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8話 その先にあるもの ⑨

“ダンダンダン”

 怪陸上選手のように素早く足が動し、床を踏むたびに地面が揺れる。その速度は競走馬が近づいてくるようなもの……いやそれよりも早い。走り続けていくたびに速度があがってきている。

 

 このまま巨大を駆使して逢夢を潰すつもりでいるらしい。

 

 ちっぽけな小さな一人の人間では、とても立ち向かえないほどの破壊力を持っている巨人。

 以前前なら、怯えて立ち向かおうことすらしなかったかもしれない。

 

 今は違う。逢夢や読者に、たくさんのことを教えてもらった。

 呪い殺されそうなほどの怨念を向けられたって不安にはならない。この怨念と向き合うことができる。

 

 突進し蹴り飛ばそうとしてくるジャイアントブレイカーに立ち向かうため、クリエイトは飛び上がる。

 

 真正面。ちょうど巨体の胸のあたり、

「創造の衝花、クリエイト・インパクト」

 創造力を一点に集中させ、ジャイアントブレイカーを殴りつけた。

 

“ドン”

 衝撃音が駆け抜ける同時に創造力が破壊の炎を突き破り、踏んばりきれなかったのか巨大が後方へと倒れた。

 

(以前よりも創造力が強くなっているのか)

 心の強さ。それが創造力に影響を与え、より強い威力を創り出しているみたいだ。

 

「ウォオオオオオ」

 力負けしたことに憤慨し、怒りの雄叫びをあげた。

 負けたくない、諦めたくない、それは純粋な願いがより強い破壊力を創り出す。

 

 ジャイアントブレイカーは素早く立ち上がり、今度は腕を振り回してクリエイトに向かって拳を叩きつけてきた。

 

 何度も何度も白い床を叩き壊しながら繰り出される拳、それを飛び回りながらクリエイトは回避し創造球を飛ばし反撃すらしていた。

 無我夢中なのだろう、ジャイアントブレイカーの攻撃は予測がしやすい。攻撃の速度がこれ以上変わらないのならば、無意味に空振りを繰り返すだけ。

 

 それにきずいたのか、はたまた業を煮やしたのか、

「ハァアアアア」

 手の平に破壊の炎の塊を創り出し、それを飛ばしてきた。


「創造の盾花、クリエイト・シールド」

 不意打ちとなりうる遠距離攻撃、クリエイトは創造力で創り出した花びらの盾を前の前に創り出す。

 

 破壊の炎の大きさはクリエイトの何倍も大きい。それでも創造の盾は貫通すらしない。完全に破壊力を防ぎきり、ヒビ割れすらしない。炎による熱だけが唯一空間に残っていた。


 ここからこっちが攻める番。

「創造の残花、クリエイト・リメイニング」

 クリエイトが両手を叩くと、創造の輝きが桜吹雪となって吹き荒れ、分身体を創り出した。

 

 四体の分身と同時にクリエイトは走りだすと、

「創造の衝花、クリエイト・インパクト」

 同時に掌に集めた創造力をジャイアントブレイカーにぶつけた。

 

 創造力と破壊の炎とのぶつかりあい。それにより、再びジャイアントブレイカーに囚われていた人とつながりあう。


――どうしてだ、どうして邪魔をする。


「奪うことが間違っているからだ」


――だからなにもせず抗うなと。そんなのは嫌だ。打ち切られるのは嫌だ。続けるために必要なことなんだ。


 ジャイアントブレイカーの中に存在する意思は、打ち切られることを拒絶する。それが悪いことだとは思わない。人気がでたり、売れたいと思うのは当たり前の心理。


「俺だってそうだ。打ち切られるのは嫌だ。続けるために売上が必要だって解ってる。けど、それは俺達に決められない。読者が買いたいと思うのは読者自身が決めるものだ」


――読者自身が決めている? そんなわけないだろ。あいつらはただ人気のあるものを欲しいだけだ。だから人気のある作品に、人気にある立場を奪ってしまえばいい。


「それが読者のためになるとでも」


――なるさ。読者のために書いたわたし達の作品は面白いんだ。すべての読者のためにやってきたことなんだ。読んでくれれば面白いって言ってもらえるものなんだ。


「それは、無理やり考えを押しつけているにすぎません」


――これは全部読者のため、読者のため。それなのに、それなのに! なんでわたし達は認められないの! 消えちゃうの!


