8話 その先にあるもの ⑧
あたし達はジャイアントブレイカーに、何度もデモンブレイドを叩きつけていく。
腕だけではなく、足も狙ったが動きを止めるにいたらない。破壊力の保有量が今までの敵と圧倒的に違っていた。
「息があがってきてるぞ。その試作品も限界じゃねぇのか」
デモンブレイドが溜め込んでいた創造力は枯渇しはじめ、あたしとブレイドの創造力を分け与えることでなんとか動かしているのがやっとの状態。
「ハァハァハァ……」
これだけの創造力を消費するのは初めて。
この力のことは正直解っていないことも多いが、後少しでこの力が使えなくなることは簡単に予想できてしまえた。
創造力は心の力。あたしの心に反応していつも輝いてきた。
精神力や集中力、それがいつまでも続かないように、創造力にも限界はある。
(気を抜いたら倒れそう)
今にでも膝を白い床につけてしまいそうだ。歯をくいしばり、創造力を保とうとする。
「約束したの。創磨を信じるって」
まだ闘える。ブレイドもそのつもりでいてくれる。ここで倒れるわけにはいかない。
「いくよ」
ブレイドも残っている創造力を使って、デモンブレイドを振るってくれている。
一番きついのはデモンブレイドを振るっているブレイドだ。それなのに弱音を吐くことなく攻撃を続けてくれている。
ジャイアントブレイカーは右手でデモンブレイドを受け止めようとしていたが、それを切断。再生するまでの時間はこれで稼げる。
「いいね、まだまだ諦めねぇて感じか。だがな、それも飽きてきた。そろそろ終わりにさせてもらおうか」
ベインは指を弾くと、ベインの身体から破壊の炎が飛び散り、それがマグマのように床に燃え広がり続け、赤く輝く破壊力の池になった。
その破壊の炎で創られた池から、破壊の炎につつまれたブレイカー達が大量に創られた。
巨大なジャイアントブレイカーの動きだけなら、なんとか避けることでいなすこともできた。
しかし、すでにこの数。眼前には数え切れないほどのブレイカーがいて、こいつらまで攻撃をしかけてきたら、まずます対処がしずらくなる。
「その消耗しきった状態で、これだけの数を相手をできるかぁ」
一斉にブレイカー達がブレイドを狙って走りはじめる。一人一人はたいしたことのない相手だが、数が多ければ話が違ってくる。
後ろにいるジャイアントブレイカーも攻撃に参加すれば、さらに避けづらくなる。
捕まってしまえば、それで終わり。休んでる暇なんてなさそう。
デモンブレイドは振るう度に莫大な創造力を消費する。それを避けるためにデモンブレイドを白い床に突き刺し、ブレイドは蒼輝刀剣を手にブレイカー達の進行を阻もうとする。
一人、二人、三人……斬り倒してはいけてるも、明らかにいつもよりもブレイドの動きが鈍っている。
背後から迫ってきた相手に反応が遅れた。
「まだまだ」
もう少しで腕を掴まれる瞬間、肘うちを決めつつ、斬り倒した。
満身創痍、これ以上ブレイドが戦い続けることは難しい。
「く、このままでは」
ティアちゃんも創造力を溜めた爆弾を起爆させることで、ブレイカーを追い払おうとしていたが、ブレイカー達の攻撃はまったく止まる気配はなかった。
「諦めない、諦めたくない」
迫りくるブレイカー、それを止めた先にあるものを見たい。
絶望はしない。創磨が帰ってくる時を待った。
光が見えた。天空を割く光が。
その光は暖かい陽の光のようにやさしく、強い輝きを放っている。
その光から現れたのは……
「またせたな、絵麻、ブレイド、ティア」
逢夢と創磨。二人がこの場所に現れた。
* * *
転移した先はアウターワールド、絵麻達がいる場所だ。
巨大な剣のようなものが突き刺さっている。あれはジャイアントブレイカーと闘っていた時に使用したものだろう。
今は大量のブレイカーと闘っている。かなり消耗しているみたいだ。ここまでずいぶんと頑張らせてしまったみたいだ。
「創造の輝きよ、未来を創る力となれ」
俺の呼びかけの後、
「レイター・ブリリアントチェンジ」
俺達は共に叫んだ。
逢夢はクリエイトブックの桜の紋章をタッチし、創造の輝きを身にまとう変身を初めていく。
桜色のバトルコスチュームが創り終えると、ツーサイドアップの髪を腰まで伸ばし
「未来へ続く創造の輝き、レイ・クリエイト」
左手を胸にあて、右手は先端が腰の高さと同じになるように手を伸ばし、決めポーズをとった。
変身の余波でかなりの数のブレイカー達を吹き飛ばすことに成功。
「創造の散花、クリエイト・スキャター」
無数の種を蒔くように、手の中に集めた創造球をブレイカー達に向かってばらまいた。
ばらまかれた創造球は放物線を描き、ブレイカーに着弾していく。その光景は砲弾の嵐を撃ち込んでいるかのよう。次々にブレイカーの破壊力を消しさり、囚われていた人達の魂を還すことで、すべてのブレイカーを退けることができた。
「待ってたよ! 二人とも」
「めちゃ頑張ったんだからね~」
疲れているであろうに、絵麻とブレイドは元気良く声をかけてくる。
「良い顔になった、心配をかけさせるでないわ」
「へ~ティアちゃん心配してたんだ」
「別に創磨達のことを心配しておったわけではないぞ、このままでは我が雪辱を果たせぬことが心配で……」
「も~う、ツンデレなんだから」
ティアのツンデレぷりも変わらずで、穏やかな笑みをうかべてしまうほどだ。
「答えはでたようだね」
「そのためにここへ来た」
「わたしゃ達にみせてよ、創磨達の輝きを」
ブレイドいなかったら今頃ブリリアントシールドは壊されていただろう。
狼のように気高く、狼のように誰かを守ることができる。そんなブレイドに負けないくらいの輝きをみせてやらないとな。
「ずいぶんと自信があるみてぇだな。てめぇがしてたことなんて読者共とつまらねぇ会話だけだったじゃねぇか」
「つまらない、ベインはそう思ったのか。だとしたら、それは大きな間違いだ。それを今から証明してやる」
おそらくベインは精神体を使って、俺達のトークイベンも観察していたのだろう。
ベインにとって、あれはどこにである当たり前の言葉だと捉えているのかもしれない。
しかし作者やキャラクターにとって違う。あの読者の言葉には意味がある。それは囚われている人達にだって届くはず。
「いいねぇ、そういうのを俺も楽しみにしてたんだ。容赦はしない、簡単に終わらせちゃぁ楽しくないからなぁ」
ベインは両手から赤い破壊力を放出して、ジャイアントブレイカーに流し込んでいく。
「ウォオオオオオオオオオオ」
ジャイアントブレイカーの破壊の炎が激しく燃え上がり、消耗していた破壊力が復活していく。
「さぁいけ! お前の力を見せてみろ」
ベインの命令と同時に、ジャイアントブレイカーはクリエイトに向かって突進してきた。




