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11話 託されし使命 ③

 わたし達は家に戻ると、すぐにティアの実験場へと赴く。

 ブレイドはもういない。新しい力を手に入れるための実験をこれからはじめようとしていた。

「これより破壊力を利用する実験を開始する。準備はできておるな」

「はい」

 その実験とは破壊力を操作するというもの。創造の輝きを増幅させることよりもさらに危険なことに挑戦しようとしていた。

 

 ブレイドがいない今、わたしだけで創造守っていく必要がある。

 無力さを嘆く時間はない。もしまた違う敵が現れたのならばそれに対処だってしていかないといけない。そのために力は必要になってくる。


「俺はなにをすればいい」

「創磨の制御のサポートを。後はわたしがやります」

 創磨にはフォローだけをしてもらう形で、実践をはじめていく。


「くぅううう」

 ブレイドを失った怒りや悲しみ、それを糧にして破壊力を創り出していく。

 破壊力は創造の力と同じ願いを根源としている。激しい感情や怒り、それもまた創造だといえる。


「落ち着け、逢夢」

「破壊力に支配されるな。我が考えた術式を使って破壊を創造に創り変えるのだ」


「我が荒魂の力を見よ、ブレイク・インストール」

 破壊を創造に変えるための変換術式、ティアが教えてくれた概念をつかって破壊を創造に創り変え、相反する破壊と創造を共存させようとする。

 破壊は創造を食らい大きく成長し続け、桜色の創造の輝きだけでなく赤い破壊の輝きを身体の中から放出させた。

 

「これが創造と破壊の力」

「すごい、力だな」

 自らの力として定着させれた感じはするが、力の放出の仕方を間違えればこの力に飲みこまれて暴走させてしまう危険があるだろう。

 

 ティアが慎重に事を進めていたのはそのためでもある。より強い創造力を得てから、破壊力をその制御下におく。そのほうが本来は安全だ。

 

 しかし今はそういった状況ではなくなった。創造の力が足りなくなれば、それを違う力で補えるようにしておかなければならない。

 危険性が高くても、そうしなければ守れないものがある。そう判断したゆえにこと。


「よし、その状態のままターゲットに接近して攻撃をしかけてみてくれ」

 ティアが用意した人形のロボットが走り出し、対象に向かって飛びあがるが

「こんなにも力が出るなんて」

 力の制御が難しく大きく頭上に飛びすぎてしまう。


「それならば」

 放出する力を抑えきれないが、放出する力の流れは変えることができる。空中で軌道修正をかけるために、創造と破壊の輝きを敵にいる方向へ放出した。

 

 真上からロボットのいる真下に向かって突撃、制御できない力すら利用した力で蹴り飛ばした。

 闘技場の床には大きな穴が空き、ロボットは沈黙している。


「そこまでだ、力を抑えろ」

「わたしはまだやれます、そうしないと……」

 敵を倒す、すべてを破壊しないと守ることができない。守らないと、守れないと……みんなが。


「逢夢、大丈夫だ」

「……はい」

 力に飲まこまれそうになったことにきずけたのは創磨が強く制止してくれたから。力を抑えることにつとめ、破壊力を浄化させていく。


「少し休憩を挟んでからまた実験を再開しよう」

 破壊力を少しとりいれただけなのにかなり体力を消耗している。扱いが難しい力です。

 

「創造神がブレイドに与えてくれたあの神の力、ティアはなにか解ったことはありますか」

「創造力の根本、そこからして違っている。それくらいことしか解らぬな」

 ティアでも、あの創造力について解っていないことが多いのか。

 

「逢夢はあの力すら使いたいと考えているのだろうか」

「できうることならば」

「あれは自らの魂そのものを消費しているようにも見えた。あんなの望まないで欲しい、俺はあのやり方だけは好かない。犠牲を払った上での勝利なんて後味が悪すぎる。創造神様は責めはしない、俺達が弱かったのが悪いとは思うんだけどさ」

