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つぶやき  作者: 回夜彩芽
4/5

人生キャンセル界隈

一人じゃないと思いたくてtwitterを彷徨った経験から、いち自死遺族として、いち機能不全家族育ちとしての想いや考えを公表することにしました。このエピソードの冒頭部分以外は当時心の整理のために書いていた日記もどきほぼ原文ママ。

2週間ぶりに開いたTwitter、あいつのアカウント。

1ヶ月近く更新されていなかったはずのそこに新たな投稿が一つ。時間は21時間前。

手を振る絵文字が1つだけ。

プロフィールを見れば、ピンのマークの後ろに人生キャンセル界隈の文字。

画面のスクリーンショットを添えて母にメッセージを送る。


あいつ生きてる?


私には、二つ下の弟がいる。

手先が器用で工作や料理がうまく、気も遣える人間だった。

兄弟仲も、それほど悪くなかったとは思う。一緒に悪巧みをしたり、お土産やプレゼントを送り合う程度にはうまくやっていた。

それなりに友達もいて楽しくやっていたように見えたあいつが、部屋にこもって薬を飲むようになったのはいつのことだろうか。おそらく、高校3年に上がった頃からであったと思う。

受験のストレスのためであるのか、それとも学校生活に原因であったのかはわからないが、時間があれば自室でゲームや工作に没頭して、家族の誘い以外で買い物に行くことなどなかったあいつが、夏休みに帰ってみると一人でふらりと出掛けては何かをポケットに隠して帰ってくるようになり、家族の買い物についてくることはなくなっていた。机の上のダイヤモンドアートのビーズが頭痛薬の瓶に色ごとに仕分けられており、空き瓶が何本あるかなど数えることも難しくなっていた。


2年、たった2年である。

2年前には確実に世の中の他の人間と同じように、普通の人間として社会生活を送っていたように見えた人間が、坂道を転げ落ちるように、あっという間に永遠の闇へと自ら飛び込んでいった。

心の中まではわからないから、ずっと苦しんでいたのかもしれないけれど、少なくとも表面上は変わってしまったあいつに戸惑って接し方を見つけ兼ねている間に、命はあっという間にこの手から零れ落ちていった。踏み込んであいつに不快な思いをさせるのを心配して、いや、ただ自分が口を出すことであいつに嫌われることが怖かったのだと思う。両親よりは私に対しての方が話しやすいだろうからこの立ち位置を保とう、と言って自分の行動を正当化して。保身に走った私の、私たち家族のせいであいつはこの世から一抜けを決めたのである。


正直、私は自ら命を断つまでの2年間のあいつをよく知らない。

我が身可愛さに物分かりの良いふりをしながら距離をとった愚かな姉は、事態を甘く見てあいつのことを知ろうともしなかった。あいつが死ぬ前に知っていたのは、一人暮らしの家に彼女を連れ込んで一緒に住んでいるらしいということだけである。

日記(?)なのに物語調になっていたりするのはくせなので気にしないでください...

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