10話 破壊王ベイン ③
「さぁはじめようか、創造と破壊の闘いってやつをよぉ!」
ベインは赤い破壊の狼煙をあげ、大きく後方にさがる。
適正な距離から戦闘開始、これも闘いを楽しむためにやってることなんだろうな。
ぶらぶらと手を振り子みたいに揺らしながら、俺達の方をみて笑っている。
余裕な態度をあえてみせることでベインは俺達を挑発している、だけどそれにのるわけにはいかない。
クリエイトとブレイドは様子をみつつ、少しずつ距離をつめていく。
「警戒しているようだね。それじゃあ俺を倒せない、早くかかってきなよ」
「やすい挑発」
「あなたの思惑通りには動く必要はありませんから」
熱くなって冷静さをかいたほうが悪い状況をつくる可能性がある。クリエイト達は慎重だ。
「しかたねぇな、こっちからしかけてあげるよ」
眉をつりあげ、ベインの瞳は獲物をとらえる。俺達のことを美味しいごちそうとしか思っていないのか、にやりと笑っていた。
破壊音が響くと同時に白い床がひび割れると、ベインは飛びあがった。
上空から攻撃するようなこともなく、放物線を描いている。
走って追いつけるような速度ではないが、レイターの闘いにおいてはその速度は遅い。
空中からの強襲を狙ってのものならなおさら。これじゃあ狙ってくれって言ってるもんだ。
「蒼の風、蒼刃斬」
「創造の弾花、クリエイト・ショット」
蒼く輝くかまいたちと、さくら色の弾丸、二つの創造の輝きが空に描かれた。
様子をかねての攻撃というのはあるだろうけど、その一手は確実に近づいている。
それなのにベインは不気味に笑っていた。
「穿て! ブレイド・ショット」
まるで子供の遊び。
「バン、バン、バン」
指先を拳銃にみたて、ふざけきった声で銃声の音を真似しはじめた。
それがただの真似ならばふざけているだけで済むが、ベインのはそうじゃない。本当に指先から破壊球を撃たれている。
破壊球は拳くらいの大きさ、素早い弾速を維持したまま直進していた。
無数の赤い破壊球は、クリエイト達の放出した色づく創造の輝きとぶつかりあった。色はまじわることはない。ぶつかりあった衝撃によって、お互いは相殺されていた。
挨拶がわりの攻防が終わり、お互いの距離も縮まっている。
「回れ! ブレイク・リング」
先にさらなる攻勢にでたのはベインだ。両手の指先に集めた破壊の輝きを急速回転させることで破壊の円盤に変化させ、投げ飛ばした。
破壊の円盤はカーブを描きながら加速、クリエイト達に襲いかかる。
防御せずに触れてしまえば、赤い破壊の円盤はチェーンソーみたいに触れたものを削りとって真っ二つにする可能性がある。
「創造の盾花、クリエイト・シールド」
クリエイトは避けることよりも、創造の輝きで創りだした花びらの盾で防ぐことを選んだ。
ブレイドは蒼き風をまとい、狼のように素早く動き続けることで避けるつもりだ。
それぞれ対処の仕方は違うが、これまでの闘いの中で経験し磨き上げてきたすべてをぶつければいい。臆するな。
さきに破壊の円盤との攻防になったのは、先行して走っていたブレイドだ。
破壊の円盤が一部屋ほど空いたくらいの距離感まで近づくと、ブレイドは真上にとびあがる。円盤の描く軌道は横からくるもの、急激な縦の動きには対応できずブレイドの真下を通過していた。
破壊の円盤による攻撃を回避できた、後は地上に着地しているベインに攻勢をしかけるだけ。
クリエイトも破壊の円盤の対処をしてから、ブレイドの援護できるのがベストか。
俺の意識はすでにどんな攻撃をしかけようか、そんなことばかりに向いていた。
しかし次の瞬間にはそれとは真逆のことが起こる。
後方べ飛んでいたはずの破壊の円盤がブレイドの背後から迫っていた。
ブレイドはそれにきずきとっさに体を回転させることで、破壊の円盤を受け止めている。
「追尾してきてるじゃん!」
予想だにしない動きで絵麻が冷や汗をかいている。
見た目は細長い円盤でしかないのだけど、ブレイドは破壊の円盤を蒼輝刀剣ではじくことができていない。蒼い創造の輝きを削りとりながら、蒼輝刀剣を真っ二つにしようとしている。
「蒼の一刀、蒼破撃」
