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魔法使いの捜査官  作者: ハチワレ
学院編
13/17

第13話 自己紹介

「———で、あるからして、、今日という晴れやかな日も、皆さんの日々の行いの結果デスネ!

この校外学習を通じて新たな仲間との友情を深めあ———」


(長い。あくびでそう…)


偉い先生の退屈で長い話と共に、とうとう春のオリエンテーリングが始まる。



″6人班まで後1人!!!″は、意外とあっけなく終わった。


時は、ファルムスと知り合った日の帰り道まで遡る——。


今日はソルベール先生からの呼び出しはない。

寮までレンと帰ることにした。

せっかくなので、ファルムスも誘おうとしたのだけれど…


救護室にいたのはセキ校医だけだった。


「ファルムスなら、帰ったぞ。」


「そうですか…」


「何があったのかは結局話してはくれなかったよ。

でも昼食から帰ってきたあの子は表情が和らいでいたんだ。

きっと、2人には気を許したんだろう。」


セキ校医は、少しだけ目を細めた。


「グランデ、モンテール、あの子の味方になってやってくれ。

寮とはいえ、気をつけて帰れよ。」



==================================================



「これで5人。あと1人はどうしようか。

クラスで庶民出の人、探してみる?」


「そうそういないわよ。

貴族かどうかは、所作を見れば大方わかるもの。」


「やぁ、今朝は大変みたいだったね。」


「アルト」


(アルトはあの後、大丈夫だったのかな?)


「人を担ぎながらあんなに速く移動できるなんて、学院にクマが出たのかと思ったよ。君の魔法って怪力なの?」


は?


「な、何ぅを…!?」


確かに私は、村で育ちだし、力も筋肉もある方だろう。

つい先週だって、山で猪に追いかけられてた。

しかし、人を背負っても全速力で走れたのはレンが軽量化の魔法をかけてくれたおかげだ。


笑顔のせいで嫌味なのか天然なのかわからない。

でも、きっと前者だ。


「ご機嫌麗しゅう、モンテール嬢。

私も花園を守る騎士として、班の一員に加えていただけないでしょうか。」


人をクマ呼びした人間とは思えないほど、優美な所作でレンの手を取ってお辞儀をする。

レンは一瞬目を見開き、頬をポッと桃色に染めた。


騙されるな、レン。


「もちろんですわ。テュームモンク様。

貴殿と同じ班なんて、とても心強いです。

では、そのように先生にも伝えておきますね。」


「ねぇ、私には?」


2人は私を視界に入れないまま話を続ける。


「ありがとう。よろしく頼むよ。」


「私に何か言うことないの?」


「クマさんの魔法、頼りにしてるよ。」


「クマじゃないっ!」


彼はローブをはためかせながら、踵を返して去っていった。



==================================================



別に嫌なわけじゃない。

班にだって入りたいなら入れば良い。


ただ——態度が癪にさわる。


教室で遠くから見るアルトは、いつも人に囲まれ、微笑みの絶えない紳士だ。

だが、私と話した2回とも紳士さはこれっぽちもなかった。


馬乗りになったことを怒っているのだろうか。仮にそうだとしても謝る気はない。


学院長の話もやっと終わり、いよいよオリエンテーリングが始まる。


「最も優秀な成績を収めた班には、学院長先生から願いを叶える権利が贈られます。

皆さん、頑張ってください。」


足元が太陽の光を反射した雪原のように白くなった。


「えっ———」


光は一瞬で消え、私たちは傾斜のある芝生の上にいた。

何が起こったの?


「あ、あれ…?」


「スタート位置は別々、ということなんだろう。

結構、大掛かりだな。」


アルトは周りを見渡していた。


「とりあえず、自己紹介と方向性を決めましょう。

私は、レン・モンテール。魔法適性は、念力。影操術が得意よ。

異議がなければこの班の班長を務めるわ。」


「よく言うよ。異議なんて言わせないくせに。」


「あら、意見が言えないことを棚に上げて、レディのせい?

