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2話「現れたその人は」

「ダリア!?」


 背後から現れたのは一人の青年だった。

 しかもその青年は見たことのある人物であった。


「……何やってんだ?」


 そう、その青年は、ベリッツォというよく見知った人物だったのである。


「ベリッツォ!?」

「久しぶり」

「どうして貴方がここに」

「いや、たまたまさ、今日ここに来ててさ。それで偶然話聞いてたらややこしいことになっているみたいだなって気づいて」


 ベリッツォとは昔住んでいる地域がわりと近かった。それでよく一緒に遊んでいた。子ども時代の友人の中ではかなり親しい部類だったのだ。

 しかしある時彼が隣国の高貴な家柄の血を引いていることが判明して。

 そこから状況は大幅に変化することとなり、その第一歩として、彼は一家で引っ越すことになってしまったのだった。


「何があった?」

「ええと……そこの彼、殿下と婚約していたのだけれど……急に婚約破棄宣言をされてしまって」


 少しそんな風にしてベリッツォと喋っていると。


「いきなり出てきて、何なんだ! お前! 何者なんだ!」


 エーリオが急に口を挟んできた。


「お前、ダリアとできていたのか!? ……はっ、なるほどそういうことか。分かったぞ。お前ら! 浮気していたのだな!」


 明らかに苛立っている様子だ。

 私を捨てたいのなら私が他の誰と親しくしていたって無視しておけばいいのに。


 ……というか、まず、私とベリッツォはそういう関係ではないし。


 そもそもおかしいだろう。

 もうずっとこの国にいなかった彼と親しくなんてできているわけがないだろう。


「偉大なる俺と婚約しておきながら! 他の男と親しくなっているなんて! 悪行の極みだぞ!」

「違います」

「はぁぁ……? ふざけんな! お前! いい加減にしろよダリア!」

「違います! 私と彼は昔よく遊んでいただけで、それ以上の関係ではありません」


 説明するけれど。

 目の前の心乱れた王子は冷静さを取り戻さない。


「浮気だろおおおおおお!!」


 彼は異様なほどに取り乱していた。


 なぜそこまで荒れる? 婚約破棄するということは、私のことは嫌いということだろう。なのになぜ今さら浮気だなんだと言って怒り出すのか? いや、そもそも浮気なんて少しもしていないのだけれど。だが、もしそうだとしても、好都合くらいに思えばいいところだろうに。


「そうではありません」

「浮気だろぉが!!」


 エーリオは即座に返してくる、叫ぶような言い方で。


「落ち着いてください。あと、私は浮気などしていません」


 取り敢えず冷静になればいいのに、と思うのだけれど。


「なぜだ! 裏でずっと付き合っていたんだろ!? そうだろう!?」


 彼はどこまでも心乱されていた。


「まさか。そんなわけないではないですか。これまでにそのような情報がありましたか?」

「ない……だ、だが、隠していたのだろう!?」

「隠してなんていません」

「嘘をつくな! 分かっているんだ、もう、すべて分かっているんだ。その男と浮気していたのだろう!?」


 ――と、そこへ。


「エーリオさん、貴方は勘違いされています」


 ベリッツォが間に入ってくれた。


「はぁ!?」

「僕と彼女は単なる昔の友人です」

「友人!? ふざけるな、そういう関係なんだろうが!!」

「冷静になってください」

「はああ!? 冷静に、だと? 無理に決まってんだろうが! ふざけんな!!」


 しかしエーリオの怒りは収まらない。

 私に対して心ないことをすぐに言ってくる彼だが、どうやら、ベリッツォに対してであっても大差ないような振る舞いをするようだ。


「いずれにせよ、ダリアさんはもう貴方の婚約者ではないということですよね」

「は?」

「婚約破棄なさったのですよね」

「ま、そうだが……」


 では、と、ベリッツォは切り出す。


「なんにせよ、貴方はもうダリアさんとは関係ないということですね」

「待て! それは話が飛躍し過ぎているだろう!」

「そうではないのですか?」

「当たり前だ! ダリアは俺の婚約者だろうが! お前なんざに俺ら二人の前に出てくる権利はない!」


 エーリオは必死に言うけれど滅茶苦茶なことを言ってしまっている。


 基本的に、とにかく矛盾が多いのだ、彼は。だから何か言うたびにさらにおかしなことになってしまっている。矛盾に矛盾が重なって。もはやどうしようもないような状態になってしまっている。


「それは違いますね。今はもう、ダリアさんは貴方の婚約者ではない。婚約破棄を宣言なさったのですから。……そうでしょう?」

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