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妹の嘘を信じた婚約者から責められたうえ婚約破棄されましたが、救いの手が差し伸べられました!? ~再会から幕開ける希望ある未来への道~  作者: 四季


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20話「これから先も」

 エーリオは当面薄暗い一室に監禁されることに決まった。

 そしてそこで再教育を施されることとなる。

 彼は紛れもなく王子だ。そこに間違いはない。ただ、王子としてなすべきことを理解できておらず、現時点ではお世辞にも王子という位に相応しい男ではない。


「これから再教育いたしますので、よろしくお願いしますね」

「ま、待て! 勝手なことを言うな。そんな勝手な話、通るわけがないだろう。俺は王子だぞ!?」

「ですから、そのご身分に相応しいお方にすべく再教育するという話なのです」

「何だと!? 俺は既に王子に相応しい男じゃないか!!」

「そういうところですよ。自分のことしか考えない言動、周囲の思いなど少しも気にかけない、そういったところが貴方を王子という位に相応しくない人間にしているのです」


 以降、エーリオは自由を失った。


 彼はもう一人の人間ではない。

 そこまで言うかのように。

 再教育は彼の自由や選択のほとんどすべてに制限をかけるものだ。


 だがそれも仕方のないこと。


 なんせ彼はこれまで自分の選択のせいで周囲に大変な迷惑をかけてきたのだから……。


 彼が自由を行使すること、それはつまり、周りに迷惑をかけることに直結している。少なくとも今のままでは。なので一旦すべてを奪われる経験をすることが必要。それこそが今の彼に最も必要な経験である。


 自由を、選択を、失って――初めて見えてくるものもあるだろう。


 とはいえ彼のことだから、今はまだ、これから自分に襲いかかる恐ろしい罰の日々には気づいていないのだろうが……。



 ◆



「妹さん亡くなられたようだね」


 ある朝、いつものように食事をしていると、ベリッツォが話しかけてきた。


「ローズ?」

「うん」

「いつかはそうなるかなって思っていたわ」

「処刑されたってさ」


 今朝のヨーグルトはとても美味しい。

 爽やかな酸味と果物の柔らかな甘み。


「そう……でも仕方ないわね、かなり迷惑をかけていたみたいだし」

「残念に思う?」

「いえ。冷たいようだけれど思わないわ。だって彼女は私を傷つけた張本人なんだもの」


 本当のことを言って冷ややかな人間であると幻滅されるならそれはそれで仕方のないことだ。


 彼に嘘はつきたくない。

 なぜなら彼は大切な存在だから。


 ゆえに、飾ることのないありのままの答えを述べる。


「私、彼女が嫌いなの」


 ここで嘘をついて善人ぶっても何の意味もない、そう思うから。


「……そっか」

「冷たい人って引いた?」

「いや、そんなことない。妹さん嘘つきだったし。姉を陥れるような人だし。ダリアが言ってること分かるよ」

「ありがと」

「綺麗事だけしか言わない人も多いけどダリアはそうじゃない。嫌なことは嫌だって言う。そういうところも好きだな、僕は」


 そう言ってベリッツォは微笑んだ。


「僕たちはこれから先もずっと仲良しでいよう」

「ええもちろん」

「そして国のため民のために――」

「生きましょう。数多の幸福のために、より良い未来のために」


 手を取り合って。

 傍で支え合って。


 私たちは幸せに生きてゆく。


 これから先もずっと。



◆終わり◆

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