17話「もはや止められない」
城で働く女性たち、そしてそれに共鳴し力を貸すことを決めた付近の男性たち、それから国の未来を案じていた軍の者など――それまでは敢えて集まることのなかった者たちが結集し、ローズ及びそれを護ろうとするエーリオを止めるべく動き始めた。
「いよいよこの時が来たわね」
「あの悪女がどんな顔をするか楽しみだわ」
「それそれ~」
「威張り散らすあの汚い顔を絶望に染めてやりましょ」
「本当に。うふふ、とっても楽しみですわ」
今は誰もが復讐の炎に照らされて心躍らせている。
それは平常時と比べると異様なことだ。
しかしローズがしてきたことを思えばある意味当然の流れと言えるだろう。
それほどに彼女は好き放題してきた。
そして周りを傷つけてきた。
毒を吐き続ければ、周りは傷だらけになる。そして怨みが生まれる。すぐに爆発することはないかもしれないが、傷からは膿が滲み出して、やがて負の意味でとんでもない状態になることだろう。一度膿だらけになってしまえばもう収拾がつかない。その時になって慌ててもどうしようもない、そこまでなってしまったなら後はもう究極の選択をすることでしか話を解決することはできないのだから。
結集した人々はローズのもとへと向かう。
戦うことを決意した人間は強い。
血を流すことをも恐れないからだ。
――そして人々はエーリオ及びローズの前へたどり着く。
「殿下! そちらの女性をこちらへ渡してください!」
代表が頼む。
「何なんだ、一体」
しかしエーリオはローズを護り続ける。
「その女性にはもう付き合いきれません! ですのでその女性には現在の地位から降りていただきます!」
「……まさか、君たち、ローズを敵視しているのか」
「これまで散々でしたから。もうこれ以上黙ってはいられないのですよ。皆同じ気持ちでいます」
「ふ、ふざけるな!! 絶対に渡すものか。そもそも、こんなに可愛いローズをなぜ悪者のように言うんだ!!」
エーリオの後ろにいるローズは退屈そうにあくびをした。
「ローズは渡さない!」
「では無理矢理ということになりますが」
「なっ……そ、そこまでするというのか!? 酷すぎるだろう。なぜローズを敵視する? 彼女が魅力的だからか!? ああ、きっと、そうだろう。そうなのだろう!? 美しく、可憐で、魅力的な彼女に嫉妬しているのだろう!?」
そんな無意味なやり取りがしばらく続いて。
「説得は不可能のようですね」
「当たり前だ! ローズはとても素晴らしい女性なのだから、理不尽なやり方に屈する気はない」
その果てに。
「では無理矢理拘束させていただきます」
――ローズは捕われたのだった。
「やめろ! ローズに手を出すな! 出すんじゃない、手を! ローズは素晴らしい女性! だろう! なのになぜこんなことをする! 汚いぞ、大勢で彼女を虐めるなど!」
エーリオは最後までローズの味方をしていたけれど、そんな彼に同意する者はいなかった。




