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11話 託されし使命 ①

 蒼い爆発による衝撃波がアウターワールドを激震させた。

 白い床には亀裂がはいり、血脈のように蒼い血がながれている。爆風に体が流されないようにクリエイトが創造の輝きで守ってくれていた。

 衝撃波がおさまると静寂がアウターワールドに広がる。

 ブレイドの鼓動も、想いも、輝きも消えていた。

 

「そんな……わたしが力を持っていないばかりに、もっとわたしが強ければ……」

 クリエイトは自分の無力さに、悔し涙で顔を濡らす。なにもできなかったことにうちのめされ、二度とこんな事がおきないように強さを求める。

 

「ブレイドよ、貴様の想いは無駄にはせぬぞ」

 ティアは爆発の中心地に創られた蒼い光柱に向かって敬礼し、最後の最後まで勇敢に闘ってくれたブレイドの意思を受け継ごうとしていた。

 クリエイトはクリエイトなりに、ティアはティアなりにブレイドへの想いと向かいあっている。自分がブレイドに対してできることってなんだろうな。

 

「ブレイドの使命……絵麻を守らないとな」

 弱りきった拳を強く握りしめ。クリエイトの背中で眠る絵麻をみる。


「絵麻には、どうブレイドのことを話せばいいんだろうな」

 ブレイドのことを知れば絵麻は深く傷つくことになる。その時自分は彼女を支えてあげなければならない。それが俺達を守ってくれた人のためになるのなら。

 

 蒼い光柱が消え、ベインが張ったアウターワールドの結界も消えていた。

 絵麻の部屋に転移し、絵麻が目覚めるのを待つ。

 ベットに寝かしつけた絵麻は悪夢にうなされているかのように苦しそうだった。



「創磨……」

 二時間後、絵麻が目覚めた。

 

「体、大丈夫か」

「うん……」

 クリエイトが創造力によって治癒をしたのもあって、絵麻の容態は安定したとみていい。

 身体的な問題については一安心。後は心の問題か。

 

「ブレイドは?」

「俺達を守るために闘ってくれた。とても勇敢だったよ」

「勇敢? そんなこと聞いてない……ブレイドはどこにいるの?」

「……ここにはいない。ブレイドはいないんだ」

 まず最初にすべきこと、それは真実を伝えることだった。

 

 苦しくて辛い想いは俺にだってあるけれど、俺までそれに流されてしまえば絵麻を支えられなくなってしまう。絵麻を守る、守らないと。


「嘘だよね、嘘って言って」

「嘘じゃない、嘘じゃないんだ」

 ブレイドがいなくなったことを無理にでも受け入れてもらう必要はある。そのために嘘は言わなかった。

 

「あたしが守って欲しいって願ったからだ。あたしがあたしがそんなこと願わなきゃ……」

 絵麻は大粒の涙がこぼしながら腕をみていた。ブレイドがいなくなってしまったことに責任を感じ自分で自分を責めている。

 

「自分のせいだなんて思わないでくれよ。そんなことブレイドは望んではいない」

「じゃあどうすればいいのさ! あたしはあたし自身が許せない。ひどいことばっかした。自分だけ助かろうとしてたし……」

 自分自身に怒りの矛先を向けて叫んだかと思えば、すぐに自虐的になって弱気な声へと絵麻は変わっていく。情緒不安定で自分の感情すらもコントロールできていない。

 

「弱さは誰にでもある」

「そのせいで誰かに迷惑かけてるなら、駄目じゃんか……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。ブレイドがいないなんて嫌だよ……」

 このまま絵麻を放っておけば、心だけではなく身体まで自らの手で傷つけてしまいそうだ。

 そうなってしまえば出遅れだ。絵麻を守ることはできない。

 

 心が壊れそうになったことは俺にもある。

 打ち切られてしまう、ジャイアントプレイカーの破壊力を浴びた時、一人で立上がることはできなかった。

 

 また前を向いて歩くことができたのは、逢夢のおかげ。

(あの時、逢夢がしてくれたようにしてみよう)

