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9話 蒼の祝福 ⑥

 土曜日、リビングはすでにバースデーパーティーの会場になっていた。

 青いバルーンと青バラやあじさいといった花が飾られ、テーブルの上にはバースデーケーキがあった。

 

「ブレイド、この衣装を着てきて」

 マスターから紙袋を渡され、別の部屋で紙袋にはいっていた衣装に着替え、戻ってきた。


「どうかな?」

 マスターがお選びになったのは、可愛らしい蒼いドレス。いつもと違いすぎて、それがちょいはずいかも。

 

「もうばっちりだよ」

「似合ってる」

「可愛いです」

「よいではないか」

 マスターも、創磨も、逢夢も、ティアもわたしゃの姿を褒めてくれる。

 

「ありがとう~」

 みんなに褒められるこの幸せ、やっぱりここは居心地が良いな~

 

「今日は6月4日。6月2日が誕生日になったブレイドを中心に、みんなの誕生日をお祝いしていきましょう」

 パチパチパチ、拍手を何度かして祝いの場をみんなで盛り上げる。



「さっそくプレゼント渡してこっか」

 すでにプレゼントと渡す段取りというのは決めてあるのか、創磨が箱の中にはいっているプレゼントを手にもっている。


「出逢って四ヶ月まだいってないくらいか。ふだんはゆる~く楽しませてくれるけど、闘いになったら危険もかいりみず俺達を守ってくれた、真剣に怒ってもくれた。今こうしていられるのはブレイドがいたからだと思う。改めてお礼を言いたい」

 改めて、こうやってお礼を言われるとはずくなちゃう。からかえないよ~めちゃ創磨の目が真剣だし~

 こういう部分がマスターにとってぶっ刺さるんだろうな~


「お誕生日おめでとう」

 創磨から渡されたのは可愛い狼のぬいぐるみだった。

 

「めちゃかわいいぬいぐるみだ~|」

「やっぱかわいい感じなのがいいかな~って」

 プレゼントを渡したのが照れくさいの、困ったように頭をかいている。こんな姿を見せられちゃもっと困らせたくなちゃうな~


 創磨からプレゼントされたオオカミのぬいぐるみをぎゅーと可愛らしく抱いてみる。

 

「かわいいでしょ~あ~創磨こういうのが見たかったんだ~」

「かわいいとは思うけど」

「喜んでもらえて良かったよ~」

 照れてる姿がかわいい。創磨もいじりがいがあるな~マスターも創磨のかわいいらしい姿に見惚れてて一石二鳥だよ~


 次はティアの番。

「ブレイド、誕生日おめでとう。後づけ設定でここまで壮大にやるのもどうかと最初は思っておったが、貴様にも助けられておる。我からも褒美を与えよう」

 ティアから渡されたのは日本のことが書かれていそうな本だった。ティアぽいと言えば、ぽいのかな?

 

「これは勉強して欲しいってこと?」

「ブレイドは知識が偏っていると思えてな。この機会を利用し視野を広げてもらおうと思ったのだ」

「日本の歴史については、マスターなら知ってるよ~」

「教科書とやらでは不十分、これをみて理解は深めておいたほうがよい」

 プレゼント的にはスーパー真面目すぎるんだけど、わたしゃのことはめちゃ考えてくれたのはめちゃ伝わる。


「ティアは素っ気なさそうにみえて、本当はすごくやさしいよね~なんでもいいやって感じじゃないのすごく伝わったよ~」

「べ、別にそんなつもりはない。見聞を広めた方が良いと思っただけなのだ」

 ツンデレもプレゼントのうち。

 別に貴様のためにやってるわけじゃないんだからね、そんな風にマスターも脳内変換していることだろう……ティア、いつもマスターを楽しませてくれて助かるよ~


 次は逢夢の番。

「同じキャラクターとして、同じ職場の同僚としていつもブレイドにお世話になっています。わたしではきずくことができないことをきずいてくださり、共に闘う仲間としても心強いです。これから同じキャラクター同士仲良くしていきましょう」

 逢夢とは対等な関係をきずけていると思う。お互いに信頼しあい、共に助けあえる相手。

 人格者であり、共に闘う相手として頼りにもなる。かわいいのも最高。

 

「ブレイド、誕生日おめでとうございます」

 逢夢のプレゼントは何年も花の美しさを保つ特殊な加工がされた青バラのブリザードフラワー。ガラスドームの中に入っていて、とても綺麗だ。花が好きな逢夢らしいな~


「こうしてプレゼントを渡すことができて嬉しいです」

「わたしゃも嬉しい。大切にするね」

 同じ創造されたキャラクターとして、仕事仲間として、レイターとして、これからも交流を関わっていく。そんな逢夢にプレゼントをもらえたのはやっぱ嬉しいな~


 逢夢のプレゼントをもらい、残るはマスターのみ。

 マスターがどんなプレゼントをいただけるのでしょうか、期待で胸が一杯、

 こんなにもドキドキすることって中々よいよ。全然落ちつかない~

 

