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「もう、お味噌汁そんにゃにのめにゃいー」
七種が寝言を言いながら、ふぅと息をついた。あたしは布団から顔を出す、暗闇に児玉の緑の間接照明が光っていて、時計を見やると2時5分になっていた。机の上の一輪挿しの桜の花びらが、1枚落ちていた。報せが来てる、布団から起きて花弁を見ると、お祖父ちゃんの手書きで、帰って来なさいと書かれていた。あたしは、七種を振り向く。彼女は規則正しい寝息を立てながら、寝返りを打った。離れても大丈夫そうだなとあたしは安心して、あたしの写真に手をかざす。あたしは住所を言うと、光り輝いた輪が出来てその輪を潜った。すると、木造の一軒家の木柵の前に出た。策に手を掛けて開けると、あんこがお庭掃除をしていた。
「お帰りなさい」
あたしはあんこに挨拶して、家の扉を開ける。大きな声で言った。
「只今、戻りました」
奥からおばあちゃんが顔を出して、居間を指さしながら言った。
「お入んなさいな、あなたー、あんぐりこが帰ってきましたよ」
居間の茶托にお祖父ちゃんとお母さんがいて、お兄ちゃんのあんとが笑っていた。お母さんがさてとと、玉子粥を持ってきてくれて、あたしはふうふう言いながら食べる。甘くてしょっぱくて、胃にすうっと入っていった。お祖父ちゃんが、どれ、行くかのと言うと、あたしは、玉子粥のお椀を置いて言った。
「ご馳走様でした、美味しかったの」
お祖父ちゃんと一緒に家を出て、柵を開ける。すると緋人のわんこが居た。お祖父ちゃんが、行くぞと言って歩き出す。すうっと闇に包まれて赤い光を目指して歩いた。そして赤い屋根の建物の前まで来ると、お祖父ちゃんがたのもう!と叫んだ。建物の入り口から使いが出てきて、受付を済ませ建物の中に入る。大きな赤い扉の前に来ると、名前を呼ばれた。あたしは、扉を開け中に入る。一筋の光の前に出ると、暗闇が大きく響いた。
-あんぐりこ、良く耐えそして好く祓った。見習いを解き、称号を与える。術は『旬燗行設』を使うと良い。
そして光の筋に、バッチがカラリと落ちた。拾って服に着ける。あたしは頭を下げてお礼を言い、入り口の扉を押してお祖父ちゃんが、拍手をしていた。わんこの名前が呼ばれて、あたしは緋人のわんこの名前がキシュだと初めて知った。キシュが出てくるのを待つ。キシュは笑みを浮かべながら扉から出てきた。服にバッチが光っているのを見て、あたしは拍手をした。建物を出てキシュと話をして、キシュは『夢見行設』を与えられたと聞いた。あたし達は家に戻らずそのまま、キシュと別れて七種の傍に帰って来た。七種の手に暗闇の渦が視え、それをニャーと手で祓う。すると、暗闇の渦は窓からするりと逃げて行った。あたしは布団に潜り込む、雀が朝告げをして、鳴いていた。