 逢夢が俺にしてくれたように、絵麻の手を握った。

 

「なんで?」

「落ち着くまでずっと握っていたいから」

「迷惑だよ、そんなの」

 最初は拒絶し、怯えきった絵麻は手を離そうとしてきた。


「迷惑じゃない、絵麻のことを大切にできないほうが嫌だからこうさせてくれ。これは俺のわがままだ」

 手を握ったことに対して絵麻は口では迷惑だとは言うけれど、嫌がる様子はない。

 ぎゅっと手を握り返し、お互いにぬくもりを確かめあうことで、荒んだ心に静寂がおとずれた。

 

「飯食べるか。腹減ったろ」

「……うん」

 1時過ぎ、お腹も空いていることだと思い昼食を食べることに。

 手を一瞬離そうとしたが、絵麻が不安そうにしていたので手を少し強く握ってみる。


「大丈夫、どこかへ行ったりしないから」

「うん」

 絵麻が手を握り返してくれたのなら、握ってあげたい。

 手を俺達は離すことなく立ち上がり、キッチンの方へ向かった。


「カップ麺にしとくか~」

 かごの中に入っていたカップ麺をそれぞれに手にし、お湯をいれて出来上がるのを待つ。

 

「迷惑じゃない?」

 再び手をつなぐと、再び申しわけそうに絵麻はしている。

「全然。俺もさ、不安だからこうしてくれて助かる。俺も一人でいたくい、その気持ちは同じだから」

「うん」

 静寂の中で、無理やり話題をだすこともない。ただお互いに体温に感じられることで安心ができる。ぽっかりと穴が空いてしまったものは、時間を欠けて埋めていく。

 

「お、できたみたいだな」

 カップ麺ができあがると、それぞれ食べていく。

(いつもの明るい絵麻とは全然違うな。素直でしおらしくて、けどそれは心が壊れそうだからで……)

 女性として意識するよりも、絵麻の心の方が心配でしかたがなかった。

 

 食べ終えると、容器と箸を流した台で洗って後片付けを済ませた後、次になにをすべきか考えはじめる。

 

 やるべきことっていうのは山積みだ。しかし今すぐそれをやろうというきにならない。

 息抜きがしたい、それは絵麻も同じだと思う。

 

「公園で散歩でもしないか」

「うん」

 散歩にでかけることを提案すると絵麻はうなずき同意してくれた。

 絵麻の家をでて大通り沿いの道から、愛知平和公園内の林道へと入る

 

 平和ヶ丘かのら林道はゆるい傾斜道からはじまりそこを昇っていく。ゆったりと歩いている人がほとんどがランニングしている人達も多い。来たばかりだが3人ほど素通りしていく。家族連れで来ている人もいれば、手を繋いでいるカップルの人達もいる。

 

 たぶん俺達はカップルだと他の人達から見られているのだろう。

 視線がやたらときになりはしたけれど、絵麻の手は離したくない。こうしているほうが安心できた。

 

「落ち着くよな、ここは」

「うん」

 林道内は木々のざわめきとウグイスの鳴く声がよく響いている。林道の土は木の葉がつもり柔らかいクッションになっている。緑の匂いが息を吸うたびに身体に広がっていく。

 

「あたしは昔からこの道歩いてるよ。街並みをかなり変わったきがするけど、ここだけは変わらない。ずっと穏やかでいてくれるんだ」

 傾斜道を昇りゆるいカーブがみえ、そこから平坦な道が続く。

 

「変わらないままでいて欲しかったな……ごめん、違うの」

「ブレイドのことを話してくれてもいい」

「空気悪くしたくない、だから忘れて」

 俺のことをきにして、絵麻はうつむき自分自身を偽ろうとしていた。


「忘れる必要なんてない。ゆっくりとでいい、少しずつ受け入れていこう」

 俺はそんな絵麻に偽ることは必要ないと教えていく。

 ゆっくりとでいいからたくさんのことを受け入れていくことが今の絵麻には大切。そのために俺はそばにいる。それが絵麻を守ることにもつながるはずだ。

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