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魔法使いの捜査官  作者: ハチワレ
学院編
11/17

第11話 庭園で始まる出会い(前編)

「ちょっと、メル。」


「ん?」


「あなた、本当に大丈夫なの?

昨日帰ってきてから顔色が悪いわよ。」


学校へと並んで歩くレンが私の顔を覗き込む。

心配そうに覗き込むその顔は、芸術作品のように綺麗だった。


「んー、昨日は採血だったから、少し血が足りないのかも。

大丈夫だよ。朝ごはんも食べたし。」


レンは同室の仲間だが、昨日襲われたことは言わないようにした。

無理に心配させたくないし、もしかしたら巻き込む可能性もある。

表情に出ないように気をつけなければ。


「研究対象って、大変ね。

あまり無理しちゃダメよ。」


「うん。ありがとう。」


しかし、どうも血の赤を思い出してしまう。

もしかしたら…有りえた未来と昨日の採血の景色を重ねてしまうのだ。

馬鹿馬鹿しいとは思いつつもフラッシュバックしてしまう。


「ねぇ、レン。たまには庭園を通りながら行かない?」


何か、綺麗な記憶に上書きしよう。そうすればきっと気分も晴れるはずだ。


「私は構わないけど、どうして?」


「今日はせっかく雲ひとつない青空だから、朝のバラが綺麗だろうなーって思って。」



=======================================



庭園の花々は、本当に綺麗だった。

チューリップにブロッサム…ムスカリ、フリージア、勿忘草…名前がわからないものも多くある。

バラはまだ咲きかけや蕾が多かったが、朝露の滴る姿は満開の元は違った雅さがあった。

朝露に冷やされた空気に、甘い香りが際立つ。


「うわぁ、朝の庭園って良いわね。

他に人もいないし、花も生き生きしているように見える。」


「ほんと。

遠回りにはなるけど、これから朝は庭園を通って行こうか。」


「いいわね。私、この空間が好きになったわ。

でも、学院に向かうと思うと、気が重いわね。」


「オリエンテーションの班、どうしよっか?あと2人。」


「うーん…もうほとんど決まってるだろうし。

そもそもほとんどが貴族のこの学校で庶民と組む物好き、そう何人もいないわよ。」




「うっッ!!!」


「自分の立場をわきまえなさい!!!!」


いきなり、垣根の向こうから女性の大声がした。


「何!?」


「行ってみましょう。」


2人で声の出所へ向かって走ると、ローブ姿の小柄な女の子が1人倒れていた。


「どうしたの?

大丈夫?」


「う、うぅぅう…」


うめき声しか出せないのか、鳩尾(みぞおち)を両手で押さえ悶えている。

閉じた目には涙が溢れていた。


腹痛だろうか。

いや、違う。ここにはもう1人いた。

さっきの叫び声からも考えると、多分…


「救護室に運びましょう!

少しでも軽くなるよう魔法をかけるわ。メル、足を持って!」


「待って、私がおんぶする。

レンは先に救護室へ行って先生を呼んできて。」


腹部を抑えて悶えているのに、腹側を伸ばさない方が良いだろう。

それに、登校時間で学生も大勢いる。彼女の名誉のためにも顔や姿が判別しにくい体勢の方が良い。


「わかったわ。

軽くしてあるとはいえ、気をつけてね。」


「うん、ありがとう。」


「今から、救護室行きますよー。

私におぶされるかな?」


女子学生は、少しずつ体を動かして私の肩へ手をかける。


「よっこいしょ。」この言葉がいらないくらい、軽かった。言ったけど。


(人が背中にいると思えない。魔法ってすごい。)


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