2 新郎の友達
新郎の友達は、はっきり言って、そこそこのイケメン。本イケメンではない。
名前は全く覚えていないので、新郎友人Aとしておこう。
Aとは結婚式の2次会の会場を決めるときに会ったくらいで、あとは電話やメールでやり取りをしていた。当時はまだラインなんてなく、メールもポチポチ打つタイプだった。
子持ちがそうそう家をあけられるわけもなく、私がアイデアを出して向こうが手配をするというやり取りを、ひたすら繰り返した。
「一日くらいでてこれない?会って準備したら早いと思うんだけど。」
と言われたが、「むり!」の一言で終わらせていた。今から考えてもなんてかわいげのない・・・。
自分の中では、2次会の会場を決めるために、仕方なく1日付き合ったのだから、あとは在宅で済ませたい。結婚式当日も家を空けることになるのだから、そうやすやすと出かける必要性はないと思っていた。
母は「息抜きも必要なんだから、たまには外にでてきたら?」と言ってはくれてはいたが、自分の都合で片親にしてしまった手前、子供を置いて出る気にはならなかった。
ママ友同士の飲み会なんて別にいかなくてもいいし、大体、子供置いてまで飲みたいという気持ちが分からなかった。職場の付き合いも歓送迎会と忘年会に顔を出せば十分。友達と出かけたいときは「子供も連れて行っていいかなあ?」か「うちで飲まない?」という必殺技が使えたから、子供を置いてどこかに出かけたいという気持ちもなかった。
実際、電話やメールのやり取りだけで、結婚式の2次会はとてもうまくいったし、何の問題もなかった。
2次会中、やたら、新郎友人がべらべら話しかけてくるのがうざかったが・・・。
「話しかける暇があれば、受付ちゃんとやれや!」
と怒鳴ってやりたかったが、友達のおめでたい門出を邪魔したくはない。そこで、さっきからちらちらとAのことを見ていた独身の新婦友人2人組に声をかけ、受付を途中で変わってもらった。
自由になった私は、ポラロイドカメラで来場者の写真を撮り、せっせとアルバムに入れて回った。笑いをとり盛り上げ、私は大満足で2次会を終えた。
最後の支払いをして、「時間でーす」とみんなを追い出し、酔っぱらいをタクシーに突っ込んで、結婚式は終わった。
1次会の幹事と2次会の幹事でもう一軒飲みに行こうとなったが、「子供がまってるから行かない」とサクッと帰ることにした。
まさか、翌日Aから電話が来るとは思っていなかった。
「なに?なんか不備でもあった?」
そう尋ねると
「いや、あのさ、今度さ。一緒に出掛けない?」
との返答。
「なんで?もう結婚式終わったじゃん?会場にはなんの問題もなかったんでしょ?」
「あの・・・。デートの誘いなんだけどな。」
・・・ああああああ!そういうことおおお?
断じていうが、しらばっくれているわけではない。あまりにも恋愛から縁遠くなっていると、こうなるのだ。
「あ、ああ。・・・まあ、ひと月先でよければ。」
昨日出かけたから、次に会えるのは一か月後になるけどいいかとたずねると、Aは快諾してくれた。
時間は後日決めることにした。