第10話 採血
研究室での気まずい沈黙を破ったのは、アルトだった。
「さっき、どうやって依頼者を言い当てた?
あんた、何者?」
「…別に、特別なことはしてないよ。ただの勘が良い庶民。
ソルベール先生は魔法だっていうけど、私の魔力は無いに等しいし。
だから研究対象として調べて貰ってるの。
ってな訳で、愛人じゃない。
…ねぇ、その…大丈夫、なの?」
馬乗りになるほど腹が立っていたのに…さっきの後だと、余り責め立てられなくなる。
「別に、貴族なら珍しくもないさ。
巻き込んで悪かった。」
そう言い残して彼は研究室から出ていった。
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「いやー。巻き込まれて不運だったね。」
ソルベール先生は笑いながら、私の腕に針を刺す。
口は動いても、手元は安定している。痛みもほとんど無かった。
「珍しいね。目を逸らす人がほとんどなのに。」
「父は医者でしたから。
診療所の手伝いで血を見るのは慣れてます。」
採血管の中を新鮮で温かい血が登ってく。
——もしあの時、先生が来てくれなかったら…
私が見ていた景色は、一面この色だったのだろう。
「アルトさんってどんな生徒なんですか?
どうしてあんなのに狙われているんです?」
「彼はアルト・テュームモンク。
君のクラスメートだよ。」
「答えになってません。」
「僕は研究者であり教員でもある。
おいそれと生徒の個人情報は話せない。
なによりアルト君が望んでいない。」
「じゃあ、あの不審者はどうなったんですか?」
「警備隊に渡してきたよ。
きっと騎士科の授業で教材にされるんじゃないかな?」
「教材?」
「この学院には、魔法科の他に騎士科があるからね。
警備を担っているのも騎士科の上級生たちだよ。」
確かに。警備兵がいるのは知っていたが、貴族が通っているからだと思っていた。
授業と兼ねていたんだね。
「本物の不審者なんて、警備が厳重な学院には滅多に出ない。
きっと、騎士科の生徒相手に尋問の実践授業に使われるよ。
そこで見事依頼者の情報が引き出せたら、この件もきっと防げるよ。」
私の突拍子もない話では、証拠にならない。証言にも信憑性なんてない。
そもそも…私が間違っているかもしれない。
「さぁ、今日は採血だけで終わりだ。
明後日には結果が出るよ。
いろんなことに巻き込まれた上、血を抜いたんだ。
今日明日はゆっくり休みなさい。」
「はい。」
「…私はさっき、研究員で教員だといった。
…これはえこ贔屓と取られても仕方ない私情だけれど、アルト君を勘違いしないでやってほしい。
守るためには、突き放すしかないと考えてる不器用な子なんだ。」
インフルA型に感染しました。。。。
友人数人も感染したらしくて、マスクの重要性とA型の感染力の強さに慄いてます。
でも、お昼ご飯時は…どうしようもねーよ。。。勘弁してくれ、インフルさん。。。。