「あたしはブレイドといられること、奇跡だなっていつも思ってる。創磨や逢夢と出逢い、わたしはいらないと思っていたものを捨てずに進むことができた。あの時、ブレイドを創りだすことができていなかったら、こうして喜びあうことはできなかった」

 嬉しすぎて、すぐにでも泣き出しちゃいそうな気持ちをぐっと堪える。

 だって笑顔のままこれを聞いていたい。この嬉しさを感じていたい。

 

「話すことも、笑うことも、信じることも、こうしてお祝いすることだって奇跡の連続。普通はできないことばかり。出逢わせてくれてありがとう、笑顔になってくれてありがとう、闘ってくれてありがとう、信じてくれてありがとう」

 ありがとうが降ってくる、たくさん、たくさん、降ってくる。

 わたしゃもありがとうって、ずっと思ってる。


「ブレイドお誕生おめでとう! 超、センキューセンキューだよ!」

 プレゼントを渡す前にマスターはハグをしてくれた。こうやってぬくもりを感じられることも奇跡の一つなんだろうな~

 

「あたしのプレゼントはこれだよ」

「ボールペンの中にひまわりがういてるね」

 ボールペンの透明なキャップの中に造花のちいさなひまわりが浮かんでいた。透明なオイルで少し大人びた感じがでている。

 

「ハーバリウムのボールペン。あたしぽいものを身につけたらブレイド喜びそうだな~ってことで選んでみました」

「も~う、わたしゃのこと理解しすぎ」

「だってあたしが創ったんだもん。ブレイドのことを大切にしたいって思ってるから」

「ありがとうございます、とても嬉しいです」

 マスターが望み、そのうえでわたくし自身が望むものをプレゼントしてくれた。

 

「プレゼントはこれだけじゃないよ! じゃん! ブレイドの誕プレ記念イラストだよ!」

 マスターの描かれたイラストが紙に印刷されている。 

 

 青バラの花園で蒼輝刀剣を振るう、わたしゃの姿。

「ほんとマスターはわたしゃを脅かすのが上手だな~嬉しい、嬉しいよ~」

 イラストまで描いてもらえて、たくさんのものをマスターはプレゼントしてくれた。

 

 そんなたくさんのプレゼントをくれた絵麻を喜ばせたい。


「マスター、わたしゃからもプレゼントがあるんだ」

「え! 今日はブレイドの誕生日だけど」

「わたしゃ自身が喜ぶプレゼントを知っていますか。それは……」

 用意していたブルームーンとブルーローズが輝くネックレスを絵麻につけてあげる。


「マスターの喜ぶを笑顔をみることだよ。マスター、わたしゃを描いてくれてありがとう」

 ありがとうを伝えられて、うるうるしちゃう、めちゃしちゃう。なんならマスターもうるうるしている。嬉しくて嬉しくて、たまらないんだ~

 

「あたしが嬉しがちゃだめだよね。でも嬉しいほうがいいんだよね」

「マスターはマスターらしくしてくれるのが一番だよ~」

 ひまわりのように咲いた笑顔、それは大切に守っていきたい。

 わしゃにとっての最高のプレゼントは、やっぱりマスターの笑顔だ。


「ブルームーンとブルーローズ、どっちも奇跡って意味がある」

「二つも奇跡を起こせる可能性があるって、めちゃ縁起いいじゃん。青色でブレイドぽい。あ、これって! あたしの時と同じ理由。いつもブレイドを感じられるようにしたかったからってことじゃん」

「理由までお揃いだなんて、息ぴったりだね~」

「だね~」

 マスターは首についた蒼い月と薔薇が輝くネックレスを手にとり、然を微笑んだ。


「写真撮ろうよ~」

「撮りたい、撮りたい」

 肩をつけい、お互いのプレゼントが映えるように自撮撮影。

 大切な思い出を残していけることが嬉しい。そう思えるのはこの思い出がとてもかけがえのないものだから。

 

「マスターだけじゃない、みんなにもプレゼント用意してきたからとってくるね~」

 隠しておいたプレゼントを渡していく。

 

「逢夢には、桜のハーバリウムを」

「ありがとうございます」

 桜のハーバリウムとは瓶の中にはいった桜を特殊な液体につけて鑑賞できるというもの。逢夢らしい桜のものを選んだ。


「創磨には竜の置物を」

「ありがとう、大切にするよ」

 幸運を与える竜の置物、創磨は竜が好きだったのでこれにした。

 

「ティアには人気ロボットアニメのプラモデルを」

「ありがとう」

 ロボット好きと耳にしたので、ティアにはプラモデルをプレゼントした。

 

