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 つららが陽射しに当たってぽたりと雫が垂れる、軒傘のガラス戸をぱたりと閉じると七種は座敷に座った。あたしは、テーブルの上の蟹甲羅に(よだれ)を垂らしながら、七種の横に座る。上座の横に緋人が座ると、座敷戸を開けてお父さんが入ってきて挨拶をする。ギクシャクし乍ら緋人は、今年もよろしくお願いしますと深々と頭を下げた。まあ、1杯とお父さんが言うと緋人は手を震わせながら酌を取る。お屠蘇もいい加減酔うからと、母がおせちを差し出した。あたしは栗金団と数の子を食べては、父の手を見る。ごつごつと(しわ)の多い手は、少し老いたなと感じた。久しぶりに会った父と母とアミが、少しだけ寂しく優しかった。

「ところで、仕事はどうだかの?」

 二人は、ぎぐりとした。緋人は手を摩りながら、苦虫を潰したような顔をした。

「牧先輩が、上手くてね。教えてもらうんだけど」

「かったん、かったん、かったんたん、かね?」

「先輩はね、でも俺は、かったん、かったん、と打つと、カツってなるんだよな」

「どれ、手を見せなさい」

 父が緋人の手を取って、摩る。

「うーんかたよってるな、()、揉んでやんなさい」

 あたしは、汁椀を持って里芋を箸で刺す。母は、七種は?と聞く。

「私ガラス細工なんだけど、底がね、斜める。まだまだかな」

 父も母もふぅむと言って、耳打ちしてる緋人の後ろでわんこが尻尾を振っていた。

「3年なるだろう、どうだろう、もう2年頑張ってみるか?」

 私と緋人は顔を見合わせて、肩を落とすと溜息を付いた。どれ、福袋でも買いに行こうかと父が言うと、母が立ち上がって何が好いの?と聞く。私は考えもせず、靴が欲しいと言った。あたしはナオに近づくとニャーと言って笑って去って行った。一行は車に乗り込むと、低い雲が鉛のように重そうだった。近くのタウンマーケットに行くと賑やかな家族連れと着物を着たカップルが破魔矢を持ちながら歩いていた。福袋の靴は何センチと書かれ、緋人と七種が買っていた。あたしは店員さんを見つけ、良い靴無いですか?と聞くと試着しますか?と問われ、みんなとはぐれないように頷く。お母さんが迷ってて時間がかかりそうで、あたしは白いズックとスニーカーを試着した。どちらもよいが、歩くしスニーカーにしようと決めわんこがお金を出してくれた。むぅ自分で払おうと思っていたのにと、わんこが革靴を差し出していたのでそちらを払うことにした。良い仲になりそうと思いながら七種の傍に行く。父は緋人に泊って行くかいと聞くと、彼は実家に帰るという。帰り道に寄って行こうという話になり、車に乗り込みタウンマーケットを後にした。雪がちらほらと降ってきて、今夜は積もりそうだなと言っていた時、母が運転席で急ブレーキをかけた。助手席側の荷物入れの蓋がカタリと開き、手作り包丁がひょいと真っ逆さまに落ちる、黒い影があって七種の足を狙っていた。ニャーと言って手で祓って暗闇を追い出す。黒い影はずぶずぶと窓から外へ逃げて行った。七種の足元で包丁は音を立てて横に落ちた。七種が危ないなーと言うと、母が前の車がねと言って、前方を見遣る。前の車がウインカーを出して、車線変更している。その前に蛍光板に事故車と書かれていた。正月早々と言って、父が後ろから、ありゃお屠蘇だなと言って眺めていた。落ちた包丁を見て、父に渡すと、うーん鍛冶が甘いと言って緋人に耳打ちしていた。緋人は顔を赤らめながら言った。

「そのうち、よければ、お婿に行きます。」

 七種の顔が真っ赤になった。車は通りを折れて緋人の実家に着いた。

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