の方も覗いていただけたら嬉しいです☆(こらご愛読ありがとうございました!