 反論なんて聞きたくない、その想いが俺とブレイカーに囚われた人達のつながりを断ってしまう。

 

 きがつくと、クリエイト・インパクトの衝撃によってジャイアントブレイカーは後方へ吹き飛ばされている。

 今度は身構えていたのだろう。ジャイアントブレイカー倒れこむことなく、白い床を削りながらも態勢を崩すない。一瞬怯ますだけ、破壊の炎はいっこうに鎮火する気配はなかった。


“ダンダンダン”

 ジャイアントブレイカーは地団駄を踏む、思い通りにならない怒りをぶつけていた

 白い床はぐちゃぐちゃに壊れ、瓦礫ができあがっていく。

 ジャイアントブレイカーとの戦闘で、燃えた跡と瓦礫はいたる所に存在している。

 

 燃え続ける荒廃した心、それを象徴するかのように。


 闘いは続き、怒りが新たな破壊力を創り出す。

 ジャイアントブレイカー体に噴火口のような穴が無数に創られていた。

 

 噴火口には純度の高い破壊力がたっぷりと詰まっている。


「ガァアアア」

 咆哮と共に噴火口から大量の溶岩を放出させてきた。

 数が異常だ。数十個とかいうレベルではない、それは数百個。先程のブレイカーの数のレベルではない。無差別に攻撃をして、ここら一帯をすべて焼き尽くすつもりらしい。

 

 この攻撃を防いでも、ジャイアントブレイカーにダメージを与えることができない。

 次の攻撃を考え、再びをそれを実行されるだけ。このままじゃジリ貧に近い。

 

「あのジャイアントブレイカーに届くような一撃を決めないと、このままじゃ状況は変わらない」

 周りの仲間に聞こえるような言葉で、これからしたいことを伝えた。

 

「任せて」

 ブレイドはデモンブレイドを持って飛び上がると、

「まとめていくよ」

 頭上に迫ってきていた異常な量の溶岩弾を、薙ぎ払った。

 

 俺達が闘っている間、ティアの力を借りつつブレイドは創造力の回復に専念してくれていた。


「頼らせてもらう」

「もちろんだよ。そのためにあたし達はいる」

「わたしゃ達がクリエイトと創磨を守る。その間に攻撃を」

「全力でやっちゃって」

 俺達を信じてくれる仲間いる、その期待に応えてみせる。

 

 溶岩弾は絶え間なく降っている、その中で……

「いくぞ、逢夢」

「はい!」

 分身体を戻したクリエイトは俺の元へ。手をつないだ。


「根源は紡がれし創造の輝き、今一つとなりて解き放つ」

 ジャイアントブレイカーに向かって両手の手のひらを広げ、創造力を集めていく。

 

 打ち切られてしまうことに対する不安、創作する楽しさ、読者との交流で得られたもの、あたしく心で感じとったものが、より創造力を強く輝かせていく。


「クリエイト・バスター」

 手に平に集められた、創造力をジャイアントブレイカーに向かって解き放った。

 

「グガガガガガガ」

 うめき声をあげながらジャイアントブレイカーは両手を広げ、創造力をせき止めようとする。

 破壊の炎は激しく燃え、両手に破壊力が集められていく。クリエイト・インパクトと似たようなやり方。俺達の姿を真似ていた。

 

 俺達の創造力がジャイアントブレイカーの破壊力を上回ることがなければ、この闘いは終わらない。そのために必要なのはより強い創造力。それがなければ、ジャイアントブレイカーに俺達の創造力を届けることはできない。


(創造力は心の力。より強い想いが強い力を創り出す)

 ディアボロスと闘った時、俺達が創り出した創造を届けたいという力が強さになった。それはきっとこの瞬間も同じ。

 

「打ち切られたくない、その気持ちとどう向き合うかずっと考えてきた」

 打ち切られてしまった者達に向き合い、届けたい想いが俺にはある。


「打ち切られたくない、その想いに対抗しうるような心の強さ。それを手に入れることが一番の近道なんだと思う。正論なんだと思う。そうやって立ち向かう人達はいる」

 その言葉はどこまでも一方通行だ。それでも伝える、物語を書いている時のように。

 

「俺はそんな道を選べなかった。強くなれない人達がいる、そういった人達にも寄り添いと思ったからだ」

 そう思ったのは、強くなれずに去ってしまった人達の作品を読んできたからだと思う。

 面白くないわけではない。多くの作品の中に埋もれてしまったものや、時流の中で合わなくなってしまったものもある。簡単に切り捨てたくない、そこにこだわった。

 

「諦めてしまいそうな時は誰にでもある。俺もそうだ。どう向き合えばいいか解らなくて、自分のことを責め続けた」

 逢夢の変身が解けてしまった瞬間、自分にはもうなにも創れないと思ってしまった。

 こだわり続けることができない自分なんて、必要ないとさえ思えてしまった。

 

「そんな時、不安な気持ちを和らげてくれる人がいた。休んでいいと言ってくれた。支えてくれる読者の人達の声も聞いた。その時、きずいたんだ。打ち切られたくない、そう想うのはしかたのないこと。そう思ってもいい。、けど他にも大切にすべきものはあるはずだろ」

 打ち切られたくないと思う気持ちを否定せず、向き合うべき方法を伝えた。


「読者のためになりたい、そのためにキャラクターのことを大切にしたい。物語のことを大切にしたい、読者の想いを大切にしたい。俺は今自分の描いた物語の中でそうしていきたいと思えるようになった」