 創磨は今回の出来事をあまりよく思っていないことは、やるせない表情から伝わってくる。なにか別のやり方があったら、もっと強ければ、そう思わずにはいらない。

 

「もっとわたし達自身が強くなりましょう。あの力を創造神様が託さないくらい強く」

 強くなることをわたしは違う。もう誰も犠牲にさせないために。


「ブレイドはどうやって創造神に接触したのだろうな」

 ティアが考える疑問、それは創造神と接触したことがないゆえ出る言葉。

 

「あ、そのことについてなら……魔王のことで悩んでいることは覚えているだろうか」

 創磨はわたしと同じで、創造神様と接触したことがあるらしい。


「あの時、魔王の記憶を見せてくれた相手がいた。あのときはそれが誰か解らなかったけど、今なら解る。あれは創造神の声だったんだと思う」

 記憶を見せる、その提案の前にそんなやり取りがあったのは知らなかった。


「ジャイアントブレイカーと闘っている時も声を聞いた。レイターになる力、逢夢と出逢わせてくれたのも、創造神によるもの。そう思うと助けてもらってばっかだな」

「創造神様はいつもわたし達のことを見守り、わたし達の未来へつながる道を、照らしてくれているのですね」

 創造神様は常にわたし達のことをみている。それはわたし達にしか託すことができない使命があるからだろう。


「その道が途絶えぬことがなきよう、わたしは強くなりたい」

「うむ。創造神ばかりに頼ってばかりもおれん。我らが強くならねばな」

「そろそろ実験を再開しましょうか」

 休憩もとり、その後も暴走する危険があることは解っていながら、破壊力を創造の変える実験を続けた。

 

「ごくろうだった。今日はこのくらいにしておくか」

 実験終了後、ティアが用意してくれていたお茶を飲んだ。

 

「まだまだ未熟ですね、わたしは」

「そうであれば我はなんだ、未熟どころの話ではない。我は貴様に多くのことを頼らねばならん立場だ」

「そんなことありませんよ。ティアは新しい研究をしてなんどもわたしを助けてくれています。わたしはなにも……」

「なにもできなかった、そう言いたいのか」

「はい、わたしはなにもできませんでした。ブレイドを見殺しにしてしまったんです」

「それは我も同じだ、見ておることしかできなかった」

 力が足りないばかりに創磨達を危険にさらし、ブレイドを見殺しにするしかなかった。神の力、もしそれがなければすべてを失い、わたし達は消えていた。

 

「強くなりたい、もっとわたしは強くなりたい。大切な人を守るためにも」

「そのためにも自分を大事にしろ。常に自信をもて。弱気な心のままでは強くはなれん。心の強さがあってこそ身につくものもある」

「強い心がより強さを生む……そうありたいですね」

 自分ばかりを責めてしまいそうだったけど、ティアの言葉で心が軽くなった。

 

「誰かが側にいるというは心強いですね」

「多少はな」

「ティアもそう思っていたのですね」

「我らしくないと言いたいようだな」

「いえ、そんなことは。ティアのような強い心の持ち主でもそうあることが嬉しかったんです」

 誰かを頼ってしまう弱さに負い目を感じそうになっていただけに、嬉しいと思えていた。


「ブレイドはわたし達に絵麻のことを託してくれた。幸せにして欲しいと願った。わたし達にできることはしてあげたいですね」

「絵麻の幸せか……我も同じ道を歩もう。そのために力が必要となる」

「レイター化、ですね」

「ああ。早急にできるようにせねばならん」

「お手伝いします」

「うむ。ではこれより我も破壊力をとりこむ実験を開始する」

 ティアは赤い破壊力をとりこみ、自らの力を覚醒させる準備をはじめていく。

 わたし達にすべきことはこの世界の創造を守ること。そのためにすべてをささげ、守りぬいていかなくてはならない。

 あのブレイドのように、あのブレイドのように……

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