軽い斬撃では太刀打ちできない。絵麻とブレイドは想いを重ねあわせ創造の輝きを強めた。
創造と破壊の激突によって真っ二つになったのは……破壊の円盤だ。
破壊の意思を形ずくることができなくなり、地上へ脱落していく。
クリエイトはブレイドの対処の仕方を確認。
創造の花盾を何枚も重ねることで破壊の円盤を受け止めきり、赤い破壊力が拡散するまで花の盾を解除しなかった。
「ほう、ちゃんと対処してくるじゃねぇか」
攻撃を対処され、楽しそうにベインは笑う。余裕がある、まだ全然本気じゃないな。
破壊の円盤の攻撃を退けた。今が攻勢にでる時。
ブレイドはベインに狙いをさだめると、創造の風が足元から吹きあがる。
渦巻く創造の風と共にブレイドは大空を駆け、ベインの間近に迫る。そして……
「蒼の牙、蒼牙撃」
超高速で行う狼の牙にみたてた二連撃を放った。今までみせたことのない攻撃。しかもこれだけ素早いとなればベインだって簡単には対処はできないはず。
ブレイドの蒼輝刀剣がくりだす牙は、確実にベインをとらえていた。
「新技か。だがみえてるよ、俺にはなぁ!」
攻撃は避けられてはいない……しかし破壊力をまとわせた指で連撃を止めていた。
ベインには傷が一つもついていない。底知れぬ実力がみえ、いいようのない恐怖に襲われる。
蒼い狼の牙が襲いかかったのはほとんど同じタイミングなはず、それなのにたった一本の指で攻撃を受け止めたとでもいうのか……いや、まだだ。
「創造の弾花、クリエイト・ショット」
ショックを受けているばかりではなにも解決はしない。ブレイドの攻撃を止めるためにベインは動きを止めている。その瞬間をクリエイトは見逃しはしなかった。
創造の輝きを集約させた球を発射、身動きのとれないであろうベインを狙い撃った、
ベインは抵抗する余裕はないのか、創造球が直撃をする。
「試しに受けてみたがこんなもんか」
赤い破壊の意思に覆われたベインに、クリエイトの創造の輝きはまったく通用していない。弱い力だと解っていたからあえてなにもしなかったとでもいうのか。
「もっと楽しませてくれよ!」
ベインは声を荒らげると、ブレイドに狙いをさだめ肉弾戦をしかけてくる。
振り子のように体を振りながら右脇腹を狙うベイン。ブレイドは蒼輝刀剣でそれを受け止めようとするも衝撃を完全に吸収できない。白い床を削りながらなんとか踏ん張っている。
ベインは追い打ちをしかけ、上空からかかと落としをいれようとする。これを受け止めるのはリスクがある、ブレイドは手痛い一撃を回避するために後方へ飛ぶしかなかった。
「それで逃げたつもりかぁ!」
ベインはブレイドの動きを読んでいた、握っていた拳の中指をデコピンするときみたいにはじく。
中指から圧縮された破壊力が弾丸のように放出され、ブレイドに直撃した。
苦悶の表情をブレイドはみせるも致命傷にはなっていない、まとわせていた蒼い創造の輝きが威力を和らげていたからだろう。
「創造の残花、クリエイト・リメイニング」
ブレイドを支援するためにクリエイトは両手を叩き、桜の花びらを舞い散らせながら自らの4体の分身体をつくりだした。分身体はそれぞれベインを取り囲むとそれぞれ違うタイミングで飛びかかる。
「分身体か、楽しくお遊戯といこうか」
ベインは数の多さに戸惑うことすらなく、対処をはじめていく。
まず一番最初に先行していた分身体は体を大きく沈み込ませてから打ち上げたアッパーカットで突き上げ、背後から迫ってきた二体目の分身体に対して体をひねりながら後ろ蹴りをすることで吹き飛ばす。
同時に襲ってきた3体目と4体目に対しては、飛び上がり旋風脚を食らわした。
本体であるクリエイトは創造の球を後方からはなつも、それは手に平に集めた破壊力で防御された。
ベインは力だけじゃない、多くの戦闘経験を経て身につけた体術も驚異だと思える。
離れていても近づいていても、どの距離でも闘うことができ弱点らしい弱点がみえてこない。
「どうした、こんな程度かレイターども」
精神的な余裕をもあり、こちらを挑発できるほどか。
使える手はこちらも使っているが、突破口がみえてこない。致命的なダメージを受けていないとはいえ、このままじゃ追い込まれるか。