 打ち切られたくないという気持ちの中でも、読者のたまにどうあるべきを考えなければ面白い作品なんて作ることはできない。

 読者のためになるためにはどうするべきか、その先のことも伝える。


「自分の物語で読者に届けたいものを決め、その想いを一番大切にしていく。最初からそうなれなくてもいいんだ。苦しかったら休んでもいい。そうすれば心に余裕ができる。なにも思いつかないのなら、誰かに頼ってもいいんだ」

 弱かった自分だからこそ経験できたことを伝える。強いままではきずけぬことを伝える。


「弱くたって方法ある。弱くても強い想いを届けることができる。それを今から証明してやる」

 綺麗事だと捉えられてもいい。新しい可能性を示してあげること、それはその人の希望になる。希望を捨てさせない。俺自身が想いを届けることで証明するんだ。


「読者の想いって、きっとたくさんあるんだろうな。面白くして欲しい、楽しいものにして欲しい、笑わせて欲しい、感動できるお話にして欲しい。キャラクターを魅力的に描いて欲しい。熱い物語がみたい」

 読者の姿を想い浮かべていく。すべては大切な想いだ。


「ずっとそれって俺達も読者として想ってきたことだ」

 そしてそれは、自分の中にもある。読者として作品を見たことがあるならば、すべて思ったことがあるものばかりだ。


「あこがれや大切にしたいものは誰にでもあって、創造っていうのはそれを咲かせるためにある。読者の想い、それは俺の中にあるもの、誰の中にもあるもの。その想いとも俺はつながりたい」

 

(竜が見える。黄金の竜が、勇気未来、テラブレイブの姿が……)

 意識が光の中へ。見えたのはテラブレイブの背中、金色の髪。そして竜の輝き。

 

 俺が物語やキャラクターのことが大好きになった作品『テラステラ』

 勇気未来は竜神の力を借りるだけではなく、自分の力として強くなっていたことをふと思い出した。

 

(竜の力、それに見せられて、俺は俺自身の物語を創りたいと思った)

 

 

――創磨よ解き放て、自分自身の輝きを。

 魔王のことを諦めそうになったときに聞こえた声、あの時と同じ声が頭の中で響く。

 

 この黄金の竜は俺自身の創造力が形になったもの。

 自らの輝きを解き放たられることを待ち望んでいる。

 

「俺自身の創造を、もっと輝かせてみせる」

 両手の掌を縦に向け、竜の顔のような形にした。

 両手から創り出されたのは自分自身の創造力を具現化させたもの。

 

「いけぇえええええええええええええ」

 俺の両手から創りだされていた黄金の竜は、逢夢の創造力と重なり一つとなりて進んでいく。


「あれが創磨の創造」

「竜が飛んでる」

「やりおるではないか」

 絵麻、ブレイド、ティアあ、俺達が創りだした黄金色に輝く創造に希望を託してくれる。

 

 黄金の輝きはジャイアントブレイカーの破壊力を上回り、巨人はボロボロになって崩れ、創造の輝きの中で浄化されていく。


――なぜわたし達を見捨てるようなことを言わないの

 浄化されていく中でブレイカーに囚われていた人達と、もう一度つながりあう。


「どんな小さな蕾にも可能性があると思った方が楽しいからかな。いや、それだけじゃない……俺がそう思いたいんだ。まだちっぽけな花しか咲かすことできない、俺自身の創造を信じたい。だからまだ大輪の花を咲かすことができない創造も信じたいんだ」


――これが希望……忘れていたものを思い出すことができたよ。わたし達も自分だけの創造をみつけることができるおんだろうか。君のように


「できますよ。自分なりの方法で絶対に」


――信じよう、君のことを。信じよう、わたし達自身の可能性を

 赤い輝きは散り散りになっていく中で、それは明るい希望へ変わっていく。

 

――まだ小さな花しか咲かせられぬ創造を創りし者よ。君の想いがわたし達に勇気を与えてくれた。ありがとう」

 すべての想いを届けた時、赤い巨人は涙を流した。破壊力が笑顔に、それを証明するかのように破壊力は創造の輝きへと変わっていた。

 

 天空に浮かぶ桜色の空に向かって黄金竜を飛び去り、創造力で創られた桜の花びらが世界を明るく染めあげる。

 

「きれいな桜の花びらだな」

「ええ、とても輝いています……不安に思っていた方達、そして創磨が輝けたことが嬉しい」

 隣のいた逢夢は涙を流している。不安をずっと抱えていて、それをずっとださないでいてくれてたのか。


「ありがとう、逢夢。君のおかげで俺は強くなれたよ」

 涙を流しながら逢夢は俺の言葉にうなずき、笑顔をみせてくれた。

 

 そんな俺達の元に、絵麻、ブレイド、ティアが集まってきてくれる。

 逢夢の涙をみて、誰も言葉は発することはしない。この笑顔は、悲しい涙ではないと誰もが知っているのだから。

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