ずるい女
満たされない思いから緩やかに始まったつながりは、時を経るごとにどんどん太くなっていく。
1週間に一回だった通話はやがて毎日になり、1時間が2時間に、2時間が3時間に。一緒に勉強しようという口実で始まった作業通話だったはずが、いつの間にかただ時間を共有するためのものに。
ベッドに寝転がりながら相手の他愛もない話に適当な相槌を打って、くすくすと笑いを交わす。テスト期間も終わり、気がつけば机に向かっている日の方が少なくなった。
気がついていて、それでも何にもわかっていないような顔をして白々しくこのぬるま湯を享受している。
恋愛したいね、なんて。誰かいないかな、なんて嘯いて。
わかっているのにあえて裏拍を取るような感じで、え、どんな子がいいの?紹介しようか?君にはこんな子が合いそうだよね、って真剣なフリをしてことばあそびばかり。
友達と遊ぶのと、デートの違いってなんだと思う、と私が尋ねたときに、男が下心0%でサシで遊びに行く訳ないだろ、って答えた君はどんな気持ちだったんでしょうか。
俺はきみのこと、かなり好きだけどな、と言って、人間として仲良くなりたい人の中に私の名前をあげた君は、どんな気持ちだったんでしょうか。
大事だよ。でも、大事だからこそ失いたくないってよくあることでしょう?
一番気兼ねなくなんでも話せて、一番一緒にいて楽な人。名前をつけてしまったら、未来に終わりが見えるような気がして。
ずるいよね?わかってる。でも、君に人生を預ける覚悟が、君の人生を預かる覚悟が、まだできないの。
重い?拗らせてる?そうかもね。でも、真剣だと言ってほしいな。
いつか君が離れていって、私は後悔するのかもね?
でも、それでも。
もう少し、もうすこしだけ、このままで。