「創磨と逢夢がプレゼントを探す手伝いしてくれた時、みんなにもプレゼントを渡したいなぁ~ってなってたんだよね~」

「あ~あの時か」

「わたしはみんなの喜ぶ笑顔が好き。みんなが喜んで、ハッピーハッピーだよ~!」

 わたしが守りたい幸せがここにはある。ずっと守っていきたい幸せが。


「みんなの、写真も撮らせて~」

 そんなかけがえのない思い出をみんなとも残すために、撮影をはじめる。


「ティアちゃんスマイル、スマイル~」

「そんな連呼しなくても解っておるわ。

 わたしゃの隣に立ち、プレゼントと一緒に撮影。

 

「みんな~にっこり~」

 最後には全員集合した写真も撮った。


「バースデーケーキそろそろ食べようよ」

 撮影が一段落すると、バースデーケーキの前へと立つ。

「歌が終わったら、火を消せばいいんだよね」

「そうそう」

 部屋が暗くして、バースデーケーキにろうそくの火が灯された。


「ハッピーバースデートゥーユー」

 みんながわたしゃが誕生を祝ってくれる。


「ハッピーバースデートゥーユー」

 そんな幸せを感じられるのは創り出してくれたマスターのおかげだ。


「ハッピーバースデーディアブレイド」

 わたくしはそんなマスターのためになり続けたい。

 

「ハッピーバースデートゥーユー」

 この幸せをずっと続いていくためにも。

 

 幸せを感じながら、ろうそくに灯した火を口からはいた息で消していく。

「ブレイド、お誕生おめでとうございます!」

 みんなが拍手をしながら、わたくしの誕生日を祝ってくれた。

 

 描いてくれたマスターに感謝をしよう。

 マスターを導いてくれた創磨に感謝をしよう。

 同じ創造として共に闘い、支援してくれる、逢夢とティアに感謝をしよう。


「今日はみんなの誕生日祝いでもあるよ。出逢えたことに感謝だよ~」

 両手で拍手をしながら、みんなのお祝いもする。

 

「おめでと~」

「おめでとうございます」

「おめでとだね~」

「まぁ、おめでとうくらいは行っておこうか」

 勢いにのせられたまま拍手をしあい、みんなでお祝いしあった。

 

「いいね~いいねぇ!」

 突如、頭の中に声が響く。笑顔溢れる空間を壊す、その声が。

 

「誕生日おめでとう、レイター共。めでてぇな、めでてぇよなぁ!」」

 誕生日を祝うきもない招かれざる客、ベインがわたしゃの前に現れてしまった。

 

「なにしにきたのよ」

「なにって、お誕生日のお祝いさ。歓迎してくれ、よく知ってる仲だろ」

「あんたを呼んだ覚えはないわよ」

 笑顔は消え、マスターはベインを睨みつけている。

 

「そう警戒するなって。このまま誕生日会をぶち壊すような真似をしない。もっともっと幸せになって欲しいからなぁ」

「不幸の種をまいている、お前がそれを言うの」

 ベインの言葉に腹が立ち、声を荒げ罵倒する。これまでしてきた事を考えれば、こいつが幸せのことなど考えているわけがない。

 

「おいおいそんな言い方はねぇだろ。俺は願いを叶えようとしていただけ、楽しみながらなぁ」

 こいつ反論するだけ無駄か。なにかを言っても、難癖をつけてくるだけ。


「明日、アウターワールドに来い。この俺が相手をしてやるよ。それまでせいぜい幸せをたっぷり味わっておくんだなぁ!」

 ベインは憎ったらしい笑顔のままわたしゃ達をあざわらうと、別の空間へと消えた。

 

「いきなりあらわれてなんなのよ」

 ベインの登場によってお祝いムード一色というわけにはいかなくなった。どうあいつと闘うべきか、そのことを考えなければならない。


「明日か」

「急ってわけでもないよね~前、闘うことは宣言してたし」

「あれから研鑽をさらに積んできています」

「今更ジタバタした所で疲れを貯めるだけだよね~」

 はからずともベインによって、事前に心構えはもうできている。今回もわざわざ用意しておけ、そう忠告しにきたようなもんだし。


「決戦前だ。存分に英気を養おうではないか」

 ピリピリとした空気にはならず、またお祝いムートへと戻っていく。


「ブレイド、あ~ん」

「う~ん、ケーキも美味しい」

「ティアちゃんもあ~んする」

「誰がするか」

 笑顔でケーキを食べ、なにげない会話をわたしゃ立ちは積み重ねていく。

 


(わたしゃは守る。かけがえのない思い出を作ることができる、この人達を守りたい)

 ここにはわたしゃが守るべき仲間とマスターがいる。

 ベインがそれを破壊しようというのならば、わたしゃはどんな手をつかっても守る。

 それがわたしゃの願い、それがわたしゃの守りたい想いなのだから。

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