おば様がお聞きしたら泣くわよ、ユート。」


「うるせえよ。

俺はユート・グレズリー。俺も適性は念力だ。

得意魔法は重力系。俺の体重の2倍以内の重量ならなんでも持てるぞ。

好きなものは筋肉だ。

錬金令嬢とジンとはガキの頃から一緒にいる。よろしグッ!!」


背後からレンが拳で殴る。ユートは痛そうに頭を撫でていた。


「今のはユートが悪い。」


ジーンはそう言った後、左手の親指と人差し指を口に当てて、空に届くような高い指笛を吹いた。


「僕の名前は、ジーン・セル。手のかかる幼馴染たちにはジンって呼ばれてる。

魔法適性は、生理系のフェロモン。人間以外の動物相手にしか効かないから、あまり汎用性は高くないんだ。

あ、きた。」


木々のカーテンが旗めいたような青空から、綺麗な青羽の鳥が舞い降りる。

ジンが差し出した人差し指に止まって葉っぱを差し出した。


よく見ると枇杷の葉だ。


「ありがとう。

ほら、ユート。天然の鎮痛薬だ。」


「今のも魔法なの?」


「もちろん。口笛に魔力を乗せたんだよ。」


汎用性高いじゃん。魔法ってほんと凄い。


「次、メル行きなさいよ。」


私の番か。

んー、どうしよう…魔法のくだりないとおかしいよね。


「メル・グランテです。魔法適性は、まだ分からなくて、ソルベール先生に調べてもらっている最中です。

ベルン州出身です。村の近くにも山があったから、なんだか今日は懐かしく感じてます。」


空気がシーンと静まり返る。


やっぱり、魔法適性がわからないなんておかしいよね。

それとも、出身のことまで言わなくてもよかったかな?

でも、魔法に変わる話題があった方が良かっただろうし…


悶々とする中、口を開いたのは、慈愛で満ちた表情をしたアルトだった。


「…山で育ったなんて……本当にクマだったんだね。」


まだ言うか。


ユートとジンが不思議そうな顔でこちらを見る。


「魔法適性がない?その年でか?」


「魔力適性検査はどうしたの?

あれは平民も義務だよね?」


この国の国民は、5歳になると、教会の主催する魔力の適性検査を受けることが義務付けられている。

その結果によってどれくらい魔力を貯蔵できる体なのか、魔力の適性は何かが判明するのだ。


「受けたし、魔力もあるって言われた。

でもほとんど無いに等しいって。」


「よく、この学院入れたな。」


「ユート!!」


目を見開きながら言ったユートをレンが強く嗜める。


「いや、変な意味じゃなくて、純粋に。

騎士科ならまだしも、所属は俺たちと同じ魔法科だろ?」


「うん。まぁ、色々あって。

次ファルムス行きなよ。」


説明しても良いけど、長くなるのが面倒だった。


私に振られると、ファルムスは小さな体をさらに小さく萎縮して、辿々しく話し始めた。


「あ…はい。わ、わたしは、ファルムスです。

魔法適性は、創造です。と言っても幻想しかできません。

みなさんの…足手纏いに、ならないように、がんばります……。」


「あなた…適性、創造だったの?」


「すげーじゃん!

しかも幻想ができるって、相当魔力が多いんじゃ無いか?」


「い、いえ。全然です。

お使えしているお嬢様からも幻想なんて、役に立たないってよく言われていますし…。」


え…そのお嬢様って人、ちょっとひどいね。


「そろそろ移動しないかい?

他の班も動き出しているだろうし。」


今まで聞き役だったアルトが立ち上がった。


「後はアルトだけじゃない。」


アルトは、少しむすっとした顔で北へ歩き出しながら言った。


「アルト・テュームモンク。僕の魔法も幻想だよ。」


髪がそよ風に揺れるかっこいい後ろ姿に向かって、慈愛に満ちた微笑みと声で言ってやった。


「アルト、そっちじゃないよ。」


あけましておめでとうございます。

馬は大好きな動物なので、今年は特に良い年にしたいなと思っておりますウマ。


時代劇の美脚白馬サラブレットを見ると、「この時代にこんなダンディ西洋種の馬はいねーよ。」と、心の中で突っ込まず、楽しめる大人になりたいです…

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