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10話 破壊王ベイン ④

「まだまだ。マスター、わたしゃ達の創造力をぶつけてあげましょう」

「いこう! ブレイド」

 即断即決、絵麻とブレイドは今だせる一番強い攻撃にかけるつもりか。

 

「お、あれをみせてくれるのか。みせてみろよ、てめぇらの蒼の輝きとやらを」

 ベインが避けるつもりがなく攻撃を受けてくれるようだ。余裕な態度はきになるが、今はこれにかけるしかない。

 

 ブレイドは左手だけで蒼輝刀剣を持つと、右手に創り出したペンが蒼く輝く。。

 絵麻も左手に創造の輝きで創った剣を、右手にはペンを持ち蒼い輝きをまとわせた。


 刀身にペンを当て振り抜くと、ペンの創造の輝きが刀身に宿り、蒼輝刀剣をさらに輝かせる。


「くらえ、あたし達の蒼の輝き!」

 疾風迅雷、蒼い風が吹き荒れ、ブレイドは雷鳴となりて地上を駆けていく。

 ベインとの距離は消え、蒼き狼の鋭い牙は解き放たれる。

 

「「蒼破天狼撃」」

 二人の掛け声と共にブレイドは蒼輝刀剣は振り抜かれた。

 

 ベインは赤い破壊力を手のひらに集めてそれを受け止めようとするも、創造力の方が力強い。破壊力は消え、蒼い創造の輝きがベインを斬り裂いた。

 

(今までみた中で一番強い創造力を感じられる、これなら……)

 破魔やブレイカーを倒してきた必殺の一撃、さすがにその一撃は効いたのだろうか膝をベインはついていた。

 

 だけどまだ完全には倒れていない。

 たとえ手負いの相手であろうとも容赦することなく、ブレイドは再び斬りかかろうとした。


「これがてめぇの渾身の一撃ってやつかぁ……もっと楽しませてくれねぇとなぁ!」

 ベインはニヤリと笑う。ブレイドがさらに攻勢をしかけるのを狙っていた。ヒザ蹴りを腹にくらわせてから足をつかんで投げ飛ばす。

 

 膝をついたのはフェイク、やられそうになるという演技にすぎなかったことを理解する。

「なんであんた平然としてるのよ。膝だってついて……」

「あれはフェイクさ、お前達を騙したほうが楽しそうだろ。もっと本気をだしてくれよ。すべてささげ、命がけでかかってこい。これじゃあつまらねぇなぁ」

 命をがけでもっと強くなれとベインは要求し、こちらに近づいてくる。

 

 クリエイトは侵攻を阻止しようと創造球を連射するも、手を払うだけではじき飛ばされる。全力で対処するに値しない攻撃、そう思わざるえない対応。

 

 実力差が明確になってきて、うてる手がなくなってきている。

「まだ諦める時ではないぞ」

 ティアは戦意が落ちているのをみかねて、気合をいれさせようとする。

 そうだ、諦めるな、まだ俺達には手は残っている。これはまだベインにはみせていない。

 

「創造の戦花、クリエイト・ストレングス」

 俺とクリエイトは創造の輝き強化する術式をクリエイト自身、そしてブレイドにかけた。

 ティアの実験結果を元に編み出した技。

 まだ実践投入するのは不安定な代物ではあるけれど、そんなことは言ってられない。


「はぁああああああ」

 創造力を体内で増幅させ、クリエイトとブレイドの創造力を強化した。

 

 クリエイトは桜色の閃光に、ブレイドは蒼い閃光となり、二人は同時に動いた。

 ベインの周りをぐるぐると回転して的を絞らせていない。桜色と蒼い閃光だけが動いているようにみえて、二人の存在は肉眼でとらえることは困難だ。

 

 桜色の閃光の一つがベインに接触。。光となって加速した勢いを利用し、蹴りをいれているのはかろうじで確認できた。

 

