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薄暗い照明の社員食堂は、活気も落ち着いて食器洗浄機の音が響いていた。上司の向かいに緋人が大盛りの丼と格闘していて、上司に窘められていた。
「お前ね、危ないだろう」
「だって、増内が手を引っ込めるから、手を打ったじゃないですか、痛いのなんのって」
一つ席を開けて、七種がかつ丼のお盆を眺めながら眼に涙が溢れる。
「ごめんなさい、ひっく、怖くて、ひっく、打たれると思って、手を・・・」
七種は袖を引っ張って眼を擦って涙を拭う、そのしぐさを見て上司が溜息をついた。
「傷病手当着くから」
緋人は元気よく返事をする。あいつがむぅと言ってあたしのとこに来て、言った
〈じっと憑いて3年〉
あたしは、まあまあと言う顔をしてしたため、同じくと言って堪えていた。牧先輩が七種の前に座って言った
「お食べ、食べなきゃ力でないよ」
後ろにいたカメレオンがにやりと笑う、牧は七種にお盆を押しやってふぅと溜息を付いた。七種は頷いて少しずつ食べる。あたしも少し貰って食べると、かつ丼の玉子に汁が沁みって美味しかった。じゅるりと舌なめずりすると、カメレオンが言う、俺は憑いて8年、強えぇぞえ、と舌をちょろりと出した。ひえーと思ってあたしはにゃーと答える。七種は小口を少し残してお盆を下げた。お風呂は10時、男が多い会社は女性に甘く狭辛い、お盆をほい持ってこれで最後だねと、社食の叔母さんが言った。ご馳走様でしたと言うと明日の朝、布巾の洗濯を頼むねと言って、七種は2階に上がって煙草を一つ着けた。自動販売機の明かりがぼやりと灯っていた。少し頭が痛い、月の物が来そうだなと思って煙草を吸っていた。男性陣がぞろぞろと風呂場から上がって来る。寮母のおばさんがほいと女湯の看板を立て直すと七種とあたしはお風呂場の入り口を潜った。
背中を流す七種を見て、嫌な気持ちになる。事故がなければいいんだけどと思ってあたしもお湯を水打ちして体を洗った。お風呂に沈む泣き顔の七種を視ながら考え込む、憑いてじっと耐えて・・・何とかしたいと焦る気持ちをお湯で流した。七種は風呂場から上がって髪をまとめ、タオルを巻いてトイレに駆け込む。やはり来たかと支度をして、はー子供欲しいなと言った。風呂場の入り口を出るとボードに猫集会深夜と犬集会朝方と書いてある。それを見て、また七種は煙草を吸った。くしゃみをしながら、1本美味そうに吸う。煙草を灰皿に捨てて4階に上がって早々に布団に潜り込む七種のそばで、あたしの写真を見る。楽しそうに両手を広げて座るあたしは、この時は楽しかったなと想った。七種が寝静まったのを確認して、集会に出かける。蛙が居るのを横目に集会場の公園に向かった。ボスがにやりと笑って真ん中に立っている。にゃという声と共に依存は無いか?とにゃと問われる。にゃと言って採決する可決でまた集会がいついつと報せが廻って帰って来た蛙が反対を見ていたので見ると、静寂に薄暗い暗黒が広がって向こうに流れて行った。ふうと思って七種の部屋の入り口を潜って布団にもぐる、静寂がしんと唸った。
早朝に緋人のわんこが集会に行って帰って来る、七種が起きて身支度をして洗濯をしていると、緋人がふらりとやって来た。
「ごめんね」
「気を付けろやい?もう危ねえ」
わんこがにやりと笑って、緋人の手にそっと手を添えた。手には包帯が巻かれていて、とても痛々しく見えた。緋人は七種にウインクすると、痛めた手をそっと七種の方に伸ばす。七種は涙ぐみながら緋人の手を取って甲に接吻をした。あたしは嬉しそうにわんこをみて、七種の頭を撫でた。干した布巾が風に吹かれて揺れていた。