 ベインはガードできていなかったのか、蹴った勢いを殺すことなく吹き飛ばされていた。

 さらにそこへ蒼い閃光となったブレイドが追撃、刀で薙ぎ払いさらにベインを吹き飛ばす。

 

「創造力を肉体強化にあてた攻撃、速さだけならだいぶましになってきたじぇねぇか」

 ダメージを与えられているかどうかの判断は遠目からはできないが、速さで対抗するのは戦法としては悪くない。

 

 守りが手薄なところに一撃を与えたほうが、攻撃の効率は確実にあがる。

 そこからはさらに素早い攻撃をクリエイトとブレイドはするべく、ベインに近づいた。

 

 連打、連撃、連打、連撃。

 

 クリエイトは拳を一瞬で数発叩きこめば、ブレイドは一瞬で三連撃を決めている。

 反撃する暇すら与えない。攻撃こそが最大の防御といわんばかりの攻撃。

 肉体の限界強度をあげたからこそできる戦技の応酬。

 ベインはそれを黙って受けている。嵐の前のしずけさのようにもみえて不気味だったが、俺達に使える手段はかぎられている。この攻撃にすがるしかなかった。

 

「ところでこいつはいつ終わるんだ」

 ベインは反撃ではなく、ガードに徹しているだけ。

 ダメージらしいダメージは通せていないようにもみえる。いやそれどころか段々と対処が的確になっているようにみえる。

 

「あなたが倒れるまでに決まっています」

 拳をくりだしながら、クリエイトはむき出しの感情をさらけだす。

 絶対に負けない、その意志を感じさせる瞳は戦意を失ってはいなかった。


「そうか、だったら俺が終わらせなきゃいけねぇみてぇだな!」

 ベインは全身から赤黒い波動を展開すると、攻撃をしようとしていたクリエイト達の周囲で爆発が起きた。

 

「クリエイト! ブレイド!」

 くそ、なんだ。なんなんだあの赤黒い波動は。こちらの攻撃をたった一度の攻撃で退けたってことかよ。

 

「くくくく、どうしたびびちまったか」

 クリエイトとブレイドは創造力を集めて防御壁をつくったのだろうけど、破壊の波動によって服がボロボロに破れている箇所がある。

 

 赤黒い波動によってベインの実力はまだ底をみせていないことを理解し、迂闊には近づけない。

 どうすればいい、こっちの手札はほぼ使いきった。どうすれば……

 

「さて、そろそろウォーミングアップも終わりにするか」

「なに言ってんの。さっきまでそっちだって苦戦してたじゃん」

 今までのことがベインにとってはウォーミングアップだった。そんな事実を受け入れられないからか絵麻は手を震わしながらもその事実を否定しようとする。

 

「なにか勘違いしてねぇか。俺は楽しむために力を温存していたにすぎない。勝てるかも……なんてそのきになるてめぇらの姿がみたかったんだ。楽しいよなぁ! 勝てそうだって思うのは」

 美味しい料理を食べているとき頬が思わず緩んでしまう時がある。ベインはそれと同じだ。美味しいごちそうを前にして頬を緩ませている。

 

「だが、もっと楽しいのはどんな時だ。そうさ、勝てると思った相手をひねりつぶすことさ。それを今からみせてやるよ」

 ベインは腕をだらりとさげて独特の姿勢で集中力を高めると、赤黒い破壊の意思をまといはじめた。


「さっきまでのが実力の60%。そして今は80%ってとこだ。どうだ、この破壊力。お前達じゃ理解するのも無理かもしれねぇなぁ」

 力の差がまた開いたことを自覚し、頭の中が一瞬真っ白になる。俺達はただベインに踊らせていただけ。

 

「な、なんのよこれ!」

「これがベインの力……」

 今ままで感じてきた破壊力とは別のものになっている。今までの破壊力は感情を増幅させたにすぎないが、この赤黒い破壊力は質そのものが違うといっていい。

 

 感情に左右されない純粋な力。破壊のみを楽しむ、それこそが純粋な力を呼び込んでいる。

 そこに苦痛はない。快楽こそが破壊だとでもいうのか。

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